5.親友1

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自宅の玄関を出て隣の塁の家へ向かう、着信とメッセージがあったからだ、しかし不思議な事にこちらの電話には出ず、すぐに来てくれ、と来た。

なぜ電話に出ないのかは分からないが、何か大変らしい親友の事も心配なのですぐに向かう。


玄関でインターホンを鳴らすと塁が玄関で迎えてくれた…のだが、その姿を見て俺の体に衝撃が走った、電気で痺れている時のように自分の意思では体がピクリとも動かない。


自慢だが、俺の妹は凄く美少女だ、そこら辺にいるアイドルなど眼中にないレベルの美少女で、絵に書いたような銀髪美少女、しかも高校生になった今でも仲が良く、スキンシップもまあまあ有る。さらに母さんも息子から見ても大人な銀髪美人だ、40には見えない。

そんな家庭環境に育った俺は無駄に目が肥えている、無駄にだ、結構な美少女どころかTVのアイドル程度では可愛いともなんとも思わない。


しかしそんな俺が今、眼の前の金髪美少女がメチャクチャ好みで、好みすぎて直ぐに分かった、一目惚れとはこの事だと、このような状態になるのだと。

それに扉を開けた事で前傾になりブカブカのTシャツの襟元の隙間から中の釣り鐘状のおっぱいが見えていた、先端のアレは見えなかったのは残念だが、デカい。眼に焼き付けておこう。


その金髪美少女はこう言った


「いらっしゃい、亮!大変な事になった!」

「何固まってんだよ、まずは早く中に入れよ」


手を握って玄関へ入れられた、柔らかいが少し冷たい女の子の手だった。


目の前の美少女が自分は塁だと言う、にわかには信じがたい、TS症詐欺というものが存在していたため、始めは疑って見ていたが喋り方、雰囲気、動作で塁なのだなと納得した、それに出迎える時には扉に鍵が掛かっていた。


俺の母さんはTS症だ、小さい頃からTS症について色々聞かされているしどんな対応すればいいかも分かっているつもりだ、とにかく不安にさせない事、受け入れてあげる事が何より重要だと。

元の性別に拘った見方をせず、昨日までの性別も無かった事にせず、今日からは新しい性別を基準にして見るのだと。

時と場合で性別を変えて見られる事は本人がどう振る舞っていいのか分からず一番辛いのだと。


そしてTS症になったのは他でもない親友である塁だ、絶対に不幸にしたくない。


しかし目の得、いや目の毒な格好だ、他人には絶対見せたくない、塁は普段から家では楽な格好を好むしまだ女の子としての自覚も無いんだろう。乳首浮いてるぞ、言わないけど。


俺は玄関から部屋に入るまでに塁にどう接するか只管考えていた。

まずは落ち着いて貰って受け入れてあげる事だろうか、見た目が好みな金髪美少女になってしまっているのは困ってしまうが…ん?


まてよ、見た目が好みで幼なじみで親友でTS症で―――

1.見た目だけが好みだと性格や内面が分からない

2.幼なじみで親友なので全てを知っているし好ましい、だが男だ

3.TS症で生活の大激変が否応なしに起こり対処が大変


これら全てを解決できる方法があるじゃあないか!

元男という考えなど母さんの教えの前では無意味だ、今は女の子、これからも女の子の前に元男などなんの障害にもならない!


名案すぎて他の考えは何処かへ霧散してしまった。


――――――――――


告白は失敗した、しかも泣かせてしまうとは、TS症というものを理解しているつもりで色々考えて自分なりに最善手を取ったつもりだったが俺は自分の気持ちばかり優先させた最低野郎だった。だが好きだという気持ちを伝えた事は今後において良い影響が出るはずだ、塁も恋心が芽生えた際には受け止めやすくなるだろう。

半分は自分への言い訳だが。


――――――――――


塁は母さんと奈江と一緒に出かけていった、学校と買い物だとか。

あの二人が一緒なら大丈夫だろう、奈江も塁には懐いているし。


ベッドに寝転がって本を読んでいたんだが全く頭に入らない、つねに塁の顔、姿、おっぱいや声が頭にチラつく、このままじゃ何も手につかなそうだ。




少しして落ち着いてきたのであらためて本を見ていると塁の声が

「亮ー入るぞー」

「おーいいぞー」


匂いとか大丈夫か?・・・女の子になったばっかりだし大丈夫だろう多分。


チラリと塁を見ると可愛いくて清楚なワンピース姿の塁が入ってきた、膝上丈のスカートとおっぱいと細くくびれた腰のシルエットラインが妙にエロい。

これをチョイスしたのは奈江か、後でたっぷりと褒めてやろう。


この後本音9割からかい1割で対応したら顔を真っ赤にしてプンプンと怒ってしまったので部屋を退散して奈江のところへ向かった。



妹といえど高1だからもう勝手に部屋に入らないようにしている。

コンコンとノックして

「奈江、いいか」

「ちょ、ちょっとまってお兄ちゃん!」

バタバタ!ドタドタ!


「い、いいよ~」


ガチャリと扉を開けて奈江の部屋に入る、奈江の部屋の匂い、妹の匂いだな、妹の匂いに興奮する兄では無い。


「普段からある程度は片付けとけよ」

「しょうがないでしょ、今日は塁ねえの服を見繕ってたんだから!沢山服を出してたんだよ」


もう”塁にい”から”塁ねえ”か、いいぞその調子だ。


「そういえばそうだったな、その事でな奈江。

今日のチョイスはメチャクチャ清楚で可愛くて良かった、少しエッチな雰囲気もあったし、良くやった、褒めてやるぞ」


そういって奈江の頭を丁寧に髪型が崩れないように撫でてあげると、奈江は嬉しそうに胸元へ寄りかかってきた。


「そうでしょ、頑張って似合う服探したんだからね!もっと褒めていいんだよ」

「奈江は甘えん坊だな、そういう所も可愛いぞ」


左手を背中に回し、右手で抱きしめるようにして頭から背中の中程まである髪を撫でてやる、こうすると奈江は落ち着くらしい。奈江も両手を回してきて抱きしめてくる。



その後は奈江と少し話をして部屋を出て、自分の部屋に戻ると金髪美少女がベッドにもたれかかり寝ていた。塁だ。


「今日は朝から色々あったから疲れたんだな…、その姿勢は体に良くないぞ、――よっと」


俺は塁が起きないように丁寧にお姫様抱っこで抱きかかえる、柔らかくて仄かに香るいい匂い、ずっと抱きかかえていたいがそうも行かない、ベッドの上に寝かせてタオルケットをお腹の上に掛けた。しっかり寝ているようだ。

こういう事は妹がいるから手慣れたもの、奈江の場合は時々寝たフリをしてお姫様抱っこしてもらいたがっていた事もあるが、塁は違うだろう。

本当は服が皺にならないように整えたいところだが必要以上に体に触る事になり起きた時に洒落で済まなそうなのでそれは止めておいた。


椅子をベッドの横に持ってきて逆に腰掛け、背もたれ部分に腕と顎を載せて塁の寝顔を眺める、邪な考えが頭に浮かぶが我慢した、我慢。

整った鼻筋と長い沢山の睫毛、均整のとれた顔、綺麗で繊細さを感じる金髪、どこをどう見ても絶世の美少女、俺の理想の女の子そのものだ、妹の奈江も相当な美人だが好みという意味ではそれを超えてしまった。俺の独占欲が肥大化するのもしょうが無い。好きだし、誰にも渡したくない。

しかし今はその感情を一旦横に置いておこう。純粋に見ていたい。


塁の穏やかな寝顔をずっと眺めていた――

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