第10話 カレ。

 ぎこちない手つきで湯呑を持ち、そっと口をつけたとき

 相手が現れた。


 ――おふっ!!!


 あたしは奇妙な擬音を発し

 お茶を吹きこぼしてしまった。


 そこに立っていたのは

 これまで何度となく出会って見つめてきた

 チャンスの神様だった。


 ツルッツルではなく、アフロでもない彼は


 ――アサダ マサユキです。


 と言った。

 ポカンと口を開けたまま、あたしは立ち上がると

 彼の髪の毛を掴んだ。


 ――いててててっ!


 引っ張っても、ズルリと外れることはない。

 抜け落ちてしまうこともない。

 本当に本物の髪の毛だ。


 両親が、そんなあたしの行動に驚いて

 慌ててあたしの手をひっぱたいてきた。

 我に返ったあたしは、真っ赤になって彼の髪から手を離した。

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