第8話頼ったのはお前だぜ
『芥川先生!』
校門の入り口で、俺を呼ぶ声がしたので振り向くと佐倉が全力でこちらに向かって走ってきた。
『朝一から大きな声をだして、なんかよう? っつうかあんまり女の子が全力で走らない方がいいと思うよ。可愛い人でも可愛くなくなるから』
『ようは昨日の橘さんのことについてです。私は常に全力ですので。そうじゃなきゃ生徒に…』
『はいはいそれはもう分かったから』
何回も聞いている佐倉の全力話を遮った。
『それとクラス委員長のことだけど俺には関係のないことだから、お前が適当に解決してくれればそれでいいから』
『そんな、あなたの生徒なんですよ』
『知るかよ。俺は俺の為に生きてる。利益にならない人間とは関わりたくないんだよ。そんじゃ』
『出欠とるぞ』
朝に生徒立ちの名前を一人一人言わなければいけないのが、俺にとっては一番の苦痛だ。
そして一人一人の出欠をとっていた気付いたのだが、まぁ当然気付くのだがクラス委員長、
まぁ別にあいつがいようがいまいがどうでもいい事だけどな。
朝の地獄のホームルームが終わり職員室に戻ると、待っていましたと言わんばかりに、佐倉が俺の元へと近付いた。
『なんか用?』
『だから橘さんが大変なんですって』
まぁそれしかないとは思ったけどね。
佐倉は独り言にように喋り始めた。
『橘さんの家庭事情ってご存知ですか?』
『…』
『橘さんご両親から、テストの点数が悪い時とかに暴力を振られているんです』
『…』
『それだけじゃありません。ご両親は立派な市議会員で嫌な事があったりしたら、橘さんに手を上げてストレスを発散しているんです』
『…』
『なんでなにも言ってくれないんですか?』
佐倉は俺にどうにかして欲しいと訴えかけているが、俺にとってはどうでもいい。
ましてや学校内で起こったことでもないなら、なおさらどうでもいい。
『それで?』
俺が発した言葉は無気力で冷たい一言だった。
『それでって。あなた『それでお前はどう思ったんだよ』
佐倉の言葉を遮り俺は言葉を続ける。
『それ聞いて、橘を保護しなかったのかよ。警察に相談は? 橘の両親との対話は? やる事なんでいくらでもあるぜ。橘はお前に頼ったんだ。だからお前で何とかしろ。それが筋ってもんだぜ』
『…』
今度は佐倉が無言になっていた。
佐倉は悔し涙か、俺の元から離れどこかに消えて行った。
『知るかよ』
俺は一人になった職員室でボソッと呟いていた。
嫌いな者...それは人間です。 てるた @teruo0310
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