二話『ロブノー』

今日は親父と二人で、自宅から一番近くの町に出掛けることになりました。


近くと言っても距離的には遠く、簡単には行けません。町の名前は"ロブノー"と言います。


住人のほとんどが農家として生計を立てており、親父の趣味の農業も住人から種を貰い、育て方を教えてもらって始めました。


親父は時々町を訪れますが、いつも家でダラダラしている僕は、久々の町にちょっとテンションが上がっています。


テンションが上がっているのは、久々に町に行くから…だけではない。今回僕が珍しく町に行く理由は他でもない…。


今!世の男性たちを魅了してやまない大人気女優"ルネル・ネルネさんのファン交流会"が開催されるからだ!いつになく早口で。


彼女の勢いは凄まじく、デビュー作『奥方が魔女』では、主人公に献身的に寄り添うヒロインを演じて、人気を獲得。その後も様々な映画やドラマに出演を続けている!


彼女はその美貌と抜群のスタイルで、グラビア雑誌の表紙を度々飾り、世の男性たちが夜な夜なお世話になっていると聞く!


…まぁ、そういう僕も度々…お世話になって…ます…。


コホン!なので今回の交流会では、応援してます!頑張って下さい!と、日頃の感謝を伝えたいと思っています!


普段家から出ない僕には、自宅から町までの約二時間の道のりは険しいが、文句を言わずにモリモリ進んで行こう!頑張るぞ〜!

「はぁ〜伝えたい伝えたい」


流れる汗もそのままにモリモリ進んでいくテイト。その後ろを顔色ひとつ変えずに続くルイボル。時々ルイボルから水分補給を促され、妹クエラに用意してもらった水筒のお茶をゴクゴクと飲むテイト。


そうこうしている間に、町の入り口に着いた。守衛さんにルイボルが話しかける。

「こんにちは。」


「こんにちは!おや、今日は息子さんも一緒なんですね!」


「はぁはぁ…こんちはぁ」

守衛さんとの軽い世間話の後、僕はまだ交流会まで時間があるので親父の手伝いをする事にしました。


ルイボルが町に来た理由は、テイトと同じくファン交流会…ではない…。


町に入るとすぐ、住人が親父に話しかけてきました。

「おぉ!ルイボルさん!丁度よかった!」

「テレビの調子が悪くて…ちょっと見てくれないかい?」


町の入り口近くに店を構え、良心的な価格設定と、提供される料理の優しい味付けが人気の定食屋さん。


の、店主がルイボルを見つけて話しかけてきた。


「見てみます。」

…正常に映ったテレビ。親父に感謝する定食屋さんの店主。


親父の右手に山盛りのジャガイモ。


「あら、ルイボルさん!いいところに!」

「息子の学校の宿題で分からないところがあって…」

獣の革で仕立てた靴。木綿を編み上げた服などの日用品。着ると魔力が上がるローブ。呪いを弾くペンダントと珍しい物まで色々置いてある服屋さん。


の、看板娘がルイボルを見つけて話しかけてきた。

(※もう息子さんがいるので正確には"娘"じゃないけど、言うと怒るよ。)


「どれですか。」

…手を振る看板娘とグッジョブするその息子。


親父の右手に山盛りのジャガイモ。

親父の左手に山盛りのトウモロコシ。


「おーい!ルイボルさーん!」

「ちょっと手伝って下さーい!」

自身は奇抜な髪型だが、散髪の腕はピカイチで有名な親子三代続く街に唯一の床屋さん。


の、奇抜な髪型の三代目がルイボルを見つけて話しかけてきた。


「いま行きます。」

…完成した椅子に座り満足そうな三代目。


親父の右手に山盛りのジャガイモ。

親父の左手に山盛りのトウモロコシ。

親父が背負うリュックの中に沢山の豆。


「困ったわ…どうしましょう…まぁ!」

「ルイボルさん!助けてくださらない?」


大きなお家に住み、高そうな装飾品に身を包んでいること意外不明で、旦那さんは居るのか?何をされてる人なのか?質問しても自身に関することは一切教えてくれないマダム。

(※町の住人からもマダムと呼ばれているよ。)


そんなマダムが話しかけてきた。


「構いませんよ。」

…見つかって帰ってきた愛猫"ブーちゃん"を大事そうに抱え、微笑むマダム。


親父の右手に山盛りのジャガイモ。

親父の左手に山盛りのトウモロコシ。

親父が背負うリュックの中に沢山の豆。

親父の頭に高そうな帽子と星型サングラス。


その後も、色々な困りごとをテキパキと解決しながら目的の家に着いた。


ここまでの道中で貰った物は、同じく貰った荷車に積みました。その見た目はさながら、オニガシマからお宝を持ち帰るモモタロウのようじゃったわい。フォフォフォ。


テイトがヒゲの生えていない自身のアゴを、お爺さんのようにさすさすしていると、一軒の家に着いた。


「ここだ、こんにちは。」

ドアをノックし、しばらく待つと、中から勢いよく一人の男性が飛び出してきた。

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