22.生理と女の子

R-15な表現があります

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TOKASA View


お泊り勉強会が終わり、みんな自宅に帰った後。


「ところでさー、あたし見ちゃったんだけどー」

「え、何を?」

「夜中にさートイレ行こうと思ってねー、そのついでに塁ちゃんの寝顔でも見ようかなーって、塁ちゃんの部屋を覗いたんだけどさー、誰もいなかったんだよねー」

「…ホラー?」

「いやいやー、そうじゃなくてー、考えて見てよ塁ちゃんが行きそうなとこってさー何処だと思うー?」

「ええーー!まさか!?」

「…客間?」

「正解ー!あそこって和室じゃん?だからふすまをそーっと開けてみたんだけどねー、そこに居たんだよ、上野くんと一緒に寝てる塁ちゃんが」

「えええ!どういう事?なんで上野くんと塁ちゃんが一緒の布団で寝てるの?」

「いやー、それは分かんないんだけどさー、上野くんが無理やりって訳でもなさそうだし、多分だけどー、塁ちゃんから行ったのかなって」

「…そのために布団準備した?」

「あー、あるかもねー、態々隣の家の上野くんの分を準備するのも変な話しだしー」


「やるなー塁ちゃん、でもなんでそこまでしてるのに、好きって気付かないんだろうね」

「何処からどう見てもというかー、ちょっと行き過ぎなくらい好きだよねー」

「お料理の時とかも、あんな顔好きな人じゃなきゃ向けないはずだよ」

「…親友だから気付かない、とか」

「あるかもねー、あとは自分の表情は分からないし、それかもねー」

「うーん、やっぱり、2人をくっつけたいけど、上野くんに協力してもらったほういい感じかな?

多分気付かないまま、上野くんが我慢できなくなって暴走したりしそうじゃない?」

「まー、普通に考えたら好意を持ってるとしか思えない行動ばっかりだしー、やきもきしちゃうしねー、あるかもー」

「…作戦に協力してもらおう」

「そだねー、そうしよー」


「でもさ、とりあえずテスト頑張ろうか、私らヤバいし」

「はははー、そうだねー」

「テスト明けにまた話し合おうよ」


――――――――――


テストのほうは順調に進んでいて、智子ちゃんと沙也加ちゃんもなんとか大丈夫そう、らしい。


そしてテスト最終日の朝、明らかに体調をくずしたオレがいた、なんか…お腹のあたりが痛いような気がする、とりあえずトイレに行くとパニックになってしまった。

血が大量に!絶対になんかの病気だ!早く病院に!そんな考えが頭をぐるぐるしていたけど、少し冷静になって思い出した。


あ、これが生理か!


マヤさんが言っていた、”多分今週末から来週辺りに来るんじゃないしら?”なんて。

血が大量に出るという光景にパニックで忘れてたけど、思い出せてよかった~。

一応女の子教育の時にナプキンなんかは分けて貰ってるし、その後も買ってはいるんだよね、だからしっかり思い出さなきゃな。


なんとか装着できて一安心だけど、落ち着かないな―コレ、まあ今まで着けてなかったからしょうが無いんだけどさ。


うーん、生理、生理か、もうどうしようも無く女の子になっちゃってるんだなー、いや分かってはいたんだけど、なんというか、心の準備とかはしてたけど、実際になるとなー。

だって生理が来てるって事は子供を産めるって事なんだよね?いや、なんというか、マヤさんもこんな気持ちだったのかなー。

覚悟決めなきゃって事なんだろうなー。

なんの覚悟かは、まあ、ねー、薄々分かってはいるんだけどね。


それはそれとして体調が悪いというか、少し痛いのは変わらない、念の為に痛み止めを飲んで、いつものように亮宅へむかった。


――――――――――


なんとかテストも全部終わり、5人で打ち上げでもしよう、と沙也加ちゃんが提案してきた。

特に反対する理由も無いので、みんなと一緒に楽しくカラオケなんかに行った。


「マヤさん、今日の朝、生理来ちゃったみたいです」


みんなで遊んでから帰ってきて、いつものようにマヤさんのお手伝いをしてる時に生理が来たことを報告した。


「あら、思ってたよりちょっとだけ早かったのね、それで大丈夫だった?ちゃんと落ち着いていられた?」

「いや、やっぱり最初はパニックになっちゃって、少ししてから生理だ!って思い出しました」

「そーよね、あれは驚くわよね、私もびっくりして親に救急車呼んでくれーって騒いじゃった♡」

「え!マヤさんでもそうなんですか?」

「そりゃそーよ、まだTS症が発症して1ヶ月なんだから、それにまだ男のつもりだったもの、でも生理は精神的ダメージが凄く大きくて、はっきりとお前は女だ!って言われたみたいで」

「確かに、色々聞いてたオレでもダメージ大きかったですからね、色々覚悟決めなきゃってなりました」

「そうね、でも受け入れちゃえば気が楽になるわよ、それに何かあったら私達が絶対助けてあげるから、遠慮なく何でも言ってね♡」

「はい、色々とお願いします」


やっぱりマヤさんに相談すると気が楽になる、先輩がマヤさんで良かった。


――――――――――


久しぶりに何もない土日になりそうだった金曜の夜、そして久しぶりに亮の部屋に入った。


んー、なんか前の時より、ハッキリと亮の匂いって分かるようになってきたかも。

やっぱこの匂いは落ち着くから好き。


「そういや塁が俺の部屋に来るのは久しぶりだな、テスト勉強にお弁当の特訓とかあったもんな」

「そうだねー、最近ちょっとドタバタしてたし、中々亮の部屋に来るタイミングもなかった」

「といっても塁がココに来て何かする訳じゃないけど、適当に本読んだり、話したりくらいだし」

「まあそれで十分なんだけど、家では1人になっちゃうし、誰かが居るって少し安心するんだよ」

「それはそうかもな、俺も塁が居てくれたほうが安心出来る」


そうやって亮の部屋で適当に時間を潰し、自宅に帰った。


土曜と日曜は亮の部屋とマヤさんの手伝いで行ったり来たりしていた。

亮が居なくても勝手に入り、ベッドでゴロゴロして匂いを満喫なんかもした。

そのまま寝ていて起きると側に亮が居てくれて、優しい顔でずっとこちらを眺めていたり、そしてオレの定位置はいつの間にか亮のベッドの上になっていた。


日曜の晩御飯後、マヤさんと一緒に片付けをし終えて亮の部屋に戻ると、亮がベッドでスマホを片手に持ったままうたた寝をしていた。

オレはいたずら心と何らかの衝動によって、亮の隣で寝る事に決めた。


亮は仰向けになっていて、その横へ右向きになって寝転んだ。すると、亮は左向きになり、こちらを向いた、ドキッとしたが只の寝返りだったようで、起きなかった。

だが、そのまま亮の右腕がオレを抱え込むように動き、半ば抱きしめられるような格好になった。

突然の事にオレは焦り、逃げようかと思ったが亮の抱え込む力が思いの外強く、動けなかった。

顔を上げると亮の顔が凄く近い、後数センチで触れ合いそうだ。


なんとそのまま亮はキスするかのようにこちらの唇に近づいて来る、オレはゴクリと唾を飲み、一瞬の後、何故か、何故かは分からないが目を瞑ってキス待ちをしてしまった。心ではキスは駄目だと叫んでいたけれど。


待ってもキスが来ない、アレ?と思い目を開けると亮と目が合った。


「そんなんじゃ本当にキスするぞ」

「!?」


オレの心臓が飛び跳ねるかと思う程に大きくドクン!と音がしたような気がした。


「え…なんで…いつから…」

「んー、塁がベッドに上がってきてから♡」

「…」

「ちょっとからかってやろうと思って、抱き寄せてみたら、まさかのキス待ちだったからさ―――安心しろ、ちゃんと塁に許可を貰ってからキスとディープなのもするから」

「…」

「で、キスしてもいい?」

「!―――だ、ダメだ!」

「えーなんでだよ、さっきまでキス待ちしてたくせに」


正直オレはびっくりしすぎて固まっていた、でもなんとかダメ出しできた。

そのくせ亮は本当に楽しそうに笑いながら言うのだ。

そして、代わりとばかりに両手を使って強くオレを抱きしめてくる。


「男のベッドに入ってきたんだから、代わりにこれくらいならいいだろ?」


なんて優しく明るく朗らかに。


「しょ、しょうが無いな…」


オレはそう言うしかなかった。

それは今までのハグと違い、締め付けが少しキツイと感じるほどのハグだった、こちらを全く自由にさせず抵抗させない、力ずくの男のハグ―――ただそれは、何故かキツくて痛いと感じるよりキツいのが気持ち良いと感じていた。


「どうだ?こんなのもそれはそれで気持ちいいだろ?偶に奈江にもしてやってる、少しキツイのが気持ち良いんだと」


奈江ちゃんにもしてあげてるのか、オレはその事実に嫉妬しているような気がする。

いやいや妹に嫉妬するなんてどうかしてる。


少ししたら腕を解き体を離してくれて自由になった、なったけど暫くは動けなかった。

呼吸が乱れて、頭がボーッとする。

亮はニコリと笑って、オレの頭をポンポンと触り、ベッドから降りて風呂行ってくるといって出ていった。

オレは呼吸を整え、自宅へ戻った。



寝る前に考える。

亮は本当にいい男だ…、無理やりなんかは絶対にしない、でもオレはそれに甘えすぎてるんじゃないのか?いい加減、ちゃんと答えてあげるべきなんじゃ?いやでも、付き合う…恋人、うーん。

本当にオレは亮の事が女の子として好きなんだろうか、だとしたら、どこかで自分の気持ちに気付ける何かがあればいいんだけど。女の子、女の子かあ…。

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