第3話新たな出会い
【冠着~冠着~】
無機質な車内音声が流れ意識を取り戻したが、既に扉はしまっていた。
『やっちまったー!』
冠着高校の正門に立ち時計を確認すると、入学式は完全に始まっていた。
『帰るか?』
『帰らないか?』
『どっちなんだい?』
『ここにいる』
いかんいかんつい一人で、世間から人気のお笑い芸人の物真似をしてしまった。
『今のって小きんに君ですか?』
気付いたら俺の隣にふと女が現れていた。
『お、ってあんた誰?』
『私は今日から担任になった
『ご丁寧にそれはどうも。早く行かなくていいのかい? 学校もう始まってるみたいだけど』
『大丈夫です。生徒達はみんな優しいんで多少の遅刻は許してくれます』
『フッ』
思わずこいつの偽善者ぶっている言動に薄ら笑いしてしまった。
『何ですか? 突然笑って』
『いや、ちょっとあまりにも純粋過ぎてつい』
『純粋ですよ。そうじゃなきゃ学校生活は続けられません』
『そうですか』
俺は自分の教室(一年一組)を覗き込むと生徒達は誰一人話さず、手持ちぶさたになっていた。
入学式当日は不思議な物で生徒達は誰一人話さないのだが、三日目一週間経った頃にはだいぶ慣れていき、一ヶ月経つころにはだいたいクラスのなかのまとまりが出来ているのだ。
俺はその事に関して言える事は一つ。
全ての人間を不幸にしたい事だ。
教室内に入ると、異様な静けさは収まり、今度は異様な不信感に変わって言った。
黒板に俺は【
『えーっと今日からこのクラスの担任になります芥川龍介です。よろしく』
あきらかに俺を見て生徒の一人が嫌そうな顔をしていた。
『先生?』
俺の目の前の女子生徒が質問してきた。
『何だ?』
『先生は何で今日入学式に遅れたんですか?』
『全く嫌みなガキだぜ』
『先生言葉しっかり選んで話して下さい』
つうかこのガキマジで生意気だわ。
『そんなもん昨日寝れなかったから、遅刻したに決まってるし、お前らの事だから俺の事少なからず知ってるだろ。人間嫌いの芥川龍介って』
生徒からは誰一人として反応がない。
『そんじゃ、俺はこれで』
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