第9話 お見合いのあたし。

 チャンスの神様のことも

 すっかり忘れてしまうほど、恋愛から遠ざかっていたある日。

 実に久しぶりに、チャンスの神様が現れた。

 例のごとく、ツルッツルのピッカピカで。


 ――あれ? 今、あたしは恋なんてしていないのに。


 神様は、チョイチョイと手招きをする。

 さて、どうしたものか。

 寄っていいのか、辞めるべきか。

 腕を組んで神様と向き合い、あたしは少し躊躇した。


 ダダダとあたしに向かって突進してきた神様は

 唖然としているあたしの横を通り過ぎるときに

 なにかを呟いた。

 駆けていく後ろ姿を振り返る。


 ――なにを言ったの!?


 慌てて叫んでみても、神様は足を止めずに行ってしまった。


 ――翌日。


 あたしはなぜか、お見合いの席にいた。

 慣れない着物が苦しい。

 相手の事をひとつも知らされないまま席に着き

 あたしは静かに相手を待った。

 妙に喉が渇くのは、きっと緊張のせいだろう。

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