第6話 100物語

4人の男が百物語をしているのだが、その場のノリで始めたのだろう、終盤になるにつれてネタが無くなったのか、飽きてきたのか、ただの談話会になっている。

それでも次が百話目になる。



順番が回ってきた奴が話し始めた。

『これは私が実際に体験した話なんですけどね。


中学三年の秋頃、私は風邪を引きまして、一日学校を休んだんです。

その日の夕方、体調も良くなってテレビを見ていたら、外からカツーン・カツーンと

階段を上る音が聞こえてきたんです』

目を合わせずおぼろげな目になってそれっぽい言い回しで話を進める。


『我が家は外に金属製の階段があって、そこを上らないと玄関に着かない家なんですが、上り慣れている家族と、そうでないお客さんとでは足運びの音が違うので家族ではない誰かの音だと分かるんです。

お客さんかな?と思った私はそのまま階段の音を聞いていました。


カツーン・カツーン


カツーン・カツーン‼


音が段々大きくなってきたと思ったらピタッと音が止んだんです。

この後、インターホンが鳴り玄関が開く音がして「ごめん下さい」と声がするものだと思っていたらいきなり

「こんにちは」と声がしました。



なんと玄関が開いていたんです!!』

「ええ!?不用心!!」

周りも合いの手の様に話に入ってくる。


『母親が対応してすぐに私が呼ばれたので玄関へ行くとそこにはクラスメイトの男の子が立っていました。

いくつか会話を交わしてその男の子は、学校のプリント数枚と本とお菓子を私に渡して帰って行きました。


翌日学校へ行くと、昨日家に来たあの男の子がクラスにいたんです!!』

「まぁ、ね」


『男の子の立っていた場所がビチャァと濡れていたわ・け・で・も・な・く‼』

「濡れてなかったんだ!?」

首を横に振りながら『残暑厳しくてもう、カラッカラッ!!』


『その男の子とは今でも年末年始やお盆休み等、都合を合わせて仲間と一緒に遊んでいます。

その男の子というのが』


友人を指さして


『お前だぁぁ!!!』


「・・・・・」

『・・・・・』


場が静まった。




『この話には後日談がありまして』

思い出した様に付け足した。

「ほう、聞こうじゃないか」



『その数日後。


「友達の所に遊びに行ってきます」

父「どこの友達だ?」

「〇〇君」

父「〇〇君?」

母「ほらお父さん、ポッキーの子ですよ」

父「おぉ!ポッキーの子か」

我が家ではその男の子は【ポッキーの子】の愛称になりました。



それが


お前だぁぁぁ!!!!』

さっきの友人に指をさしながら言ったら

「分かったから」

その指を払われた




『こちらからは以上です』






「それじゃ次は私の番ね」

五人目の女の子が名乗りを上げた。

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