第2話

かつて人類が宇宙に旅立ったとき、人類は様々な困難に直面した。私には想像もつかないが、当時の宇宙航空技術はとても未熟で、常に死と隣り合わせの綱渡りであったという。


そんな命がけの旅の中でようやくたどり着いたのが、今では銀河系で最大人口を誇る首星ユートピアである。


私が目指す目的地であり、私達が生まれ育った故郷でもある。


現在私が居住している星からは結構距離が離れているため、片道で半年以上はかかる。


移動に半年かかるというのは、平均的な渡航時間と比べて長いが、それを加味しても早めに計画を実行に移せたこともあって予定よりも滞在期間を延長することができそうだ。


とはいえ、3期の入学まで約3年、道中でのトラブルを考慮すれば余裕があるとは言い難く、滞在期間は長くて一年が限界だろう。できれば6年くらいなあちらで過ごしたいけれど、今回は諦めるしかない。


私が今後の予定について考えを巡らせている間に、宙空エレベータは重力圏を脱出していく。


重力制御装置によって本来感じるはずのGや無重力の影響は一切なく、非常に静かなものだ。


私は休憩室の座席に腰掛けながら、壁に投影された宇宙の風景を眺めた。


暗闇の中で光る複数の線は私が乗っている以外のエレベーターだろう。ここから見えるだけでも数え切れない。かつて人類が地上に築きあげた摩天楼すら霞むほどの光景だ。一見自然に反したその光景を否定的に考える人もいるだろうが、私は幼い頃からあれが好きだった。


それらを眺めながら私は今一度この宇宙のどこからもいなくなってしまった旧友のことを想った。


そして、しばらくしてエレベータは宇宙ステーションまで到達した。





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