第6話変態共

「昨日…変態に出会ったんだ…」

朝からする話ではないのだが登校中に昨日の出来事を話すと霙は何でも無いように頷く。

「私も毎日出会っているよ…クラスにも学年にも学校中にも変態はいるよ…悲しいけどね…」

霙は疲れたような表情で肩を落とすとかったるそうに首を左右に振った。

「そうなんだけど…そうじゃないと言うか…」

「どういうこと?」

昨日、霙と別れた後に起きた出来事を話して聞かせると彼女は苦々しい表情を浮かべた。

「それって彼方くんに好意があるってことなのかな?」

「どうだろう…誰の机でも良かったんじゃない?その…スリルを味わいたかっただけとか?知らんけど…」

「それは中々に重度ね…」

「そうなんだよねぇ〜…」

答えの出ない問題に頭を悩ませるのは得策ではないと感じると僕らはそこから恋人らしい会話に切り替えて学校を目指すのであった。


変態に頭を悩ませるよりも先に僕と霙の関係を深めていきたかった。

しかしながら僕らの目の前には苦難という名の変態共が待ち受けていて…。

「彼方ちゃ〜ん♡今日の放課後は生徒会だよぉ〜♡」

僕をちゃん呼びする人物は一人しか居ない。

その人物がクラスを訪れて僕は軽く嘆息する。

「海野さん。ちゃん呼びやめてください。それとクラスに来ないでもらっていいですか?恥ずかしいので…」

海野宙海うみのそらみ

三年生でこの学校の生徒会長である。

それ以上に僕らは幼馴染で古くからの付き合いである。

「そんな素っ気ない呼び方しないでよぉ〜!前みたいにそらちゃんって呼んで?♡」

「はいはい。もう行ってください」

適当にあしらうとそれを感じ取った海野は仕方なさそうに廊下を歩いていく。

「生徒会長と仲いいの?」

霙は不審な表情を浮かべながら僕の顔を覗き込んでいた。

「仲良いって言うのも違うけど…腐れ縁的な感じかな」

「幼馴染的な?」

「そう。家が近所なんだ。昔はよく遊んだ」

「そっかぁ…それで?初恋の相手とか?」

「ありえないよ」

「なんだ…心配して損した」

「いや、心配するのは遠からず正解かも…」

僕の意味深な言葉に霙は心配そうな表情を浮かべている。

「僕に不安を覚える必要はないけど…海野さんも変態だから…」

「あぁ〜…そっちね…身の危険を覚えたら自己防衛してね?」

それに頷くと丁度鳴った予鈴により席に戻ると授業に向かうのであった。


放課後の生徒会室での出来事。

「彼方ちゃん…恋人出来たってホント?」

「誰に聞いたんですか?本当ですけど」

「学校中で噂になってるよ?相手があの氷の姫だって言うんだもん。どうやって落としたの?」

「落としてなんかいませんよ。たまたま付き合えただけですから」

「えぇ〜!ちゃんと答えてよぉ〜♡私の彼方ちゃんに手を出すなんて許せないんだけどぉ〜!?」

「海野さんのじゃないです」

そんな他愛のない会話を繰り返しながら生徒会の仕事に追われていた。

「会長の彼方好きは底しれないからな…気をつけろよ」

友人であり生徒会メンバーの神野光じんのひかるの言葉に軽く頷くと他のメンツも会話に参加する。

「本当にどうやって氷室さんを落としたの?あの娘、女子には優しいけど男子には手厳しいじゃん」

生徒会二年生、女子メンバーの九条菊くじょうきくの追及に僕は顔をしかめる。

「別に。ただ小学校の同級生だったってだけだよ。本当に落としてなんかいないよ」

「ふぅ〜ん。それだけの理由であの男子嫌いの氷室さんが付き合うまでいくの?」

「僕に聞かれてもな…ただ付き合えたのは事実だけど」

生徒会のメンバーは僕の話題で花を咲かせながら業務に従事する。

本日の業務が終了すると海野が僕を呼び止める。

「なんですか?」

「ん?もうやることやったの?」

「やめてくださいよ…ゲスな質問ですね…」

「まだなら私で練習しておく?♡二人にとって初めての時に下手だと恥ずかしいでしょ?」

「冗談でもやめてください。帰りますね」

海野をあしらい生徒会室の外に出ると危険を感じて逃げるように帰路に就くのであった。

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