23.覚悟と決断
R-15な表現があります
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TOSAKA View
「さて、テストも無事に終わった事だし、頑張って考えた”塁ちゃんリアライズ作戦”を聞いてもらうよ」
「何―?そのリアライズってー」
「えーっとね、気付くの英語なんだけど、状況把握した上で”気付く/realize”って意味らしいよ」
「へー、なるほどー」
「この作戦の目的は塁ちゃんに自分の恋心を気付いて貰う事だよ」
「でもーどうやって?」
「私達がこの2人凄くいい雰囲気だと思ったのいつか覚えてる?」
「!んー?―――あッ、そういう事ねー」
「今ならきっと気付くと思うんだけどねー、だから今度のデートにはココに行ってもらいます!」
「…このサービスは!」
「なるほどー、これならイケるかもねー」
「もうひとつあるんだけど、こっちはあんまりやりたくないし決め手にならないかも、まあでも両方とも上野くんの協力が必要だから、近い内に話ししてみるよ、だからその時には協力よろしく」
「おっけー」
「…まかして」
――――――――――
さて、今日も今日とて晩御飯食べてから亮の部屋へ向かうオレ。
一緒に宿題をやって、そのままダベって、適当に終わりにする、そんなルーティーンが最近は出来上がりつつある。
今日はオレのほうが宿題が早く終わり、少し暇になったのでまたしてもいたずら心とちょっとのスキンシップがしたくて、椅子に座って宿題をしている亮の背後からそーっと近づき、チョークスリーパーをかけた。
「!―――塁、やめろ、あ、いや止めなくていい。あーおっぱい当たってて気持ちいい」
「ッ!」
「なんだもう離すのか?もっとかけてても良かったのに」
「お前がおっぱいとか言うからだろ!」
「だって実際当たってたからしょうがないだろ、―――さて、1回は1回だからな」
手をワキワキさせながら亮は近づいてきて、オレを捕まえると背後に周りチョークスリーパーをかけ、そのままベッドへ後ろに倒れ込んだ。
そのまま、両足でオレの腰あたりを挟み込み、オレを動けないようにした。
明らかに本気じゃない力で技を掛けていて、じゃれあっているだけだと分かる。
「全く困ったお姫様だ、まだ宿題やってる最中なのにそんなに構って欲しかったのか?」
「ちがッ、ちょっとしたいたずらのつもりだったんだって!」
「つまり構って欲しかったんだろ、本当にしょうが無いお姫様だ、ホレホレ」
そう言って亮は片手を空けてオレの脇腹辺りをコショコショとしてきた。
「ちょっと!やめッ、くすぐった!くすぐったいって!」
オレが抵抗しても振りほどけ無い程度には力が込められていた。
楽しい、こういうじゃれ合いって楽しい。
そうして暫くジタバタしてると。
「はい、ここまで」
と言って亮は離れ、オレの頭をポンポンと優しく叩くと席に戻って宿題を続けた。
オレは呼吸を整え、暫くベッドに横になったままでぼんやり亮を見ていて、風呂に行くタイミングで自宅に戻った。
―――まあなんというか、…少し恥ずかしいんだけど、あの日曜の寝たフリからのキス待ち事件からスキンシップが、亮とイチャつく事が増えている。
ハグみたいに重たくなくて、気軽に出来るのでオレはいいなと思ってるんだけど亮はどう思ってるんだろう。
亮に対する、仲良くしたい、楽しみたい、喜んで欲しいなんかの感情が強くなっているんだけど、どこまでが男の親友としての感情なのかどこからが女の子の感情なのか、そして異性として好きとかそういう感情ってのがどういうものか分からない。
唯一異性としての感情だろうなってハッキリしてるのが性欲あたりでこっちもドンドン強くなっていて、亮を求めているのが分かる。
そして亮とスキンシップしてイチャイチャする事は麻薬のようなもので、幸せになれるし気持ちよくなれるしなんだか満たされる、仲良く、楽しく、喜んでいるし、それに少しの性欲も。
だから止められなくなっている。
このままじゃダメな事は分かってる、こんな中途半端なままじゃ亮も辛いだろう、ちゃんと答えを出さないといけないし決断もしないといけない。
薄々分かっているような気もするけど後一歩が踏み出せない、そんな状態。
どちらに転がるにせよ決断できるような何かがあれば…なんて、また亮に甘えて時間稼ぎをしてしまいそうだ。
――――――――――
「塁、明日の土曜、デート行かないか?」
金曜日の学校からの帰り道、いつものように亮と2人で歩いていたら唐突にそう誘われた。
そろそろデートに行きたいな、なんて考えていたら亮が誘ってきてくれたわけでオレは二つ返事で”行く!”と答えてしまった。
「またお弁当作って欲しいなー」
「いいよー、でもレパートリーほとんど変わってないよ」
「全く変わってなくても文句なんてないから安心して心を込めて作ってくれ」
「―――そう言われたら逆に頑張るしか無くなるなあ」
どこに行くのか聞いてみたが教えてくれなかったのは不安だったけど、亮とデートに行けるというだけでどこに行くのかは気にならなくなった。
その日はその後2人で仲良くスーパーに寄って、食材を買って帰った。
下準備なんかがあるので流石にこの日は亮の部屋は行けなかった。
――――――――――
TOSAKA View
「どうだったー?上野くん」
「んとね、片方はダメだって、塁ちゃんを精神的に傷つける事は本人の為にも良くないし、なにより、上野くん自身が絶対そんな事はしない、って言われちゃった」
「…男らしい」
「んだねー、流石というかなんというかー、カッコいいよねえ」
「そうだね、カッコいいよね、見た目もイケメンだしそりゃモテるのも分かる気がするよ、今は心の底から塁ちゃん一筋みたいだけど」
「塁ちゃんも幸せものだねー、早く2人共幸せになって欲しー」
「という訳で、もう一個のほうだけになっちゃったけど、そっちはちゃんと活用してくれそうだよ、もう上野くんに任せるしかないけど」
「まあここはさー、信じて待つしか無いよねー、2人の幸せなんだし2人で切り開いてもらうしかー」
「おっ、なんかいい事言った風だ」
「へっへっへー」
「…大丈夫…たぶん」
――――――――――
結構な早起きをしてお弁当づくりに励んでいる、一応1品だけ追加で入れる予定なのだ。
こないだと違って2人前だから作りすぎないように気を付けないとね。
サンドイッチなんかは作るの楽そうなんだけどなーなんて、よし次はサンドイッチにも挑戦してみたい。
さて、無事にお弁当も出来たことだし、着替えますかね、亮が今日は多少汚れてもいいような服を着るように言ってたな、動物園とか植物園とかなんか汚れそうなとこなんだろうか。
といってもスカートしか持ってないので地味目で汚れが目立たなそうなのを選ぶしかないけどなー、そういえば、もうすっかり短めのスカートが気にならなくなってしまった、いや正確には気にならないんじゃなくて穿くことに抵抗がない、か、最初から膝上丈だったもんね、まあそりゃ慣れるか。
さて準備が出来ましたよー、そろそろ迎えに来るかなー?
ピンポーン
あ、きたきた。
「おはよう、待ってたよ」
「おはよう、今日はポニーテール?」
「うん、汚れてもいいようにって事だったから纏めておいたほうがいいだろうって事で、それに亮はポニーテール好きだもんな」
「いいね、好きだよポニーテール」
「スカートも地味目だし、これなら多少汚れても大丈夫でしょ」
「うん、これくらいなら大丈夫なんじゃないかな、それじゃいこうか」
――――――――――
午前中は予想通り植物園だった、実は植物園って始めてきたんだよね、大量に綺麗な花が咲いてるところなんかは見ててちょっと感動するんだけど、全体的には少し地味かな。
夜なんかのライトアップされた植物園ならもっと全体的に綺麗で良かったかもなんて思ったり。
お弁当は植物園の中にある食事コーナーで食べる事に。
じゃん!今回の追加のおかずは豚の生姜焼きです、代わりにハンバーグは今回お休みしてもらいました。
「何度見ても塁の手作りお弁当はおいしそうで、俺は世界で一番の幸せものだ。
今回はハンバーグの代わりに豚の生姜焼きが増えてる、玉ねぎなんかも味が染みてて美味いよな、それじゃあ、いただきまーす!」
「うんうん、良く味わって食べろよ」
「生姜焼きが冷めてても美味い!玉ねぎにもしっかり味が染みてていいし、本当に最高だ」
流石に3度目ともなると慣れてくる、といっても顔が紅くなってるしドキドキはしてるんだけど。
そして亮がオレのお弁当を美味しそうに食べてるのを見るのは楽しいし嬉しい気持ちになる。
また作ってやりたくなってくるなあ、美味しそうに食べる人っていいよね。
「やっぱ俺、塁のおにぎりが一番好きかも、一番手作り感が感じられるし、塁の味がするような気がするのが良い」
「―――な、なんだよオレの味って、ちょっと変態っぽくないか」
「多分愛情が一番籠もってるって感じるんだと思うね」
「そ、そういうもんか」
くっそー、亮は一々オレを気持ち良く褒めてくる、こんなん気分良くなって当たり前じゃないか。
「美味しかった、ごちそうさまでした」
「はい、お粗末さまでした」
――――――――――
食後の一休みして、亮が切り出した。
「次なんだけど」
「うん」
なんだ緊張した面持ちで、どこだって付いていこうじゃないか。
「今からペアリング作りに、塁と2人で、一緒に行きたい、いいかな」
「いいよ、ん?」
―――え?あれ?ちょっとまって、今気軽にOKだしちゃったけど、いいの?
「え?ちょっとまって、え?ペアリングづくり?2人で?」
「ああ、2人の思い出の品を2人で作って、2人で身につけたい」
「…」
まるでプロポーズの様な言葉を聞いたオレは、頬が緩み、心臓は早鐘を、体は喜びに震え、そして周りの音が聞こえなくなり、2人だけの世界のように感じられた。
そんな体とは裏腹にオレの頭は青くなりつつあった。
オレがいつまでもズルズルとぬるま湯に浸かっていたから、我慢の限界が来て亮が関係を進めるかどうか、決断を迫ってきているんだ。ここで、決めてくれ、と。
「一応断っておくと、これを作ったからと言って付き合う事になるとか、そういう決断を迫っている訳じゃないから、ただ2人で作って、身につけたい、それだけだ」
その言葉を聞いて、亮が逃げ道を作ってくれて、オレは情けなくも安心してしまった。
すぐに分かった、と答えようかとも思ったが、ここはしっかりと考えたい。このまま亮の好意に甘えっぱなしではいけないと思ったからだ。
「ちょっと考えさせて」
「ッ!―――分かった」
亮にとっても想定外の答えだったのだろうか、少しの驚きがあった。
さて、時間をもらった事だしちゃんと考えよう。
まず、何が問題か。
ペアリング作りに行く事で付き合ってもいい、と採られる事。
それは、まだ決断できなかった。だけどそれは亮が猶予をくれた。
ただそれにどこまでも甘えたくない。
そしてペアリング作りに誘ってくれて2人で作りたい、思い出の品を2人で身につけたいと言ってくれた事。
それを思い出した時点で気分が高揚している自分がいて、その時の感情を思い出すと、全身に歓喜が溢れていた。
つまり、そういう事。
決断出来ないのはまだ自覚が足りないから、心が気付けていないから。
でも体はもう、分かっている。
―――よし!オレも覚悟を決めよう。
いつまでもズルズルやっていても多分答えは出せない、締切をもらわないとダメなんだと思う。
今までは後悔をしたくないだけで意味の無い時間稼ぎをしていた、だからこれは丁度良い。
このままじゃずっと亮に甘えてしまう、苦しませてしまう。
今日、デートが終わった時に答えを出そう!
「亮」
「うん」
「分かった、行くよ、でも亮も、どっちに転んでもいいように覚悟を決めてくれよ」
「―――分かった、それじゃあ行こうか」
亮はいつものように優しい笑みでオレの手を引いた。
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