4.ショッピング
「まずは学校に行って先生方に説明をしないとね♡」
「そういえば塁ねえは私とおそろいのセーラー服になるんだね!、スカーフの色が違うくらいで」
「そっかー、セーラー服かあ、自分が着る事になるなんてなあ…」
オレと亮、それに奈江ちゃんは3人共同じ高校に通っている。
オレと亮に関しては親友だし同じとこ行こうぜ!って事で勉強が苦手な亮がオレの指導と自習で頑張った結果だ。
奈江ちゃんはブラコンを拗らせて…ではなく、と言いたいところだがそれもあるし、それとは違うブラコンになった切っ掛けのせいで亮と同じ高校に来たがり、無事合格したという訳。
やっぱりただのブラコンな気がしてきた。
そしてウチの高校はセーラー服で学年によってスカーフの色が違うというタイプ
今の2年が赤、1年が水色だそうで。
担任の先生は大層驚いていた、そりゃそうか、マヤさんが保護者代理って事で色々話を進めてくれたのでとても助かった。
セーラー服は流石に週明けには間に合わないらしく、火曜に送るので水曜から出てきてくれ、という話になった。学校側も色々と手続きが必要になるので時間がいるという。
つまりオレは月火は休みなのだ、何して過ごそうか、まだ余り一人で出掛けたくはないなあ。
学校から出て、奈江さんの運転する車でショッピングモールへ移動した。
ショッピングモール内にある和食のお店でお昼を取っていて、食事中と食べ終わるまでは楽しく過ごしていたんだけど、お店の外にでて、人が多い所に来て初めて気づく、この3人は目立ちすぎる、と。
「いつも以上に見られてるね…」
「流石に美人が3人も集まると凄いわね♡」
「髪の色だけでも金銀銀だからね、そりゃ目立つか」
マヤさんが先頭に立ち、奈江ちゃんの半身前を隠すようにして歩き、オレは奈江ちゃんの横を歩く。
人が多い上に凄く注目を浴びている、特に男性からの視線が…主にオレとマヤさんの胸に集まっている気がする。
「早く女性服売り場へ行きましょう」
マヤさんが促し、少し早足で売り場へ向かった。
女性服売り場についてからは2人の雰囲気は戻り、奈江ちゃんもウキウキしている。
まさか女性服売り場がこんなに落ち着くとはなあ。
入店するのはかなり躊躇したから2人に引きずられてだけど。
「オレ、あんまり可愛いとか綺麗じゃなくて地味なのでいいんですけど…」
というオレの意見が全却下された。
まずは店員さんのブラのサイズ測定から始まり、あらためて着け方を教えてもらった。
身長150後半でバストサイズはE70でEカップ、想像していたより大きくてニヤニヤしてしまう、自分の体なのに。
3人で巨大中と言った所か。
「なんか塁ねえ顔がニヤけてるよ」
「まだ精神的に男の子だからしょうがない部分が有るのも分かるけど、直ぐに慣れちゃうわよ♡」
「まずはブラからね、次はショーツを選ぶから、私達が!」
「オレの意見は~…?」
「一応意見は聞いてあげるよ、どっちが良い?」
「どっちも可愛すぎない?誰に見せるのでも無いんだし地味なので良くない?」
「ダメだよ、こういうのは内側からだからね、それに見られた時に恥ずかしい思いをするのは塁ねえなんだからね!」
「え~見せる予定ないよ~」
「こんな事いってるよお母さん」
「やっぱりほっといてこっちで選んじゃいましょ、亮が好きそうなのは…♡」
「ちょっとまって!今聞き捨てならない名前が聞こえたんだけど!」
「え?違ったの?」
そんな感じで女性服店を何件か回って結構な数の衣服を揃えて亮宅に帰ってきた。
今は奈江ちゃんの部屋で2人に服のレクチャーを受けているところだ。
「コレとコレは必ずセットで合わせてね!あと下着も出来るだけ色を合わせて」
「服になれて自分で合わせられるようになるまではこの組み合わせでね♡」
「う…面倒くさすぎない…?」
「嫌なら早く慣れて分かるようになってね!」
「うう…はい…」
もういい匂いだなーとか考える余裕はない、ファッションの鬼コーチ2人だ。
しかし気になる事としてスカートだらけでパンツ系が全くない、そのスカートもなんか…膝丈以上なのばかりな気がする。
「スカート短いの多くない?」
「そんな事ないって、スカートが長いとそれはそれで蒸れて熱いんだよ、それに綺麗な足してるんだからもっと見せないとお兄ちゃんを誘惑出来ないよ!」
「いやしなくていいから!」
話をしていると奈江ちゃんの喋り方が以前と違ってきている事に気づく。
前はもうちょっと距離があったというか、兄の親友というポジションの距離感や話し方だったような気がする。
距離感でいえばより近く、親しく話しかけてくれているような気がするのだ、これは同性になった事が大きいんだろうと思う、やっぱ異性と同性じゃ違うよね。
それは嬉しい事ではあるけども男としての感性では残念な気持ちになる。
リビングで一休みしている時にふと服の代金を思い出した。
「マヤさん今日の服の代金はどうしたらいいですか?」
「大丈夫よ~、朝の電話で次に帰ってきた時に俊英さんから貰う事になってるから♡」
「え!?父さんから…電話でそんな話になってたんですね」
「色々とお金がかかるからしょうがないわよね♡」
「それと、今日から朝と晩ごはんはこっちで食べるようにしてね、お弁当も準備するから、俊英さんとしては一人で買い物に行かせたくないみたい、男とは違うから万が一があったら大変だ、って♡」
「それはちょっと過保護すぎなんじゃ…」
「でもね、確かに今の塁ちゃんじゃ私も不安になっちゃうわよ、もっと女の子としての自覚を持って行動しないと本当に何かあってからじゃ遅いのよ、特に塁ちゃんは美人さんなんだから♡
まだ今日女の子になったばかりだからしょうが無いけどね♡」
確かに女の子の自覚なんてまだない、今日の今日だしね。
一旦服を収納しに自宅へ戻り、少し休んでからまた亮宅へ戻った。
今日から晩ごはんをごちそうになるのだ。
とは言えまだ晩ごはんには少し早い、いつものように亮の部屋に行き、扉をノックする。
「亮ー入るぞー」
「おーいいぞー」
そんなやりとりの後、扉を空けて入っていくと、亮はベッドに寝転がって本を呼んでいた。
こちらをチラリと見て、また固まり、本を落としたが、すぐに本をどかしてジッとこちらを見る。
今は昼に出掛けた時の格好のまま膝上丈のワンピースだ。
「そんなにジッと見られると恥ずかしいって」
「めちゃくちゃ可愛いし、清楚なのに少しエッチな感じがしていいな、凄く似合ってる、後で奈江を褒めてあげよう」
「!ッおまッ!お前なあ!そこは恥ずかしがって適当に流すか逆にそっちが真っ赤になる所だろう!男なんだぞ!」
そんなにハッキリ言われるとメチャクチャ恥ずかしいわ!しかも少しエッチて!こっちはまだ男なんだぞ!
うれし恥ずかしじゃなくて男が女物を着て煽られてる感じの恥ずかしさだ。嬉しさは断じて無い!
オレの顔は自覚できる程に赤くなっている、ちょっと一度落ち着けるために後ろを向いて深呼吸しよう。
「なんだ?褒められて嬉しいのか?本当に可愛いな」
いつの間にか深呼吸している真後ろに亮が立ってそんな事を言ってくる。
「りょ~ッ!!お前ちょっと離れてろ!一旦落ち着かせろ!」
「ここ俺の部屋なんだけどな…分かった分かった、お姫様のいう通りにするよ」
そういって亮は部屋を出ていった。
別に出ていかなくてもちょっと距離を空けてくれれば良かったんだけど、まあ気を使ってくれたんだろう。いや、ここで気を使うならそもそも煽らないで貰えるかな…。
あらためて部屋をぐるぐる回りながら深呼吸をして気分を落ち着かせる、すーはーすーはーぐるぐるぐるぐる……。
「…ん?なんだ?…この匂い?…??」
なぜか匂いが妙に気になる、別に嫌な匂いとか臭いって訳じゃなく、なにか気になる匂いだ。
甘い訳でもないしなんだこれは…、ちょっと窓を空けて確認してみたが外の匂いではないっぽい。
まあいいか、気分も大分落ち着いてきたし、床にクッションを敷いて座って外で待っているであろう亮に声を掛ける。
「おーい、もういいぞー」
反応がない、そこにはいないのか、まあいいや、今日は疲れたからそのまま軽く寝よう。
クッションを動かし、ベッドの縁に腕を掛けてそのまま晩ごはんまで眠る事にした。
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