第6話ころした

「もう、僕は死神界には戻れないな」

 死神を切った。切ってしまった。確かに無罪ではある。死神界のルールでは。が、しかし僕に限ってそれが適応されるのかというのは分からない。なぜならば僕は人間の味方をしてしまったのだから。もしかしたら、いやもしかしなくても僕はこれから死神全員に狙われる運命にあるのかもしれない。僕はベスの魂が消滅するのを確認してその場から速やかに立ち去った。この世界にいる死神の中で僕ら新人以外でも上級死神がいるが、そいつらに狙われたら一瞬で僕は殺されてしまうだろう。だからベスを殺したのが僕とばれる前に強くなってそいつらに対抗するすべを身に着けるしかないのである。まれに人間でも霊感の強いものが死神を滅ぼすことがあるから、そのせいでベスが死んだと思ってくれたならば幸いである。その隙に僕は強くなるしかない。

 僕は急いで人間の絶望を狩る仕事を開始した。

 ある日、空が暗くなった。ふと見上げるとそこには新人死神が数十人いた。そしてその中央には上級の死神が立っていた。

「おお、見つけた。裏切り者。お前だな、ギザっていう裏切り者死神は。お前がベスを殺したってのはもう分かっているんだよ」

 ついに僕の仕業だとばれてしまったか。

「しかし、お前は人間の希望を食わないんだろ。よくベスを倒せたな。ああ、そうかもともとお前は才能があるって言われてたよな。死神界の神童って。で、なんだかんだで精神面で死神として軟弱だからっていつからか死神界の落ちこぼれって言われるようになったんだっけか。かかかっ」

「僕の事をよく知っているな」

 僕は笑った。

「何、笑ってんだお前」

「なんで笑っているかって?」

 僕はもう知っていた。人間の絶望を食って、絶望だけを食って強くなった僕がこの死神たちの中で誰よりも強いことを。

「それは僕が強いからだよ!」

「はんっ! なめるなよ。落ちこぼれが。行け!」

 上級死神が僕と同期の新人死神数十人を僕へと向かわせた。僕はそいつらの攻撃をかわし、次々と鎌を振りかざす。そして一刀両断していった。

「な、なななな……そんな馬鹿な。お前がそんなに強いわけがない。一体お前は何をした」

「僕は死神として何もしていない。ただ人間の人間たちの絶望を食っただけさ」

「ふざけるな。絶望を食って死神が強くなるわけがない。さては人間の希望を食いまくって強くなったんだな。なあ俺と組もうぜ。人間の希望を食いまくって世界を絶望へと導くのだ」

「あいにくだが、僕はお前とは違う。僕は人間の味方なのさ」

「き、貴様。許さんぞ。死神としてのその裏切り行為、死をもって償え」

 上級死神は鎌に力を込めた。鎌の先端が激しく光を放っている。上級死神にしか使えない技だ。

「これでお前もおしまいだ。跡形もなく消滅しろ」

「残念。死ぬのはお前だ」

 僕は鎌に力を込めた。鎌の先端を暗黒の炎が纏う。

「ば、ばばばばかな。その技はその技は神話級死神が使える、わ……技」

「そう、僕は絶望を食って食いまくって神話級の死神になった。僕の名前はギザ。冥途の土産に食らうがいい。暗黒炎斬!」

 僕は上級死神を跡形もなく滅ぼした。

 僕の居場所は死神界にはもうない。

 そしてこれからは死神界から追っ手が次々と送られてくるだろう。だけど、僕にはもう絶望の気持ちはなかった。すごく晴々した気持ちだった。

 だって死神として誇りをもって人間界の絶望を食う事が出来るんだから。

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しにがみ 日本語破綻者 @mojiuchisyuukann

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