第11話 お見合い中のあたし。

 その後のことは、良く覚えていない。

 気づいたら、仲人の一言が、あたしと彼を二人きりにした。

 ついさっき、自分がした行為を恥じて、モジモジとしていると


 ――お互い、いい恋愛をしてこなかったみたいだね。


 彼はそう言った。


 ――はぁ……?


 そう言えば、あたしは一度、婚約破棄をしている。

 そのことだろうか?

 あたしは良く意味がわからずに、間の抜けた返事をした。

 

 ――また会うまでに、キミが結婚してしまったらと思うとヒヤヒヤしたよ。


 そう言って笑った。

 その声も、チャンスの神様と同じだ。


 ――あの……なにを言ってるか、わからないんですけど。


 あたしの言葉に、彼は真っ直ぐな目で見つめ返してくると

 困ったようにまた、笑った。


 ――まだ分からないかなぁ? ホラ、子供のころ、近所に住んでいた……


 アサダ マサユキです。

 彼の名前を反芻した。

 マサユキ……

 マサユキ……


 ――あっ! マーくん!?


 ――そうそう、やっと思い出してくれた?


 そう、ずっと大好きで急にいなくなってしまった

 あの、マーくんだ。

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