予言

 僕にはある得策が浮かんだ。と言っても、そう難しいことではない。ネットで予言者Aという名前で未来のことを正確に伝えることだ。

「よし。それじゃ始めるか」

 僕は当時のパソコンを開き、アカウントを作成した。

「これでいいかな」

 そして初めての投稿は

『はじめまして。〇〇年前からきました。予言者Aです』

 しかし、あたりまえだがこれだと影響力のかけらもない。

 なのでその後に続くように、

『2時間後、新潟で震度3の地震が起きます。』

 僕は予言(僕にとっては事実を書いているだけだが......)を書いた。

 そして2時間後、あたりまえだが本当に起きた。

 しかし、誰も反応しない。

 だが、そんなことは、想定内であった。

 僕は次のステップに移行した。


 ネットでは、情報が恐ろしいほど早く拡散される。

 それは、人々を助けることもあれば、人々を傷つけることもある。

 ネットは、怖すぎる道具である。

 そして僕は、パソコンのメモアプリを開き、必死にとあることを書いていた。

 それを、事実と照らし合わせた。

 僕は、とあるシナリオを書いていた。

 そうこうしている間にあたりは闇に包まれた。

 しかし、キーボードを打ち続ける僕の指はとまることを知らない。

 時には紙に殴り書きしながら、僕はそれを書き進めていった。

 周りが明るくなってきた頃、僕はやっとそのシナリオを書き終えた。

 そのシナリオが役に立つ時が来るまで、僕は予言をし続ける。

『30分後、沖縄で震度5弱の地震が起きます』

『明日、〇〇事件の犯人が逮捕されます』

『来週、××が亡くなります』

 僕は予言をネットにあげまくった。

 すると、次第にフォロワーも増えてきて、都市伝説業界にも知られるようになった。

 しかし、シナリオを使うにはまだ早いと思い、僕はまた予言を書いていく。


 僕は再び、森にいってみた。

 木々のほのかな良い香りは僕の嗅覚を刺激する。小鳥の囀りは相変わらずだ。

 良き空間で誰もいない空間。僕は、この空間を邪魔されたくない。

 人々が行き交う街。それもそれで良い場所である。

 汗水垂らして仕事する職場。その後、達成感を肴に酒を飲む居酒屋。そして、寝る家。全てに空間があるということを実感する。

 空間という言葉に僕は引っ掛かりを覚えた。

 空間とは、広がっている世界のこと。

 僕は、徐にシナリオを取り出した。

「やっぱり」

 僕は自分が恐ろしくなった。

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