第5話つよくなる

 強くなる強くなる強くなる。

 僕は絶望に打ちひしがれている人間を探した。

「もうだめだ。いじめられてつらい。死のう」

 大丈夫僕がその気持ち刈り取るから。

 僕はその男の絶望を刈り取った。

「あれっ、なんだか気持ちが楽になった。まだもう少し頑張ってみようかな。そうだ。格闘技でも始めてみようかな。見返してやろう」

 これで一旦は大丈夫かな。

 僕は安どした。

「ああ、もうこの世界なんて滅びればいいのに。何もかもがいやだ」

 僕は絶望を刈り取った。

「風がこんなにも気持ちがいい。空は青く蝶がひらひらと舞っているさまはなんて美しいんだ。僕はさっきまで一体なんて絶望していたのだろうか」

 僕は人間が希望を持って笑顔になるさまがとても嬉しかった。

 これからもどんどんと希望を人間に持ってもらいたい。

 そんなある日、希望を刈り取ろうとする死神がいた。

「おい、希望を刈り取るのはやめろ」

「なんだ貴様。あっ、お前はギザ。まだそんな馬鹿な事を言っているのか。ちょうどいい。ここでぼこぼこにしてやる。いやもう殺してやる。お前は死神の恥だ。国賊だ。死ね」

 死神界で僕を何度もいじめていた男、ベス。僕はその攻撃を難なくかわした。

「もうこんなことはやめよう」

「なんで貴様が俺の攻撃を見切れる。俺は希望を食って強くなっているはずだ。ああ……なんだ。お前も人間の希望を食って強くなっていたのか。悪いな、勘違いしていたよ。お前も死神の仲間入りをようやくしたんだな。悪かったなブラザー」

「いや、悪いが僕は人間の希望は食っていない。その代わり人間の絶望を食っているんだ。しかしそれでもお前よりも俺は強くなった。成長は遅いかもしれないけど、人間の絶望を食っても死神は強くなれるんだ。だからもう人間の希望を食うのはやめようよ」

「き、貴様。やはり死神界の裏切り者か。殺す。今ここで殺す」

 ベスは僕に死神の鎌を振り下ろしてきた。

「死神界のルール。他の死神が自分に向かって鎌を向けた場合……殺しても無罪」

 僕はベスの体を真っ二つに切り裂いた。

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