第5話 マッドサイエンティストの思い
【ティスside】
そして記憶の継承装置に
『いや~ここまで良い継承者に巡り合えるなんて、やっぱり私は持ってるね‼』
こうして自信をデータにしてまで生きながらえて何年経ったのか、そんなことは私にもわからないが途方もない時間が経過しているのは間違いない。
その途方もない時の中でようやく巡り会えたのが目の前の『
正直に言ってしまえば最初は期待していなかった。
なにせ私の求める条件『自身の知識を半分以上継承する』は常人には不可能だったからだ。
人間の脳にも容量という物は存在する。もちろん目に見えてそれを測ることは私の時代であっても不可能だったが、人の記憶できる物事の限界を1000人単位で統計を何年もかけて取った。
すると平均的な数値を導き出し、結果だいたいの人間が記憶できるのは100年分近くが限界。それ以上の記憶を記憶しようとすると普段の生活に必要な知識御除いた知識が激しく劣化を始めた。
そんな状態でも更に追加で知識を送り続けると脳に損傷が生まれ命を縮める事になってしまう。
なのに私が後継者に継承させようとしている知識は200年以上に渡る生前の記憶、加えてデータ化してからの経験の全てだ。本当に途方もない年月の記憶、こんなものは私と同様に記憶をサーバーに保存しているわけではない生身の人間には記憶することできない…はずだった。
初めて見た時は冴えない少年だとしか思わなかったが、地球上のネットワークを調べて見れば同年代の子供と比べても少しズレた子だった。
家庭環境は普通、学校には特段仲のいい友達はいないが遊ぶような友達はいる。
別に陰で虐められているなんている事実もない。
本当にごくごく平凡な子供だった。
なのに彼は私と同じように『世界に飽きていた』のだ。
そんな共通点があったからこそ、なにかの縁かと思って彼を継承者に選ぼうと決めた。とは言っても、3分の1も継承できないだろうからちょっとした暇つぶしのつもりだった。
だからこそ変に真面目ぶったりしないで素で対応する事にした。
どうせ取り繕っても、すぐにぼろ出るだろうしね。
そういう事で話もそこそこに彼『
直後の会話でも特に異変は感じられなかった。
これは本当に予想外だが、嬉しい誤算と言えた。
データ化してからここ数千年も感じる事のなかった『歓喜』を私は確かに感じた。
本当なら、その場で延々と話をしたかったが現代を生きる彼には現在の生活を優先する必要があった。なので渋々ではあるが話を切って帰っていくのを見送った。
とは言っても時間差で何か変調が出ないとも限らなかったからね。
こっそり小型のロボで脳波やバイタルを確認していた。
そこでも本当に驚いた。継承前の値をこっそり記録しておいたのだが、継承後も数値に大きな変化はなかったのだ。
一時だけ激しく脳波が揺れ動いていた時もあったが、先ほど聞いた感じおそらく私の記憶の夢を見た時だろうね。
『いったい、いつの頃の記憶を見たんだろうね~?』
もちろん答えは返ってこない。
ただ夢とは記憶の整理だ。おそらく古い物からだろうから、私の記憶の中でも印象深い古い記憶のどれかだろうってことまで考えられるから答えはすぐに出た。
でも、そのことを私から説明するつもりはない。
どうせなら全部を見てから、彼なりの答えという物を聞いてみたい。
私としても当時の答えは間違っていたとは今も思っていないし、同じ状況になれば私の答えは変わらないだろうと断言もできる。
だからこそと言うわけでもないが、似た思考を持つ彼ならどんな答えを出すのかは興味深い。
しかも彼は私よりも感情という物が薄くはないようだからね。
感情にどこまで思考は影響を受けるのか、その結果出された答えは私の出した者よりも最適解たり得るのか興味深い。
『っと、後どれくらいで終わるんだったかな~?』
少し思考に浸っていて継承の完了時間を確認するの忘れていた。
継承する記憶が多いほど時間が掛かるが、すでに昨日の段階で半分以上が継承完了しているから今日は時間が掛からないはずだからね。
『10分くらいかな?それじゃ、せっかくだし少しサプライズでもしてあげようかな‼』
生身の頃からのちょっとした悪癖。
人を驚かせたりするの楽しくてやめられないんだよね!という事で、実は昨日から密かに準備していたサプライズを完成させるとしよう。
どうせ9割は完成しているから、後はちょろっと最後の仕上げを済ませるだけだしね。
『さぁ~久々に本気で生み出すかな‼』
見せた時に彼がどんな反応をしくれるかを想像して、本当に久々に感じる心の高揚にホログラムの顔が自然と笑みを浮かべてしまうけど仕方のない事だよね~?
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