18.強力な協力者

晩御飯のお手伝い中、マヤさんが聞いてきた。


「夕立凄かったでしょ、塁ちゃん達は大丈夫だった?」

「いえ、ダメでした、後数分の距離で土砂降りだったので、ブラウスは透けるし、下着まで濡れちゃって」

「え!?―――それ、大丈夫だった?うちの亮は変な事しなかった?」

「はい、大丈夫でした、直ぐに透けてる事に気付いてジャケットを貸してくれましたよ」

「あらー、それは良かった、気がつく子に育ってくれて嬉しいわ♡」

「ただ、亮のやつ家の鍵を忘れたみたいで、それに家に誰も居なかったのでオレの家で服脱いで乾かす事になっちゃって大変でした」


それを聞いたマヤさんは何事か考え込んで手も止まっていた、右手を顎に左手で右手の肘を支える、亮が考え事をするのとポーズで。


「―――んんー??、…ねえ、塁ちゃんと亮、何か進展はあった?」


どきっ!何か察したんだろうか、でもハグしてた事は言えない、本来ならば順番がおかしいからだ。


「いえっ、まあ、手を繋ぐくらいです…」

「2人共同じ家で、亮の服が乾くまでは一緒にいたのよね?多分さっきまで♡」

「ええ、まあそうです」


「替わりの服とかはどうしてたの?」

「一応オレが男の時に着てたTシャツとトランクスを渡したのでそれを着てました、特に何もないですよ」

「―――まあ、そういう事にしておきましょうか♡」



「ところで、お弁当作戦どうだった?」

「お弁当は凄く喜んで食べてくれました、とても美味しいって、おかげで凄く楽しい時間でした」

「そう、なら良かった、本当に塁ちゃん頑張ってたもんね、上手く言って良かった♡」

「マヤさんのお陰です、提案もしてくれたし、特訓もしてくれて、ありがとうございました!」

「いいのよ気にしないで、塁ちゃんの手助けをしたかっただけなんだから♡」



「そろそろ晩御飯の準備出来たから皆を呼んできて♡」

「はい、じゃあ呼んできますね」



皆で晩御飯の最中、お弁当の話しになった。


「それでねー、塁ちゃんが特訓して、全部手作りのお弁当を亮の為に作ったのよ♡」

「塁ねえ凄い!私なんか料理全然だよ、私も覚えないとダメかなー」

「全部手作りってのは凄いな、それじゃあこの食卓に料理が並ぶ日も近いかな」

「それにメチャクチャ美味かったんだ、いや、人生で一番美味かったかも知れない、母さんには悪いけど」

「ちょ!亮!それは言い過ぎだって!マヤさんには全然敵わないから!」

「ふふふ、早速明日から何か1品作ってもらおうかしら♡」

「マヤさ~ん、オレあれしか作れないの知ってるくせに~」


楽しい晩御飯の時間だった、自分がまるでこの家族の一員になったような錯覚さえ覚えた。


――――――――――


その日の食後は亮の部屋に寄らずに自宅へ戻った。

いや、ほら、男なら分かるしね、うん。

―――正直、匂いフェチ的には嗅いでみたい気持ちはあったけど抑えた。


さて、とさかトリオに今日の報告をしますかねー。


「まずは今日の写真みせてー?」

「あーそうだね、こんな感じだよ」


水族館と自然公園、その後に寄ったお店で撮った画像を3人に送る


「うわー塁ちゃん今日のは凄い清楚で爽やか系だねー、やっばいすっごい美少女~!」

「前回のも凄く似合ってたけどー、今日のもめちゃくちゃ似合ってる、本当に何着せても似合うのは流石美少女だねー、嫉妬するとかそういうレベル超えてるよー、塁ちゃんしか勝たん!」

「…家宝にする」

「うん、私もこの画像家宝にする」

「え?そこまで!?」

「やっぱ上野くんもイケメンだわー、お似合いのカップルすぎんよー」

「お昼にこの2人と一緒に御飯とか私達幸せすぎない?」

「それは思うかもー、女子達に刺されそー」

「オレも3人と一緒で楽しいんだけど」

「はー聞いた今の?」

「…聞いた」

「私達が最初に声かけて本当良かったよね」

「オレも3人に声掛けてもらってほんと助かってるよ」


オレもとさかトリオに声かけて貰って良かったって思ってるんだけどね。

学校で安心出来るのは亮のお陰だと思うけど、楽しく過ごせてるのは間違いなく3人のお陰。


「で、どうだった?」

「どうって…水族館楽しかったよー、凄く綺麗だったし、イルカショーも面白かった」

「そっかー、良かったねー、今日はどこ回ったの?」

「水族館と自然公園、あとはお店を適当にブラブラして帰ったかなー」

「…自然公園が怪しい」

「!?」

「あーね、其処怪しいよねー、自然公園で何してたの?」

「塁ちゃん、自然公園には何時ごろ行ったの?」

「あー、えーと、お昼御飯かなー」

「あれでもあそこって、御飯食べるとこ無かったような?」

「…!お弁当持参!」


なんでバレたんだろう。


「あー、実は、お弁当持っていったからそこで食べたんだよね」

「まさかまさか、手作り、とか?」

「エッ!、いや!…ハイ」


「「「エッ!?」」」


「塁ちゃんお料理まで出来るとか完璧すぎー」

「どれくらい手作りだったの?何作ったの?」

「えーと、おにぎり、ハンバーグ、タコさんウィンナー、卵焼き、菜の花の胡麻和え、あとはカットニンジンかな、たくわん以外は全部手作りだったよ」

「…え、すごい…」

「ええええええ、本当に完璧じゃん、あたしらくらいの年の娘だと中々そこまで出来ないよ」

「塁ちゃーん、今からウチに嫁に来てくれない?」

「男の時から料理得意だったとか?」

「いや、料理は2週間くらい前からで、亮の母親のマヤさんって人に教えて貰って特訓したんだ、集中して今言ったのだけ作れるようにって」

「いやいやそれでも出来ないよー、美少女の手作りお弁当とかさー上野くん幸せすぎて死ぬんじゃない?」

「そういや泣いてた」

「そりゃそうだよね、私でも幸せすぎて泣くよー、あー、私も塁ちゃんのお弁当食べたーい!」

「あ、あたしも食べたーい、今度4人で出かける時にさー、お弁当作ってきてよー、おんなじのでいいからさー」

「…私も食べたい」

「じゃあ、今度遊ぶ時にでも作ってみるよ、本当に同じやつになると思うけど」


学校で楽しいのは3人のお陰だし、お弁当くらいならお安い御用だな。


「え!ほんと、嬉しい~、言ってみるもんだな~、幸せ~」

「ところで、なんで手作りお弁当作る事になったの?まさか!告白でもしたとか!?」

「気合の入りようからすると十分にありえるよねー、だからお弁当の事隠したんだー?」

「…こっくはく!こっくはく!」


「違うってば、サプライズだったんだけど、単純に亮に喜んで欲しくって、それで作った」


「―――もうさー、なんで付き合ってないのか分かんないんだけどー」

「絶対好きじゃん」

「…本当は付き合ってる?」

「付き合ってないってば、親友としてとか今色々お世話になってるからとか、まあ、ちょっとは好きかもだけど、そういうの全部込みでお返ししたいなーって」


そりゃ少しは好きかもしれない、まあ親友だし、手を繋ぐ程度の仲ではあるし、まあ、少しは。

ただ純粋に亮に喜んで欲しくて、一緒に楽しく過ごしたかっただけなのだ、そのはずなのだ。


「多分ね、塁ちゃんは自分の心に気付いてないんだよ、そんな気がする」

「だねー」

「…間違いない」

「その好きっていう感情が大きすぎて気付いてないとか、かも、まあとにかく、私達の方針は決まったね」

「そだねー、塁ちゃんの後押しだわこりゃー」

「…お弁当の見返り」

「エエッ!そんなのしなくていいから!今のままでいいんだって!」

「まあまあー、こっちで勝手にやるだけだからお気にせず~」

「沙也加ちゃん!奏ちゃん!早速作戦会議やるからね!」


そんなんで終わってしまった、とさかトリオは何をするつもりなんだろう…面白がってたりしてないよね?

後押し…後押しねえ、うーん、なんの引っ掛かりもなく、気持ちに素直になる事ができれば…うーん、素直な気持ちってなんだろうね、ただオレは亮と楽しく過ごしたいってのは素直な気持ちのはずなんだけどな。

他人から見ると違うように映るのかなー。



考えても分かんないし、明日から学校だし、もう寝ないと。


――――――――――


TOSAKA View


「まずはアレなんとかしないと塁ちゃん安心して学校来れないでしょ、アレからだよ」

「あーアレなー、明日からやってみるー?」

「上野くん辺りが協力してくれればな、絶対上手くいくと思うんだけど」

「お昼にさー、そんな感じの空気にしてみよっかー、上野くんが恥ずかしがったりしたら失敗だけどー」

「…大丈夫だと思う」

「なんかカレならやってくれそうな感じあるよね、上野くんにもメリットあるし、気付いてくれるでしょう」

「よーし、まずは”地雷を全部ぶっ壊せ作戦”だー!」

「「おおー」」

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