第4話追想

小学生の頃の私は気弱でふくよかな見た目をした女の子だった。

クラスの男子には毎日のようにいじりという名の罵倒を受けていた。

そんな私にも救いの手を差し出してくれる男子は居た。

それが彼方くんなのである。

私がいじられて泣いているといつも助けてくれた。

男子には注意をして私をかばってくれた。

「霙ちゃんがお前らに何か迷惑かけたか?」

彼方くんは男子生徒に向けて正論を口にすると彼らは決まって困ったような表情を浮かべていた。

その後はいつだって何の根拠もない男子の罵倒に彼方くんは冷静に対処をしていた。

しかしながら彼方くんの論理的で大人びた発言を耳にした男子生徒は理解が及ばないのか暴力に打って出る。

複数人に囲まれた彼方くんは結局、打ち負かされてしまうのが毎回のオチだった。

それでも彼方くんは私がいじられて泣いていればいつでも助けてくれた。

自分が物理的に傷つくことを分かっていながら彼は卒業までずっと私をかばってくれた。

ちゃんとお礼を言えることもなく私は小学校を卒業する。

中学は別々になってしまったが私は彼方くんに再会するまで絶対に痩せようと思った。

そして私をいじり続けてきた男子に負けないぐらい強い人間になろうと思った。

その過程で私の男子嫌いに拍車がかかり男子に対して口が悪くなった。

男子を寄せ付けないほどの口の悪さに容姿を整えた私は高校に入学して驚くことになる。

彼方くんと偶然再会したは良いのだが彼は私を覚えていないようだった。

それには私の名字が母親の旧姓に変わったからというのもあるだろう。

何よりここの生徒は少しおかしい。

口汚く罵倒されても嬉しそうな表情を浮かべる生徒が多く存在する。

気味が悪く気色が悪かった。

それでも本日、彼方くんは過去を思い出し私たちは晴れて恋人になった。

今後の二人の幸せな恋人生活を楽しみに思いながら眠りにつくのであった。


そんな彼方と霙の知らぬ所で動き出す女子生徒の存在などまだ誰も知りはしない…。

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