目が覚めたらゲームの世界にいた件について




「……た……て……ださ……け……が……」 


 耳元から何かを話している声が聞こえてきて、意識が覚醒し始める。


「ん……」


 目を開けた途端、現実ではありえないような生き物と目があってしまい、俺は驚きのあまり飛び起きた。幼さを感じる顔立ちに赤い瞳、透き通る青い肌……ヒトの形はしているものの、明らかにヒトではない生き物が俺をのぞき込んでいる。

 

「え? へ? は?」


 うまく言葉にならない俺をよそに、目の前のヒトの形をした生き物は赤い瞳を細めて微笑んだ。


「良かった、マスター! 目が覚めたんですね!」

「え?」


 ま、マスター?


「マスター! 起きたばかりで申し訳ないですが侵略者です!」


 し、侵略者……?

次から次へと増える情報にキャパオーバーを起こしかける。何が一体どうなっているんだ?


 まだ夢の中にいるのかもしれない。

俺は自分の頬を軽く抓ってみるが、しっかりと痛みを感じる。 


「夢じゃ……ない?」


 呆けている俺を覗き込む赤い瞳の生き物が何やら話しかけている気がするが、うまく頭の中で理解できずにいた。そんな時だった。勢い良くドアがノックされ、外からドスのきいた男の声で「ここにいるのはわかってる! 出てこい!」と聞こえてきたのだ。


「へ? え? 何!?」


 ただ事ではない様子に驚いていると、さっきまで俺を心配そうにのぞき込んでいたヒトのような生き物が俺の前に立ちはだかる。途端、俺はデジャヴのようなものを覚えた。俺はどこかでこの光景を見たことがある……?


 一人、自問自答を脳内で繰り返していると、ドアが壊れ、数人の男たちが部屋に入ってきた。


「覚悟しろ、魔王!」

「ま、おう?」


 目に飛び込んできた男達は見るからに冒険者といった風体で、俺はこの姿にも見覚えがあった。


「これ……」


 数時間前までみていたあのタワーディフェンスゲームにそっくりだったのだ。



うおおおお!と声をあげながら目の前の男達──しっかりと確認出来ているわけではないが、大体3人程度いるようだ──がこちらに襲い掛かってくる。それを阻止するように目の前にいたヒトのような生き物が動く。



「えいっ!」


 ヒトの形をしていたものが楕円形に変化したと思うと、冒険者たちを包み込むように大きくなっていく。


 ──冒険者たちを全員包み込んだかと思うと、シャボン玉が割れるかのように突然姿が消えてしまった。先程まで立っていた冒険者たちの代わりに数枚のコインが床に散らばる。


「マスター!」


 冒険者たちを包み込んだ楕円形の生き物……いや、スライムが再び、ヒトの形に戻ったかと思うとこちらに振り返り、満面の笑みをみせた。


「侵略者を排除しました!」















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