アストロノート・フロンティア

べっ紅飴

第1話

風の噂で友人の訃報を知った。最後に会ったのは懐かしむほどに昔のことで、長らく彼とは疎遠になってしまっていた。


もう彼と言葉を交わすことはできないのだと分かってはいてもあまり実感は湧かなかった。

もう200年は生きているが、親しかった旧友が亡くなるというのは初めての経験だった。


フィクションの中にしか存在しなかった死という概念が、唐突に目の前に現れたせいか、心の準備というものも追いつかずに、どこかこれまで居た場所から遠くに置き去りにされてしまったかのような気分になる。


昔は葬儀というものがあり、死者との別れを儀式として執り行っていたと一期学生の頃に習った記憶があるが、今では廃れてしまった文化だ。


アンチエイジングテクノロジーの進歩で老衰で死ぬということがなくなったのだから、ある意味当たり前のことではあるのだが、こうして人の死に直面してみるとそのような催しがないのがとても残念に思えた。


いずれにしろ、たった一通のメールで死者に寄り添うことはできないということだけは私の中での確かな出来事だ。


せめて何があったのかということくらいは知りたいものだが、いくらテクノロジーが進歩したと言っても、離れた星同士では大きなデータのやり取りは出来ないのだ。

それを思えば知ることができただけでも僥倖かもしれなかったが、やはりなぜ彼が亡くなってしまったのか、それを知らないことには私自身納得できないのだと思う。


もうすぐ私は三期学生として再教育を受けなければならないのだ。あまり悠長にどうするのかを決めている時間はないため、真相を確かめるというのならばすぐにでも計画を立てなければならない。


そんなこと考えて半年、私は彼の母とアポイントメントを取り、宇宙旅行へと旅立つことなった。

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