第7話

次の日の朝、ウルジュは頭の痛みを抱えながら目を覚ました。彼はゆっくりと首を動かすと、そばにあった椅子に座ったまま寝ているサフィの姿を見つけた。


「サフィ…まだ眠っているのか、気を失って一晩眠ちゃったんだな…」


ウルジュは頭の痛みを抱えながらも、サフィを起こさないように慎重に動き出した。彼は心地よく眠っている様子を見て、なるべく彼女を起こさずに部屋から出ることを決める。


静かに足音を立てずに歩みを進め、ドアの方へと向かった。彼は扉を開ける際に気をつけ、音を立てないように慎重にドアに手を伸ばす。扉をゆっくりと開いた瞬間、目の前に侍女の服装をした幼い女二人組と目が合った。


「おはようございます!体の調子はどうですか?」


「まぁ、なんとなく…かな。」


同じ服装でお互い紺色の髪に白髪が混じっており、琥珀色の瞳をしている。そんな中、幼い女二人組の長髪でメガネをかけた大人しそうに見える一人が明るく声をかける。ウルジュは頭痛が残る中、少し戸惑いながらも丁寧に答えた。すると、短髪の一人が興味津々の表情で彼を見つめながら言った。


『それでさ、昨晩はどうだったの?…ねぇねぇ!』


「いや、特に何もなかったよ…サフィが近くで寝ていたくらいで…」


ウルジュは少し困ったような表情で答えた。


『そんなこと言って〜!…サフィ様のことを呼び出したんじゃないんですか?…「サフィ…今晩俺が寝ている部屋に来てくれないか!」ってね!』


「そうそう、絶対にそうに違いない!」


しかし、女の子たちはウルジュの言葉にはまったく耳を貸さず、陽気な笑顔で囁り合いながらウルジュを見つめた。ウルジュは驚きと戸惑いを隠せない表情で否定すると、少し苦笑いを浮かべた。


「いやいや、本当に何もなかったから。僕だってサフィが来るなんて知らなかったし…」


しかし、女の子たちはさらに盛り上がり、ウルジュにちょっかいを出そうとしているように見えた。


「その顔、絶対なにかある!アズールに伝えに行こう!!」


ウルジュは女の子たちの意気込みに頭痛が一層ひどくなるのを感じながらも、焦った表情で抗議しようとした。


「いや、本当に…待ってくれ!…本当になかったんだって」


しかし、女の子たちはウルジュの言葉に耳を貸さず眼の前へと走り去っていく。


「ふぁぁ…朝から騒がしいなぁ…おはようウルジュ、体は大丈夫?」


「お、おはようサフィ…今は大丈夫」


後ろから大きくあくびをしながらサフィはウルジュに挨拶をかける。彼女は彼の様子を気遣いながらも、小さく口角を上げて微笑みながら彼に近づいた。


「それなら一緒にお茶でもどうかな?私の朝の日課なの。…天気も良いしウルジュとお話がしたいから」


彼女の提案ウルジュの心の中は疑問を抱いており、それでも彼女の提案を受け入れざるを得なかった。彼らは中庭に設置されたテーブルと椅子に互いに向かい合うように座った。朝の光が柔らかく降り注ぎ、中庭には穏やかな風が吹いていた。


サフィはお茶の入れたカップを手に取り、丁寧にウルジュに渡した。彼女の手から温かみが伝わり、ウルジュはお茶を受け取るとゆっくりと口に運んだ。ウルジュの言葉にはにっこりと笑いながら頷いた。


「ありがとう…サフィ、こんなに丁寧にもてなさなくても…」


「いいの!ウルジュは私を救ってくれた謂わば命の恩人だから…何か聞きたいこととかある?」


ウルジュはサフィの言葉に感謝の気持ちを込めながら、少し迷った後で尋ねた。


「サフィ、"魔法"のことについて教えてもらえることってできる?」


サフィは驚いた表情を浮かべながらも、興味津々でウルジュを見つめた。


「魔法?なんでそれを知りたいの?」


「王都の皆が魔法を使って会話とかしているのを見て、なぜなのか気になったんだ。もし魔法のことについて知識を持っているなら、教えてほしいんだ」


サフィは真剣な表情で訴えるウルジュの言葉を受け止めた。


「う〜ん、魔法かぁ…教えられる範囲でなら話すことはできるけど…」


ウルジュは安堵の表情を浮かべながら、サフィの言葉に耳を傾けた。


「10年前に王都がオーク・ゴブリンの襲撃を受けた同時期に、各国で「国家転覆を企てようとしている異能者から国民を守る」という大義名分の元で“魔女狩り”という迫害する動きが活発に行われていたんだよね」


「なぜそんなことが起きたんだ?なぜ魔法を持つ者たちは迫害を受けるほど恐れられたの?」


「人々はそもそも魔法の力を知らなかったし、それに恐怖を抱くもの必然だったんだよ。魔法は研究していた極一部の人々か魔法を扱える人々の手にしか存在しないし、その力を誤用した者たちがいたことも事実だよ。また、魔法使い以外にも信仰や政治的な思惑が絡み合い、異なる思想を持つ者たちも異能者として一括りにされて排斥の対象にされたんだ…」


ウルジュは憤りと同時に悲しみを感じたが、彼は続けて質問した。


「そういった人たちがなぜ、アクア王国に集まるようになったの?」


サフィは落ち込んでいた顔をゆっくりと上げた。


「当時はレガノンとの関係が悪化してたし、襲撃に遭ったことが伝えられると攻め込まれる可能性があったから、王都の早急の復興に協力することを条件に異能者たちを受け入れたの」


ウルジュは王国と魔法使いたちが共に自らを守りながら生き抜いた姿に敬意を抱きながら、更に興味を持った。


「なるほど…」


「これ以上は、彼女たちのほうが詳しいから…」


サフィは後ろを振り向いた。そこには先程ウルジュを煽っていた侍女の服装した女性二人と、怒りに満ちた表情のアズールが立っていた。

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SEED1 〜story of fantasy 水野・J・タロー @mizunoj230405

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