第六話 魔王との決着は平和に行います

目の前には、魔王城。

私は一つ疑問に感じたことがある。



魔王との決着って、たくさん雑魚敵倒して経験値を積んだ状態でやるんじゃないの?



……まあいいか。


「ラルド、ここが魔王城?」

さっきの笑顔は消えて、震えた声で質問するマルク。ラルドは静かに頷く。


まあ聞かなくても、魔王城の柱に「魔王の家」って書いてあるもんね……。

自己主張が激しい方かな?


そして、マルクはリッヒさんに肩車をしてもらい、インターフォンを鳴らす。


ピンポーン


インターフォンの明るい音があたりに響く。

そして数秒後、


『はい?』


ザイートと思われる声が返ってきた。


……魔王ってどんな感じなんだろう……。今、声を聞いた感じ女性っぽい……。

黒いドレスとかを身にまとっていて、何も感じない表情。冷酷さが怖いほど美しさを引き立ててくれる……感じの方かな?


というかこの魔王の声、どこかで聞いたことがあるような……?


「勇者です。開けてください。」


マルクは4歳らしからぬ、堂々とした声で言った。


『分かった。待ってて。』


ザイートはすぐに了承し、ガチャっと鍵の開く音がした。


いざ、魔王城へ……!!



「お邪魔します。」


私たちは魔王城の玄関で魔王の登場を待つ。

(魔王城に入るために「お邪魔します。」って必要なのかな?)



「よく来たな。勇者たちよ。」



ザイートは含み笑いを浮かべながら言った。

……すごくかわいいルームウェアにぼさぼさヘア。お休み中だったのかな……?



イ メ ー ジ 違 い す ぎ …



「魔王・ザイート。僕はお前を許さない!!!…今ここでぶっ●す!!」


マルクは一歩前に出て堂々と言い放つ。……ラルド以外誰も戦わないのに……。


するとザイートは高笑いをしながら聞いてきた。


「ちょっと待って、小さな勇者さん。………私なんか悪いことした?」


もっともだ……。


「いや、してないっ!」

「なんか~あなたを倒したら私たちお金もらえるんですよね~。」


え。やっぱり魔王がかわいそうなんだけど………。


でも、ザイートは目をぱちくりさせてから笑顔で頷いた。


「あ、そうなんだね。私も協力するよ。とりあえず上がってよ。」


魔王優しすぎ………。

あと、魔王のキャラが不安定……!


言われるがままに私たちは魔王の部屋へ入っていく。

部屋もすごく整っていて落ち着く……。


本当にここって魔王城だっけ……?


「とりあえず、何で決着つける?」

「う~ん……リリが決めて…!」


うわー!また私に振られた!!

え~…なんだろう……。今ちょうど学校ではやっているやつと言えば……


「え、指スマとかどう?」


あ、この世界に指スマって概念あるかな?


「いいね。指スマで決着をつけるぞ!!」

「了解!」

「はーい。」

「指スマとか余裕すぎる……。」

「最後まで相手してあげるわ。」


あ、凄い……。みんなわかるんだ……。


この様子だけ見るとみんな子供っぽい……。


「じゃあ僕からね!指スマ3!!」


凄い。魔王との戦い方ってこんなに平和なんだ……。




結果、リッヒが一抜けして、私たちの勝ちとなった。




はい。魔王との戦い終了。

というか魔王フレンドリーすぎない?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る