第6話生徒立ちの名前なんて覚える意味がない

『それだったら私が名前覚えるの手伝ってあげる』

事情を話したら佐倉が目をキラキラさせながら、俺に迫ってきた。


『いや、いいって。俺、人の名前覚えるの苦手だし、ましてやあいつらの方こそ嫌がるだろ』

『何でそんなにマイナスのことしか考えないんですか。大丈夫ですよ私がいるんですから』


『いや、別にそういう意味じゃなくて』

無理やり手を握られ強制的に職員室から移動した。



『それじゃあ先ずはこれからやっていきましょうか』

どこかの空き教室に入った俺達に佐倉が生徒一人一人の切り取ってある顔写真を突然提案してきた。

『こんなの無理だわ。顔と名前が全く一致しない。ってかお前なんで俺達のクラスの写真も持ってるの。怖いんですけど』


『教師として全校生徒の名前を覚えるのは当たり前です』

なぜかどや顔を俺に見せてきた。

『そういうのは校長先生がやる事で、俺達は普通に自分のクラスだけ…』

佐倉が口角を上げてニンマリとした。

『そうです。私達は自分のクラスの生徒だけは覚えないといけないんです。だから覚えますよ』

『はいはい。めんどくせー』


『これは?』

『分からん』

『これは?』

『ナス』

『これは?』

『分からん』

『これは?』

『ナス』


佐倉はなんの嫌がらせなのか、野菜とクラスメイトを交互に見せてきた。

『これは?』

『分からん』

『だから何度言ったら分かるんですか、この人はあなたのクラス委員長だって何回も言ったじゃないですか』

『あーこいつね。入学式早々俺の所に噛み付いた生意気なガキね』

『自分の生徒を生意気とか言うのはやめた方がいいですよ』


『自分の生徒だから好き勝手に言うのはいいんじゃないのか。逆に自分の生徒じゃないのに悪口を言う人こそ、人としてどうかと俺は思うけどな』

『ぬぎぎぎ』

正論だったらしく佐倉は頬っぺたを膨らませギリギリしていた。


『まぁいいです。それじゃ続きをします』

『え、まだやるの? 』

『当たり前です。覚えるまで徹底的に指導しますから』

逆に佐倉の心に火をつけてしまったらしく、俄然やる気が満ち溢れていた。


俺は腹をくくり諦めかけ、地獄の写真交互みせが始まった。



『先生この後、時間いいですか?』

昨日覚えたてのクラス委員長が、朝のホームルームが終わると俺に突然話しかけてきた。

『俺になんの用だよ。要件なら今ここで聞くぜ』

『ちょっとここでは』

なぜそんなばつが悪そうな顔をする。

そんなにも言えないこと。

だとするとチャンスだ。


この生意気なガキを地獄に落とせる。

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