眠りの終わり

 トモのまぶたが重く、こすりながら世界が徐々に色づいてくるのを見た。目覚めた瞬間、すぐに横にあるゴウのぬいぐるみに視線を落とす。あの慣れ親しんだ顔、ぬいぐるみの耳が欠けていた。その光景がトモの心に混乱をもたらす。しかし、その混乱はすぐに涙となり、頬を伝って落ちていく。

 トモは両手でぬいぐるみのゴウを抱きしめる。その柔らかさ、その温もりは彼にとって唯一確かなものだった。ぬいぐるみのゴウは彼の隣に静かに佇んでいる。その存在はトモにとって救いだった。

 ベッドから降りると、足元には薄闇が広がっていた。周囲は不確かで、何もかもが彼を脅かしているかのように見えた。しかし、ぬいぐるみのゴウだけは彼を裏切らない。その静寂がトモを安心させる。彼は自分が何をすべきか、どこに行くべきか、何を信じるべきかわからなかった。しかし、ゴウの存在が唯一の確かさを与えてくれた。

 トモはゴウのぬいぐるみを強く抱きしめる。その柔らかさ、その温もりが彼の心を満たす。耳が欠けているという事実は、彼が触れることができ、見ることができる唯一の確実性だったからだ。

 トモは涙を流しながらも、ゴウのぬいぐるみを抱きしめて、静かな決意を胸に秘めて立ち上がった。ゴウのぬいぐるみと共に決心した。

 トモはただ静かにゴウのぬいぐるみを見つめていた。その視線は疲れきっていて、何を考えているのか読み取るのは困難だった。彼の目は、深い海底から浮かんできたような深淵を感じさせた。

「ゴウ......」トモの声はか細く、揺れていた。言葉を続けるのは難しそうだった。「あの時、僕が......あの時、僕......」

 彼の言葉は途切れ途切れだった。その繰り返しには、彼が何かを訴えかけているような感じがあった。

「でも、もう二度とあんなことはしない。ずっと一緒にいてほしい。だから、僕を許してくれるかな?」

 トモの声は震えていた。その声は迷いや混乱を含んでいたが、彼の言葉には確かな決意が込められていた。

 ぬいぐるみのゴウは無言で彼を見つめていた。その表情からは何も読み取れなかったが、その静寂がトモの言葉を受け止めているように見えた。

 トモは再びゴウを抱きしめた。その動作はまるで、彼が自身の混乱を抱きしめているかのように見えた。

 彼の言葉は何も解決しなかった。でも、それは彼自身の混乱の表れだった。彼はまだ、自分自身の感情を理解できていなかった。

 ゴウは黙って彼を見つめていた。その表情からは何も読み取れなかったが、その静寂がトモの混乱を受け止めているように見えた。

 トモはゴウのぬいぐるみを見つめていた。ゴウを指でつついた。遊び心に満ちていた。そして彼は、あの疲れきった視線からは想像もつかないような行動をとった。

 トモは手をゴウに伸ばし、ゴウの顔を近づけた。彼の唇がゴウの頭に触れた。キスをしているよう。

「僕たちは、見えない絵筆を握っている」


<了>

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