第4話

ウルジュが歩いていくに連れて、空が薄明るくなり、朝日が東の空から昇り始めた。その光が彼の肌を温かく照らし、疲れた体を癒していく。


歩みを進めるうちに、彼の目には森の中に城壁が姿を現した。立派な石造りの城壁が聳え立ち、周囲を見守っているかのようだった。ウルジュは興味津々で近づき、城壁の一部を触れた。その石は年月の重みを感じさせるほど堅固にできていた。


城壁を見上げながら、彼は思った。「ここから先が王都ブラウか…。」彼の胸には期待と緊張が入り混じった感情が広がっていく。ウルジュは城壁に沿って歩き始めた。しばらく進むと、城門が現れた。高く大きな門は厳かな雰囲気を醸し出し、入り口を守る兵士たちが厳重な警戒態勢を取っていた。


彼は自身の目的を偽るため、城門に近づき兵士たちに声を掛けた。「私はウルジュと申します。お届けしたいものがあり、入城の許可をいただきたいのですが…」


兵士たちはウルジュの顔をじっと見つめ、身分証明書を求めた。彼はそれらを提出し、緊張しながら審査を待った。


しばらく待った後、兵士の一人が頷き、ウルジュに対して「ブラウへの入城を許可します。ただし、城内での行動には制約があることを忘れないでくださいよ。」


ウルジュは城門をくぐって王都ブラウへと足を踏み入れた。


アクア王国の王都ブラウ、広大なビル湖の湖畔に街が造られ、ルージュラよりも街の規模は小さいものの、大通りに入れば賑やかな様子が広がっていた。


野菜売り場では、新鮮な野菜が鮮やかな色彩で陳列されていた。大根、ニンジン、トマト、キャベツなど、その種類は豊富で、農民たちが丹精込めて栽培した品々が魅力的に並んでいる。売り手は声高に特産品を宣伝し、客たちは選り取り見取りの中から自分たちの好みに合った野菜を選び取っていた。


路店では、手工芸品や装飾品、洋服などが豊富に並べられていた。そこでは熟練した職人たちが自ら作り上げた作品を誇りを持って展示しており、その個々の商品には彼らの技術と情熱が込められていることが伝わってきた。販売員たちは笑顔で接客し、商品の魅力を伝えるために一生懸命努力していた。


一方、生活に魔法が使われている光景も街のあちこちで見受けられた。街灯は魔法の力で点火され、明るい光が街を照らし出していた。また、人々の手には細く短い杖のような魔法のアイテムが握られており、支払いやコミュニケーションに利用されていた。小さな魔法の装置が便利に活用され、人々の生活を効率的に支えている様子が伺えた。


ウルジュは興味津々で路地裏に入っていった。路地裏には小さな店や居酒屋、こっそりと営まれる商店が点在していた。彼は情報を収集するため、手元のメモ帳にメモを取り始めた。


「そんなところで何してるの?」


後ろから透き通るような美しい声に驚きのあまり思わず振り返れば、フードで顔の上半分が隠れており、体つきから女性と認識するには時間がかからなかった。


「!!…そ、それは…その…」


「君ってひょっとしてウルジュ?…あなたウルジュだよね!!」


「なぜ、あなたが俺の名前知ってるんだ?」


咄嗟にメモを隠しては、何事もなかったかのように振る舞おうとするもフードを被った女性は笑顔で話を続ける。それにゆっくりと詰め寄る彼女の接し方に、自身のことを知っている様子でウルジュは困惑していく。


「私のこと忘れちゃった…悲しいなぁ…」


彼から離れると彼女は残念そうに呟けばゆっくりとフードを捲りあげる。そこには整った顔立ちに濁りのない青い瞳がウルジュのことを見つめる。


「私の名前はサフィ…って言っても覚えてないからわからないよね…」


「ごめん…」


ウルジュは驚きと困惑が入り混じる中、サフィの顔を見つめた。彼は頭の中で必死に思考を巡らせたが、その名前や当時の関係を思い出すことはできなかった。


「見つけたぞ!!」


気まずい雰囲気が漂う中、一人の兵士が二人のことを見つけると場所を伝えるかのように大声で叫ぶ。


「まずい!」


「ウルジュ…こっち来て!」


こちらに迫ってくる兵士に絶望感を抱きながらも、サフィはウルジュの手を掴み兵士たちからの逃走を試みる。彼らは周囲に目を配り、一瞬の隙を突いて路地裏の角を右へ左へ走っていきやがて兵士から振り切ることに成功する。


「はぁ…はぁ…サフィ…どうやら逃げ切れたらしい…」


「や、やったね!」


ウルジュは胸をなで下ろし、サフィと共に一時的に安堵の息をついた。しかし、彼らの逃走はまだ終わっていなかった。


二人は走り続け、数分後にやっとのことで街の喧騒から離れた静かな場所に辿り着いた。彼らは草地に座り込み、疲れた身体を休めることにした。


「さすがにこれで一時的に安心できるかな」


「まさかあんなに追われることになるとは思わなかった。」


サフィは微笑みながら呟いた。それにウルジュは応えるように微笑み返し頷いた。そんな時一人の軍服姿の男性が二人の横から現れて


「見つけましたよ、サフィ様」

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