想像通り、俺のステータスが平凡過ぎた件について


「さて、と」


 ベッドに腰掛け、俺の様子をニコニコとしながらみつめる人型のスライムから視線をそらし、先程拾い上げた金色に輝くコインをまじまじと見つめる。


「これ、どれぐらいの価値があるんだろう……」


 ゲームの中では、モンスターの召喚に費やされるだけだった。今俺が現実にゲームの世界に来てしまった可能性が高い以上、ここで生活していかないといけない。勿論、高度な夢という可能性もなくはないのだが、夢の中にしてはコインの感触もリアル過ぎるのだ。現実であると仮定する方が真実に近い気がする。


「……これがもし、ゲームの世界とするなら」


 小声でそうつぶやいたあと、更に小さな声で「す、ステータス」と口にする。

大きな声で言うには少し恥ずかしさを感じた為だ。


 ブウン……と低い電子音が聞こえたかと思うと、目の前に半透明のウィンドウが現れた。


「すげえ……」


 手を伸ばし、ウィンドウに触れる。どことなくスマホの液晶画面のような手触りに、安心感のようなものを覚えた。


 人差し指でスマホの画面をスライドさせるようにステータス画面に触れると、画面が切り替わり、ステータスの詳細が表示される。


「なになに……」


 俺の名前である一慧(かずとし)を別の読み方であらわしたイッケイの文字の横に1という数字が太文字で表示されていて──このイッケイというのは俺がゲーム内でよく使うハンドルネームである──名前の下には職業テイマーと出ていて、更にその下にはテイムしている魔物という文字があり、小さな四角い枠が縦に3個、横に4個の計12個、並んでいる。1番上の左端の四角い枠の中にはスライムの顔が表示されていて、他の枠は真っ黒い状態だった。


 このステータス画面はチュートリアルの戦闘後にみたまんまのもので、これが何を意味するのかすぐにピンときた。


「なるほどね、今はまだこのスライムだけしか召喚出来ないんだな」


 残りの枠は11。ゲームの中ではたしか7つまで開放していたのだが、それはこちらの世界で反映されないようだ。


 ゲームの中での設定通りなら、俺の名前の横にある1という数字はおそらくステージ数だろう。


「今がゲームの中でいうチュートリアルだとしたら……」


 更にステータス画面をスライドさせていくと俺の予想通りの文言がかかれていた。


HP 5000/5000

MP 0/0

スキル なし


攻撃力 150

防御力 150

俊敏性 100


この世界の平均値。これより上がることはない。


「あー……」


 やっぱり平均値のステータスなのか、と呟く。それが聞こえたのか小首を傾げながら「平均値?」と不思議そうにスライムが俺に問いかけた。


「平均値っていうのは……そうだな、うーん……どう説明したらいいのだろう……例えるならCランクって感じか?」

「Cランク?」

「そうだよ。特別強くもないけど、弱くもないって感じ」


 俺の説明を聞いていたスライムのまんまるい瞳が細くなって吊り上がる。


「マスターは弱くない、です!」

「お、おう……ありがとうな」


 恐る恐るスライムの頭に手をのせ、ゆっくりと撫でてみる。


「おお、ゼリーみたいだ……」

「ふふっ」


 気持ちよさそうに目を細めるスライムをみて、自然に俺も笑みがこぼれた。不思議となんとかなりそうな気がしてきて、俺は「よしっ!」と自分自身に喝を入れて立ち上がる。



「とりあえず外に出てみよう!」

「外……ですか?」

「ああ」


 いつの間にか元に戻っていた部屋のドア。


 俺は扉の前まで歩いていき、そっとドアのノブに手をかけ、ゆっくりと回した。

















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