第2話
王城の中へと入っていき、壮麗な庭園を抜けて行く。色とりどりの花々が咲き誇り、その甘い香りが鼻先をくすぐった。途中、城壁には見張り台が立ち並び、見張り兵が厳重な警戒態勢を取っている。
しばらくして開かれた空間が近づいてきた。その場所には闘士たちが集い、剣を交える姿が見え隠れしていた。剣同士が激しくぶつかり合い、金属の響きが空間に響き渡る。戦士たちの力強い吠え声と剣の音が一体となり、壮大な戦いの音楽が奏でられていた。
「マリー様…ウルジュ殿を連れて参りました。」
闘士たちが彼女の声を聞いた瞬間、嘘のように空間に静けさが漂う。闘士たちは左右に別れ、開かれた道をマーガレットが歩き始める。私はそれに遅れを取らないように彼女の後を着いていく。
レガノン・ライル・マリー。レガノン王国を1代で強大な軍事国家に発展させた前国王の一人娘。父である前国王からは軍事的な才能を受け継ぎ、現在は女王として権力を行使し、国を守り繁栄させるために、彼女はこの強大な国家を指揮している。
「お久しぶり、ウルジュ。何年ぶりかしら?」
マリーの声が久々にウルジュの耳に届く。彼らは長い間別々の道を歩んできたが、再び出会う運命が巡ってきたのだ。
ウルジュはため息をつきながら、マリーの顔を見つめた。光の束を集めたような金髪と燃え立つような赤さの瞳、彼女の美しさに磨きがかかっており、かつてと変わらずに彼の心を揺さぶっていた。しかし、彼は自分自身に言い聞かせるように厳しい表情を浮かべた。
「マリー…久しぶりだな。お前も相変わらず立派になったものだ。…ぐふっ!!」
「貴様、マリー様に馴れ馴れしい口調は慎め」
「ず…ず、ずびません…でした…」
右隣にいたマーガレットから不意の肘打ちを腹部に喰らわれ後ろに下がりながら腹部に手を当てる。その様子にマリーは微笑みを浮かべた。彼女は彼の言葉の奥に隠された感情を理解していた。
「ねぇ…マリー何で俺を
「詳しいことは後で伝えるわ。それよりも久々に私と一戦お願いできないかしら?」
マリーの手から放たれた木刀を受け取れば、彼女の挑発的な言葉にウルジュは微笑みを浮かべ、剣を構える。彼らの間には過去の闘いの思い出が交錯し、再び戦うことが運命となったのだろう。
* * *
「マリー様、よろしければ我が息子と一戦だけでもお願いすることは可能でしょうか?」
10年前当時はまだ闘士の一人だった父が子供を連れてマリーの前に現れた。彼の顔には決意が宿っており、その頃の俺は緊張しながらも彼女の顔を見つめながら片手には木刀を握っていた。
「うん!いいよ、一回だけね!」
屈託のない笑顔で彼女は彼の要望を受け入れる。当時の俺は緊張を抑えようと木刀の先をマリーに向けて深呼吸をした。周囲の闘士たちが興味津々の視線を注ぎ、静まり返った空間が広がった。
* * *
「確か…初めて戦ったときはあなたが駄駄をこねて3戦ぐらいやったのかしら、どちらも私が圧倒的に勝利したのは今でも忘れてないわ。ウルジュ、今回は私にハンデでも設けたほうがいいんじゃないのかしら?」
マリーは優越感に満ちた微笑を浮かべながら、ウルジュに挑発的な言葉を投げかけた。彼女の言葉はまるでウルジュの実力を軽んじるかのように聞こえた。
ウルジュは深く息を吸い込み、冷静な表情を保ちながらマリーに向き直った。
「マリー、俺の力を侮るなよ。ハンデなんていらないさ。」
彼の言葉にマリーの微笑みが一瞬揺れたが、すぐに元の優雅な表情を取り戻した。
「そう、ならばウルジュ、全力でかかってきなさい!」
広場では再び緊迫した雰囲気に包まれた。二人の目が交差し、決意が確かに伝わってくる。
「それでは準備は宜しいか?…始め!!」
間に入ったマーガレットの掛け声と共に、ウルジュとマリーの戦いが開始された。
ウルジュは力強く剣を振りかざし、マリーに立ち向かった。しかし、彼の攻撃はあまりにも予測可能で、マリーは軽やかにそれをかわしつつ、的確な反撃を仕掛けていく。
彼女の動きは優雅でありながらも迅速で、まるで舞踏のように美しい。ウルジュは彼女の剣の勢いに圧倒され、次第に追い詰められていく。
マリーの剣術はまさに芸術そのものだった。彼女の技は緻密かつ洗練されており、ウルジュはその優れた戦術に対処する術を見つけられないでいた。
時間が経つにつれ、ウルジュの息は荒くなり、汗が額に滲んでいく。彼は必死に応戦しようとするが、マリーの圧倒的な力と技術の前にはどうにもならない。
周りに集まった闘士たちは息を呑み、驚嘆の声を上げる。マリーの剣がウルジュの身体に触れるたび、痛みと絶望が彼を襲う。彼は自らの限界を感じながらも、最後まで諦めずに戦い続けた。
そして、ついに決着がついた。
マリーの剣がウルジュの守りを抜き、彼の身体に深く刺さった。ウルジュは痛みに歪んだ顔を浮かべ、剣を手放した。その瞬間、彼女は彼の喉元に剣先を突き立てて。
「はぁ…はぁ…俺の負けだよ…マリーには敵いっこないよ…」
ウルジュの声は苦悶に満ちていたが、彼の目には敬意と感謝の光が宿っていた。
「だから言ったじゃない。ハンデを設けたほうがいいって。」
ゆっくりとマリーは喉元から剣を離しては、ウルジュに手を伸ばす。彼はそれに応えるように伸ばされた手を掴み、立ち上がった。
「これで、ウルジュの実力を見ることができたわ。それも踏まえてあなたを
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