第2話ぼこぼこ

 死神デビューの日、僕は人間の絶望を刈り取りたい。そう皆の前で宣言した。

 皆の冷たい目が一気に僕に突き刺さった。

 僕は死神にとっての大事な式典のそのあと、建物裏に呼び出された

「お前、なめてんの?」

 僕は複数の死神たちにぼこぼこにされて殺されかけた。死神は生命力が高く、なかなかしなないとは言っても、限度ってものがあり、今回のような暴行があと数度続けば僕だって死んでしまうだろう。

 僕はとぼとぼと帰路に着いた。

 死神の家は、家庭によって違う、髑髏の家に住んでいたり、洞窟の中に住んでいたり、何もない平原に横たわっていたりする。それはこの死神界が天候に左右されない、常に曇りの空であるからこそ可能なのである。地面には虫などはいない、草だけが生えているのだが、その草の色は紫色である。僕は人間界を見下ろしてあの青々茂った草に感激していた。空は青く、雲は流れ心地よさそうにはしゃぐ子供たちを見て、僕もあそこに行ってみたいと常々思っていたのだ。しかしようやくいけると思ったら死神としてのデビューの日なのである。僕は人間を殺したくはなかった。希望を刈り取りたくはなかった。

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