20.中間テスト対策

R-15な表現があります

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オレたちは一言も付き合ってるなんて言ってないけどクラス公認カップルになった日、つまりゴールデンウィーク明け初日の帰り道


「そういや来週から中間テストだな、いつもみたいに塁の部屋で勉強って形でいいか?」

「―――うーん、いいけどさあ、マジで何もするなよ、勉強にならないから」

「ああその事か、それは先に言っとかないとな、今後は俺から過剰に求めたり、エスカレートさせたりすることは避けるよ、ちょっと昨日で反省した、今後は正攻法で行く、俺達はまだ付き合ってないんだからな」


お、亮のやつもやっと正気に戻ってくれたか、これで暫くは安心できるな。

流石に昨日は色々と酷かったし、オレも悪いところ一杯あったけど、亮はちゃんと線引きしてくれてたから助かった。

今のうちに心の穴あきダムの修復をしておかないとなー、オレから誘うようになったら意味がない。


「アレ以上の行為は流石になー、付き合ってないとなー。

ってまるで付き合う予定みたいに言ってるけど無いからな!」

「はいはい、今はそういう事にしておいてやるよ、でも俺が塁を好きな気持ちは変わってないし、これからも変わらないからな」

「…」


うーん、照れるし顔が紅くなる、これさー、普通に考えて脈有りにしか見えないよなー。

いやいや!違うから!


「で、話しを戻すけど、塁の家で勉強って事で問題ないな?1人だとあんまり進まなくてな」

「今は晩御飯の手伝いしてるからその後だな、時間はうーんまあ、とりあえず10時までにするか?」

「塁お前、テスト期間も手伝いするのか、余裕じゃないか」

「いやこういうのは一度止めちゃうと戻りにくくなるからな、続けないと」

「そういうとこの差なんだろうな、やっぱお前が好きだ」

「おまッ!急に何をさらりと言ってんだ!いいから!早速今日から1週間勉強するぞ!」

「だな」


急に好きだなんて言うから心臓が跳ね上がった、全く油断も隙もないやつめ。

はーあせった。


晩御飯後、オレの家に3人が集まっている。

なぜか奈江ちゃんもいるんだけど、なんで?


「私も塁ねえに教えてもらおうと思って!」


確かに奈江ちゃんは遅い時間まで友達の家で勉強は出来ない、そういう意味ではオレしかないのか、しょうがない、教えてあげるか。


「いいよ、じゃあオレが分からないところ教えてあげる」

「1年の勉強なら俺も教えてあげられるぞ」

「2人も先生がいれば完璧だよねー、先生方、よろしくおねがいします!」

「よし、やるか」


亮は別に成績が悪い訳じゃない、中の上ってとこなんだけど、万全を期したいという事で毎回一緒にテスト勉強をしている。オレは上の中から上ってとこだ



テスト勉強の休憩時間


「お兄ちゃん、甘やかして…」


奈江ちゃんは胡座をかいて座っている亮の足の上で亮を向いて座り、亮に抱きついた。

いわゆる対面座位の格好だ。

亮は全く動じる事なく、やれやれ…という表情をした後に抱きしめ返し、頭を撫で始めた。


「少しだけだぞ」

「!」


オレはその光景を見てびっくりしてしまった、いくらシスコンブラコンと言えど人前でそんな密着して抱きつきあうなんて、しかも奈江ちゃんは嬉しそうな蕩けそうな表情になっている。

そんなに心地良いのだろうかと思った瞬間、オレにはハグされた時の感覚が蘇って気付いた。

あれはハグだ、と。そりゃあ気持ちいいだろう、オレだって気持ち良かった、そうか、亮がハグをする事への心理的ハードルが低いのは奈江ちゃんに普段からやっているからか、それなら納得出来る。


その光景を見ていたらなんだか、オレも…という気分になってきた所で亮が”はいここまで”、と言って奈江ちゃんを離した。奈江ちゃんは”もうちょっと”、と言っていたが亮が”勉強をしに来たんだろ?”、と言ってオレのほうを見た、その目はいつもの亮だったし、同意を求める目だった。オレは自分が情けなかった、なんでこんな…。


グズる奈江ちゃんに亮は”塁が見ているぞ”、といって注意したが、奈江ちゃんは”塁ねえなら見られてもいい!”とか言い出したので困ってしまった。

亮はしっかりと宥めて甘えるのは1日で休憩中に1回だけ、というルールを作り勉強を再開させた。

亮はちゃんとお兄ちゃんなんだなと感心した。


これ以降、奈江ちゃんは1日に1回は休憩中にハグをしてもらうようになっていた、これはオレに慣れてきて、遠慮が無くなってきたという事らしい、学校からの帰り道で亮に聞いた。


そしてオレは、奈江ちゃんがハグされているのを見るたびに切なくなっていくのだった。


――――――――――


昼食時、いつもの5人で。


「そういえばさー、塁ちゃんって勉強できるほうだっけー?」

「うーん、まあそこそこ」

「塁はたしかクラス上位だったよな」

「まあクラスでは上位だけど全体でみたらそこまでだよ」

「謙遜だよ、ってことは勉強出来るのが奏と塁ちゃんかあ、じゃあさ今度の土曜か日曜に勉強会しない?どこかに集まって」

「いいねー、出来ればお願いしたいなー、結構ヤバいんだよねー」

「部活との両立はやっぱキツイんだよね、だから誰かに教えて貰おうと思ってて」

「…いいよ」


オレは亮をチラリと見ると、亮は頷いた。


「じゃあさ、うちくる?親もいないし、一人暮らしみたいなもんだから周りを気にしなくてもいいよ」

「えー!いいの?助かるー、しかも塁ちゃんち行けるなんて嬉しー」

「結構大人数になりそうだけど大丈夫?」

「一応言っとくと俺は参加しないから女同士で気兼ねなくやってくれ」

「そうなると4人かな?まあリビングなんかも使えるから場所は大丈夫だと思うけど」

「上野くん参加してくれても良かったのに、遠慮しなくていいのに」

「…遠慮するな」

「亮も来て良いってさ、どうする?」

「その時次第だな、あんまり期待しないでくれ」


「で土曜か日曜どっちかダメな人は?」

「んー別にどっちでもいいよー」

「…どっちでも」

「塁ちゃんは?」

「オレもどっちでもいいかな、どうせ1人で外出しないし」

「あーそっかそんなのあったねー、したらさー、いっそ塁ちゃんちにお泊りお勉強会ってのはどうかなー?」

「あ!それいいね!親睦も深まるし凄く楽しそう!」

「…ワクワク」

「いや勉強会だからね、趣旨忘れないでよ?まあいいけど」


「あ!そーだ、折角だから前言ってた塁ちゃんのお弁当食べたい!」

「おーいいねー、晩御飯に食べよー、塁ちゃんお願いしてもいーい?」

「…お願い」

「んー、まー、いいけど、味に文句は無しで」

「誰も文句はないと思うよ―」

「ちょっと待て、塁の料理が出るなら俺も参加する」

「そーくると思ったー」


という訳で土日にオレの家で勉強会をすることになったのだった。

布団足りたっけな…。


――――――――――


平日のテスト勉強最終日、金曜日だ、来週の月曜日からテストだからこの3人でテスト勉強するのは今日が最後、結局、亮はここまで真面目に勉強していてこの間のような事は無かったし、本当に欲を出しても来なかった。


そしてオレはというと、正直、我慢できなくなりつつあった。

亮とハグしたい!その気持ちは日に日に強くなる一方で、昨日など奈江ちゃんがハグされている時は嫉妬の感情すら湧いていたほど、オレは追い詰められていた。


いつものように奈江ちゃんがハグを求めて亮に甘え始めた、亮は”もうか?しょうがないな”と言って相手してあげている。

亮を観察していたがやはり奈江ちゃんをハグしているのに全く興奮している様子がない、今までもハグが終わった直後など普通に立ち上がっていたが特に異変はなかった。

こういう状況だと興奮しないものなんだろうか。


オレは昨日に続いて奈江ちゃんに激しい嫉妬を覚えていた、オレもして欲しいししたい。

奈江ちゃんの蕩けた顔、男の時ならばエロいと感じていたであろうその表情を見てオレも気持ちよくなりたい、と考えるほどに追い詰められている。


今日は金曜日で最後のチャンスなんだ、ここを逃したら暫くチャンスは無いかもしれない。

よし!奈江ちゃんが終わったら勇気を出してオレもしてもらうよう頼んでみよう。


奈江ちゃんのハグの時間が終わり、亮は待たせたなという風にオレをみた。

オレは多分切羽詰まった顔をしていたのだろうか、亮が心配そうにいつもの優しい口調でこう言った。


「塁、どうした、何処か調子でも悪いのか?無理はするなよ」

「りょ、亮、実は頼みがある」

「なんだ?なんでも言ってくれ、塁の頼みを断る俺じゃないからな」

「オ、オレと、…ハ、ハグしてくれないか」

「?」


亮は一瞬キョトンとしていた、オレが何を言っているのか理解するのに時間がかかったのだろうか、そして一瞬の後。


「いいのか、本当にいいんだな?」

「ああ、奈江ちゃんにやるのと同じように、そ、その姿勢で頼む」

「―――分かった、おいで」


オレは自分の表情が分かってしまった、今、”おいで”と呼ばれた瞬間にだらしなく顔が崩れた事が。


一応スカートを敷いて、亮の胡座の中心に尻を置き、足は亮のお尻側で組み、腕は亮の腕の下から背中に手を回した。

亮は奈江ちゃんにやるように、左手はオレの背中に、右手は抱きしめる形から後頭部に手を置き、頭と髪を上から下へと撫で始めた。

―――とても気持ちが良い、ただ抱きしめるだけじゃなく、撫でられる事がこんなにも気持ち良いとは、知らなかった。奈江ちゃんがハマるのも分かる。何も考えられなくなりそうになる。


オレは前回のように亮の鼓動が聞こえなかったので、より密着感を高めようと亮を強く抱きしめ、上半身の密着度を高めた。

しかし、普通にブラや上着を着ている今は前回のTシャツのみの時より密着感や鼓動を感じられずにいた。

もどかしさから上半身だけでなく、お腹から下の部分も密着させ全体で密着感を感じようとお尻を前に出した。


すると、お腹に触れる硬いモノがあった。

―――なんで?なんで!?奈江ちゃんの時はそんな素振りもなかったのに。

体が少しの恐怖を感じ、オレは瞬時に腰を引いた。


「あー、ゴメン、塁。頑張ったんだけど、どうしてもこうなっちゃって…、でも手を出す気はないから。―――ここまでにしとくか?」


亮はどこまでも優しく、自分も辛いだろうに、終わりを提案してきた。

今のオレは、欲を出している自分と危険だから止めようとする自分がいて、せめぎ合っていた。


無言でいると亮はオレの背中と頭から手を離し、オレの肩を掴んで距離を離した。


「ここまでだ、塁」


と終わりを告げられた。


「わ、分かった、ゴメン…」


オレはそういうのが精一杯だった。

亮は最後まで本題は勉強、という目的を見失っていなかったし、まさに帰り道で言った通りで、有言実行だった。


勉強に戻ったが手につかなくて、より物足りなさを感じただけだった。


その日は結局少し早めに切り上げる事になってしまった、オレが全然集中出来なかったせいだ。

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