罪と罰とポッキー

 僕は色々なものを見ているようで、見えていないのかもしれない。

 少なくとも、後で食べようと思って机の端に置いていたポッキーの箱は見えていなかった。


 一袋だけ今食べて、もう一袋は明日にしよう。そう思い半分だけ残しておいてから、三日ほど経っていた。


 人間は、自分にとって都合の良い情報だけを取り込み、都合の悪い情報は無視する傾向があるらしい。


 都合悪いことないんだけどな。チョコ系のお菓子の中でトップクラスに好きなんだけどな。


 ポッキーごめん。

 今すぐ食べて、忘れてしまった罪を償おう。


 時刻は深夜1時50分。

 いつもなら、この時間からお菓子を食べるのはなんとなく躊躇するが、今回ばかりは別だ。不健康という罰を受ける必要がある。


 僕は勢いよく銀の袋を開けた。すると、チョコが溶けて固まり、ほとんど一枚の板となったポッキー。正確には、かつてポッキーだったものが顔を出した。


 いつの間に、こんな姿になってしまっていたのか。罪の意識が増していく。

 

 せめて元の姿で食べてあげることはできないだろうか。なんとか一本一本引き離そうとするが、何度やっても途中で折れてしまう。チョコのかかっていない持ち手の部分だけが分離していく。やはり無謀な挑戦か。


 僕は諦めて一枚の板にかぶりついた。


 チョコの罪深い甘味が広がる。美味しい。あまりにも美味しい。普通に食べるより美味しいんじゃないか。むしろ忘れて放置していて良かったかもしれない。

 深夜に食べている背徳感も加わり、なんだか楽しくなってきた。

 

 再犯の予感がする。


 人間は、自分にとって都合の良い情報だけを取り込み、都合の悪い情報は無視する傾向があるらしい。


 僕は既に、「反省」の二文字を机の端に置いていた。

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