第2話 当然の報い


 それから暫くして、生前アルベリクが俺宛に送っていた手紙が届いた。そこには、女神からのお告げとして聞いている出来事で、自分が死んだ後に起こるであろう事がいくつか書かれていた。

そもそも魔王の復活というのはあくまで世界の危機の一つに過ぎない。この世界にはほかにも幾つもの人類存亡の危機があり、魔王が死んでも次の災厄が人類を襲うだけなのだと書いてあった。

 ……アルベリクが言っていたのはこういうことか。

 自ら命を絶つことが、アルベリクなりの復讐だというのなら、俺はその遺言に書かれていたことに関して一通り見届けようと思った。


 その後も日々は過ぎていき、アルベリクが命を絶ってから1年程の時が立った。

王都からほど近い黒瘴山(こくしょうさん)に、邪竜帝ホロヴォロスと名乗る巨大な邪竜が顕現した。王都と黒瘴山の間にはアルベリクの生まれ育った村があり、そこにはアルベリクを裏切った幼馴染の娘と、寝取り野郎の村長の息子がいる。

 ホロヴォロスの軍勢は進軍を開始し、雪崩のようになりながら村へと迫っていたが、俺は予めそれを知っていたので魔物が村に到着するより先にアルベリクの村幸いにたどり着くことができた。


「あ、貴方はアルベリクの仲間の天騎士様!!お助け下さい!!」


「ああっ、これぞ天の救け!!」


 俺を視るなりそう言って安堵する裏切り女と寝取り野郎。


「何を勘違いしているんだ」


 俺の言葉に、ヒョ?と不思議そうな顔をする寝取り野郎。


「言っておくが俺はお前たちを助けるつもりはない」


 そんな俺の言葉に、言われた言葉を信じられない様子で間の抜けた顔を晒す2人や、村の一同。いやいや、考えてみろよ俺がお前らを助ける理由、無くないか??


「俺はアルベリクを裏切ったお前たちの惨めな末路を未届けに来ただけだ。俺はお前たちがすり潰されるひき肉のように、魔物に蹂躙され皆殺しにされるのをただ眺めているから、いないものとして扱ってくれ」


 そう言いながら、どっこいしょと村の入り口の岩に腰かける。そんな俺の言葉に、あるものは怒り、ある者は懇願し、跪き、許しを請う。


「俺は勇者じゃない。天の加護を得た守護の騎士、天騎士だ。俺の役目は勇者パーティーの盾として戦う事で、人を護る為に戦うのは勇者の仕事だ。役割が違う。そんな勇者を、アルベリクを追い詰めて自殺に追い込んだのはそこのアバズレ女と寝取り野郎だろ?」


 鼻を鳴らしながらそう告げると、真っ青な顔をするアルベリクの幼馴染と寝取り男。


「アルベリクだったら自分の感情を押し殺してでもお前たちを助けただろうが、俺は違う。俺はお前たちが後悔と絶望の中で蹂躙されてくたばるのをただ見届ける、それだけだ」


 何の感情もなく淡々と告げる俺の言葉に、クソどもが命乞いを始めた。


「ゆ、許してください天騎士様!あ、謝ります!罪も償います!ですがどうかどうか、お腹の子には子供がいるのです」


 涙ながらに土下座をするのは幼馴染の娘。


「アルベリクは死んでるのに何をどうやって償うんだ?そもそも勇者を裏切ったクズ達の子供がどうなろうと俺の知った事じゃない。助かりたければ自分で何とかしろ」


 俺のそんな言葉に、村長の息子は腰にぶら下げていた革袋を差し出しながら俺に縋るように懇願してきた。


「か、金なら払う!ここに金貨30枚はある!足りなければもっと、必ず払う!」


「だが断る。俺は別に金に困っちゃいないし、そもそも俺からしたらそんなのはした金だ」


 取り付く島のない俺を、鬼、悪魔と罵りながら逃げ出す準備に戻る村の住人達。

 村長の息子が幼馴染の娘に手を出すのに何もしなかった、止めなかったお前たちにも罪はあると俺は考える。なので潔く嬲り殺しにされてほしいね。


 それからほどなくして街にたどり着いた魔物の軍勢が、逃げ出した者達も含めて村人を入念に殺し尽くしていった。息絶えるまで身体を損壊されて玩具にされるもの、生きたまま貪り喰らわれるもの、虫けらのように殺されるもの様々だった。

 身重のアバズレ幼馴染を置いて逃げ出した村長の息子は人型の樹木のようなモンスターに捕獲されて村に連れ戻された。何度も触手に突き刺されながら、最期の瞬間まで魔物に命乞いをしたり、見苦しく俺に助けを求めてきたので、俺は酒の瓶をラッパ呑みしながらそんな様子を眺めていた。あぁ、酒が美味い!!


「おかね、おがねありますがらっ!おがね、きんがっ、あげますがらあっ!たしゅげでぐだざいい」


 勿論、そんな懇願は無視した。暫くして動かなくなった村長の息子の死体は磔のように樹木の魔物の枝に吊るされていた。

 そんな間に幼馴染の娘は大型モンスターに下半身を喰われて上半身だけになって転がっていた。地中から奇襲してきたサンドワームに身体を食いちぎられたのだ。胸から下をサンドワームに飲み込まれた状態で、悲鳴を上げながら俺に助けを求めていたが俺は無言の放屁で返事をした。

 最後の瞬間はアルベリクに許しと助けを求めながら身体を千切られた。呆気ないもので、絶望に染まった顔のまま上半身だけがその場に残された。

 サンドワームは下半身と胎児を食った事で満足したのか地中に帰って行った。あぁ、因果応報って本当にあるんだな。

 そうして数時間の間に、村の住人は老若男女等しくただの肉の塊になった。

 ちなみに殺戮の間、俺は天騎士のスキルを使って防壁を貼り、俺に向かってくる魔物だけはきっちり倒していた。

 俺の周りには俺に助けを求めようとして寄ってきて魔物に殺された村人の死体もある。

最初の頃は俺にもモンスターが向かっていたが、手を出さなければ倒されないと理解すると俺を避けて魔物達は村人を殺して回った。


 いやぁ、いざ見届けても何の感慨も湧かなかったぜ。自分で思うよりも俺は壊れているのかもしれない。でも復讐というのは死んだ人間のためにやるのではなく、生きてる人間がスッキリするためにやるものだと思う。このまま裏切った女や寝取り男やこの村の住人共やのうのうと生きていくよりは、ゴミみたいに死んでくれてすっきりした。やっぱり復讐はやった方がいいなと思う。

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