第7話



7


あの夜のことがきっかけで私はよくあの公園へ足を運び彼と会うようになった。

彼との会話は消して長く続くわけでもなく、

言葉につまることも多くあった。

しかし、二人でいる時間が続くほど

私はすごく心が満たされていく感じがした。


突然のことだった、

ある夏の日、

蝉の声が騒がしかったあの日。

私たちのあの時間は訪れなかった。

彼が倒れているのを見つけた私は何度も

声をかけた。

「蒼人くん!ねぇ、!返事して!」

体を強く揺さぶりながら返事を求めるが、

彼からの返事は一向にない。

すごく怖くなった、失いたくないと

強く思った。

夏の暑さの中、自分でもわかるほど、

冷静さをかいていた。

そんな時、ふと彼のカメラが目に入った。

倒れながらも手に持っているそのカメラを

私は拾い上げた。

こんな事をやっている時でないことはわかっていたが、彼が何を撮っているのか、

彼のことが少しでも知れる気がして、

すごく気になってしまった。

電源を付け、フォルダーを見るボタンを押す。

画面に映っていた地面が切り替わった瞬間

私は息を飲んだ。

そこに映っていたのは、

一人の女性の死体だった。

見間違えではないかと信じたくなるほど、

恐ろしい1枚だった。

写真のインパクトからか、

我に返った私は直ぐに救急車に連絡して、

到着を待った。

救急車が来るまでの時間、

私は彼の手を握り続けていた。


目覚めた彼と話した時、見た目は同じはずなのに、まるで初対面のように思えた。

彼の表情や仕草、言葉一つ一つに新鮮で、

不思議な感じがした。

心の中では写真の事を彼に問い詰めなきゃ

と強く思っていたが、

目の前にあるこの幸せを壊す勇気は

私にはなかった。


翌日の外出のプランを考えてる途中に寝てしまった彼の寝顔を見ながら、罪悪感に苛まれる。

カバンの中から彼のカメラを取り出し、

もう一度フォルダー確認する。

そして深いため息をつく。

彼との幸せがいつ無くなってしまうか、

考えるだけで恐ろしくなる。

ふと私は眠っている彼の方へカメラのレンズを向けた。

レンズ越しでも彼の寝顔は、

幼くて可愛かった。

「みんなこんな気持ちで撮ってたのかな」

無くなってしまうかもしれない

そんな儚くて大切な瞬間を失いたくなくて、

その一瞬を切り取りたくなる

後からそれに縋れるように。

この小さな箱に収めておけるように。

私は人差し指に力を入れて、

生まれて初めてシャッターを切った。

「 カシャッ 」



















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