七章 未来へ

第126話 海の彼方

 セイバーはレックスが敗北することを、充分に予想していた。

 なぜなら直史一人の力で、四勝するのはさすがに難しいと思っていたからだ。

 なのでこのタイミングで、直史が渡米することも充分に計算していた。

 これでやっと直史は、ある程度の事情を公開することが出来る。

 もちろん本当のことを、全て明かすわけではないが。

 全部言ってしまうなら、大介との対決も、八百長扱いされる危険があった。

 実際に一度は、それを提案されているのだし。


 あまり慣れていない、関西国際空港から、直接にニューヨークへと。

 プライベートジェットの中では、直史は多くの時間を、眠ることについやした。

 肉体は疲れきっていたと言うよりは、もう極限状態にあったのだ。

 それでも最後の一線を越えて、崖の向こうに落ちることはなかった。

 もしもあと一度、大介との対決があったらどうだったであろうか。

「12回の裏がない可能性に気づいていなかったのね」

「気づいていないというか、勝つまで投げることしか考えていなかったんです」

 それでも3イニング、パーフェクトにライガースを抑えた。


 とんでもないシリーズであった。

 直史は27イニングを無失点の無安打。

 大介はホームランを四本と、五打点でライガースの得点の半分以上を取ることとなった。

 まさに二人のための試合であり、しかし直接対決に負けた大介の方が、チームとしての勝利は達成した。

 日本シリーズに進んだのだ。


 日本シリーズの結果がどうなるのか、直史には分からない。

 本来の戦力なら、ライガースが勝つとは思う。

 だが対戦相手の福岡は、完全にライガースの極限状態のデータを手に入れたであろう。

 そして直史の呪いが、どこまで残っているか。

「やりきったの?」

「……いいえ」

 野球の全てを、あのマウンドに置いてくるつもりであった。

 だがその手の中に、まだ投げる力が残っている。

「こんなことになるとはなあ」

 直史はため息をつく。




 直史は野球人生を終わらせるつもりであった。

 だからこそ無茶な日程で投げて、それで壊れるのも本望であったのだ。

 なぜならそれこそが、運命から逃れる手段だと思っていた。

 直史をどうしても、野球に引きつける運命。

 まさにそうとしか呼べないほど、直史は野球に束縛されている。

 それを断ち切るためには、直史自身が投げられない状態になるしかなかったのだ。


 今の直史は、確かにボロボロだ。

 だが完全に野球生命が終わったのかというと、そうではないと思う。

 数ヶ月の休養は必要だが、おそらくまだ来年も投げられるようになる。

 大介との勝負があと一度あれば、そこで完全燃焼出来ただろうに。

「来年も、投げるの?」

 セイバーの問いに、直史は答えられない。


 世界が、それを望んでいる。

 直史にとっては、世界などどうでもいいものだが。

 望まれてしまっては、応えるのが本来の直史であった。

 しかしもう与えられて以上に、世界には返してきたとも思う。

「なんだかだんだん、野球のことが嫌いになりそう」

 弱音にも感じられそうなことを直史は言って、セイバーは笑ってしまった。


 ならばやめればいい。

 ただ直史はそうやって、自分の意思で野球からは遠ざかっていった。

 その度に何か、おかしな力が働いて、直史は野球に引き戻される。

 今回の場合は、五年以上も穏やかな時間があったが。

「運命論者だったの?」

「おかしな因果関係があるかな、とは思っていますよ」

 直史はため息をつくしかない。




 久しぶりのアメリカである。

 だがもちろん直史は、どこかに寄っていくことはない。

 セイバーとしても、そんな直史に同行している。

 男性に興味のないセイバーであるが、人間としては直史に興味がある。

 財産の数字を大きくする以外に、特に才能のなかった自分。

 それが価値を認めたのは、スポーツや芸術、文化の世界。


 セイバーの周りには、偉大な人間がたくさんいた。

 直史と大介がそうであり、彼らの記録は永久に残り、伝説は語り継がれるだろう。

 イリヤの作った歌はいまだに、世界中で流れている。

 記録者としては瑞希が、自分の夫の伝記を書いている。

 多くの才能の輝きの中で、自分という存在はおそらく、後世から見たら埋もれたものになるであろう。

 もっとも瑞希の書く文章の中に、名前としては残っている。


 おそらくはもう、人生の半分は過ぎている。

 ここからどう、自分は生きていくのだろう。

 スポーツ選手としては、二人の力はもう全盛期を過ぎている。

 そもそも直史は、もう限界に近いであろう。

 人生の本当に輝く季節は、もう終わってしまったといっていい。


 ここからの人生は、今までの蓄積によって、その動きが左右されていく。

 上杉は政治の世界に入っていくし、間もなく直史は地元の振興に力を注ぐこととなる。

 セイバーはパトロンとして、大きな才能を援助していくのだろう。

 だが真に輝く才能に、今後また出会えるとは思わない。

 直史に大介、そしてイリヤという輝きは、あまりにも偉大すぎた。

 退屈になりそうな人生に、誰かが彩りを与えてほしい。

 もっともわずかに、その兆候を見せる新たな輝きは、見つけていた。




 試練を乗り越えた、父と息子の再会である。

 まだまともに動けない明史としては、枕元に直史がやってくるのを待つのみ。

「まだ、痛んだりするのか?」

 最初に直史が訊いたのは、それであった。

 手術自体は完全に成功したと言われていたのだ。

 ごく稀に、麻酔から醒めないということもあるが、そういうこともなかった。

 ただ胸を切り開いたのであるから、痛みがないはずはない。


 まともに動けるようになるには、二ヶ月ほどは安静だという。

 経過観察にも、半年ほどは月に一度は検診を行う。

 その後も毎年、診断は必要であると言われている。

 だが半年もすれば、おおよそ走ることは出来るようになると言われている。

 普通に動くことが出来るようになるのだ。


 喜ばしいことである。

 今年一年、苦労した甲斐があるというものだ。

 もっとも最終的には、報われたとは言いがたいが。

「お父さんは、残念だったね」

「まあ、そういうルールだったってずっと忘れてたからな」

 MLBであるとタイブレークなどがあったため、すっかりそっちに染まっていたのだ。

「来年は、どうするの?」

「考えたくない」

 直史の正直なところである。

 だが同席していた瑞希とセイバーは驚いた。

 直史は今年一年で、そしてそれはずっと言っていたことのはずだ。


 もちろん単に実力的なことを言うなら、まだ来年もどうにかなるだろう。

 今年の肉体に負ったダメージの回復に、かなりの時間はかかるだろうが。

「来年もやる気、少しはあるの?」

 明史の問いに、直史は難しい顔をする。

 既に直史の最大の目的は達成した。

 なのでこれ以上の野球生活は必要ない。彼には彼で、やるべきことが色々とあるのだ。

「一応、理由はあるんだ」

 直史がずっと、隠していたことである。




 直史はちょっとした取引というか、頼まれごとをしている。

 上杉引退後の、日本のプロ野球。

 それを牽引してほしい、というものである。

「上杉さんが? あ、あの時に?」

 そう、上杉と病院で面会した折、二人だけで話した時間があった。

 瑞希も憶えているが、男同士の話として席を外したのだ。


 詳しい内容はなんなのだろう。

「大介がいても、たぶん大介だけだと、その成績は落ちていく」

 二人が競い合って、そしてやや直史が上を行く方が、より大介はその力を発揮しようとしてくる。

「だからまだ、俺にNPBにいてほしいってことだったんだけど」

「単に頼まれただけなら、承諾はしないんじゃない?」

「まあ、そうですね」

 そこで直史は、少し瑞希の方を気にした。

 それに気づいたのは、むしろ横たわったままの明史である。

「ちょっと口には出来ない取引でもしたんでしょ」

 苦笑した直史は、肯定も否定もしなかった。


 上杉は器の大きな男で、野球に関しては真摯で公明正大な男であった。

 だがただ器の大きなだけの男が、政治家などを目指すはずもない。

 上杉の器は、清濁併せ呑む大きさを持っている。

 それが直史の味方をするというのは、おそらく選挙に関連する。

 上杉は基本的に、野球ファンの多いところでは、圧倒的に人気がある。

 野球ファンでなくても、上杉の名前は知っているのだ。


 直史の地元での活動は、色々とややこしく細かいことが多い。

 そういったところを突破するためには、政治力というものが手っ取り早い。

 幸いと言うべきか、直史と上杉の政治信条は、保守派で政権与党を支持している。

 ただここまでを、瑞希に説明するつもりはない直史であった。




 直史は法律の人間であるが、それは正義を意味しない。

 法律は、法律を知っている人間の味方である。

 まあおおよそは、正義というか秩序を保つ存在ではあるが。

 しかし法律よりもさらに、人間の味方である。

 故郷と地元に住んでいる人々を守るのが、直史の正義の範囲内なのだ。

 そのためには政治家とのつながりは、重要なものである。


 瑞希としては、直史の意思を尊重する。

 ただ子供たちの意思も確認すべきだろう。

 直史は家族のことも、やはり大切に考えるからだ。

「僕もいいと思うけど、問題は姉さんだね」

「さすがにもう、ホテル暮らしはしんどいからな。千葉に戻る」

 一家五人が、やっと一つ屋根の下で暮らすことになる。

 今度こそ、何も問題などはなく。


 長い一年であった。

 復帰を決めた時期から考えると、それよりもずっと長い期間であった。

 しかしここで、ようやく全てが報われる。

 人間の人生においては、どれだけ苦労したとしても、報われない者が多かったりはするのだが。

 これは直史が、野球に対して捧げたものへの、対価だったのかもしれない。

 この一年だけではなく、それ以前の全てを含めて。


 直史は予定を考える。

 これからはまた、一度日本に戻らなければいけない。

 日本シリーズはどうでもいいが、その後のセレモニーなどには出る必要がある。

 あとは契約更改というのもある。

(ライガースは、大丈夫なのかな)

 全ての懸念が晴れた直史は、今さらながらライガースの打線には、ちょっとやりすぎてしまったかな、と考えるのであった。

 ちょっとそれは、考えるのが遅すぎるであろう。




 ライガースは日本シリーズ進出を果たした。

 だが投手陣はまだしも、打線陣はとても誇れるような数字を残していない。

 まさに直史の考えたとおり、呪いのようにバッティングが打てなくなっている。

 特に長打は大介ばかりである。

 その大介にしても、去年までのポストシーズン成績に比べれば、ずっと数字は落ちたと言っていいい。

 だが大介がいなければ、確実にライガースは負けていた。


 17打数6安打。

 しかしそのうちの四本がホームランである。

 ライガースは六試合で、たったの八点しか取っていない。

 むしろ得点ならば、レックスの方が10点は取っているのだ。

 全ての試合が二点差以内で決着。

 これだけ競り合ったシリーズが、過去にあっただろうか。

(ちょっとこのままなら、日本シリーズは勝てないぞ)

 大介は先頭に立つのは得意だが、周囲を鼓舞するのはそれほどでもない。

 

 ライガースの監督である山田も、それは痛感している。

 レギュラーシーズンの終盤から、ライガースは完全に直史に抑えられていた。

 その影響が、直史以外のピッチャーも打てないことになってしまっている。

 もちろん直史に比べれば、ある程度は打てている。

 だがバッティングの全てが、そもそも狂ってしまっているバッターが多い。

 ピッチャーであった山田だが、気持ちは分からないでもない。


 ライガースのバッターはことごとく、その存在価値を否定された。

 他のバッターであっても同じ事であったろうが。

 それにやはり封じられた大介は、そんなことなど関係ないぞと、他のピッチャーからホームランを打っている。

 どういうメンタルをしていれば、あれだけ封じられても折れずに、自分を信じていることが出来るのか。

 大介に言わせれば「慣れ」なのであろうが。




 ファイナルステージの直史のピッチングは、まさに鬼気迫るものであった。

 昔から完璧に限りなく近いピッチャーだとは思っていたが、その前のレギュラーシーズン終盤から、ずっとノーヒットピッチングを続けていた。

 ライガースは二試合連続のパーフェクトの後に、ファイナルステージ初戦でもパーフェクトに抑えられている。

 その後の試合はリリーフに最後を任せたものの、ノーヒットピッチングをずっと続けていた。

 おかげでライガースの打線は、バッティングに対する自信を失ったのは確かだと思う。


 大介は切り替えることが出来たし、実際にホームランも打ったし、試合に勝利してワールドチャンピオンになったこともある。

 それだけの実績があるからこそ、切り替えることが出来たのかもしれない。

 だが多くのライガースのバッターは、直史を体験するのは初めてであった。

 なにしろNPB復帰は12年ぶりであったのだから。


 西郷などがいれば、まだ打線を鼓舞することは出来ただろう。

 周囲に与える影響という点では、むしろ西郷の方が大介よりも上であったかもしれない。

 大介は直史に近く、己のバッティングを磨き上げることに比重が大きくかかっている。

 12回の裏が回ってくると、ずっと思っていたあたりも、直史に近い。

 二人の対決は、あそこで決着がつくと思っていたのだ。

 そこで空回りしてしまった、という感じは大介もしている。


 かといって、メンタルの問題をどうすればいいのか。

 首脳陣は練習の中で、必死に立て直そうとしている。

 ミーティングなどにおいても、その点を重視している。

 だがバッターの方も、どう叱咤されたとしても、あの現実の記憶がまだ濃く残っている間は、立ち直ることは難しいだろう。




 直史は本当に、大変なものを奪っていった。

 ライガースのバッターたちのプライドである。

 この状態で日本シリーズを戦っては、とても勝てるものではないだろう。

 ファイナルステージから中四日で開催される日本シリーズだが、先にホームゲームがやってくる。

 普通なら大応援団がいるため有利なはずのホームだが、この甲子園で完全に木っ端微塵にされた記憶は、まだまだ新しい。


 向こうのアウェイのゲームであった方が、思考をリフレッシュして戦えたかもしれない。

 そんな直史から、連絡があったりする。

「つーわけでこっちは大変だよ」

『それは俺を打てなかったそっちの打線が悪いだけで、俺は何も悪いことしてないぞ』

「それはそうなんだがよ」

 勝利のために、フェアなプレイの範囲内で、全力を尽くしただけ。

 直史は何も悪くない。


 直史はもう完全にシーズンが終わったということで、張り詰めた空気をなくしてしまっている。

 日本では直史が試合の直後に姿を消してしまったので、何もインタビューなどを出来ていない。

 こういうところでまた、マスコミから叩かれるのだろう。

 本来ならスーパースターで、実際にそう扱われることも多いのだが、そう扱わざるをえないというだけ。

 マスコミに対しては塩対応の直史である。


 一応日本にいないことだけは、説明を受けている。

 ただ家庭の事情とだけ説明されて、それで納得するものでもない。 

 むしろ日本にいないということは、来年はMLBにまた復帰するのか。 

 そんなことまで言われている。

 



 大介のシーズンはまだ終わっていない。

 そして来年も続いていく。

 ただ戦意をそれなりに保っている大介にしても、今年のシーズンに対するモチベーション、日本シリーズに対するモチベーションは落ちている。

 ファイナルステージの勝負に、全てを注いでいたのだ。

 肩透かし感がすごく、いよいよ日本シリーズだというモチベーションがない。

 ネットなどでも、実質の日本一決定戦は終わった、などとも書かれていたりする。

 今のライガースの状態だと、ひどい敗北を喫しそうな気がするが。


 ただ大介としても、直史の状況が良く分かったので、そちらはもう気にしないことにする。

 この数年の佐藤家を悩ませていた問題が、ようやく解決したのだ。

 まだ少し段階は踏むようだが、普通の生活を送れるようになる。

 一つの平凡な家庭が戻ってくるのだ。

 いや、別に平凡な家庭でも、それなりに悩みは尽きないのだが。

 それは大介も同じことである。


 通話を切って、大介はソファにぐてっと座る。

 最終戦、最後に直史ともう一度対決できていたら。

 勝っても負けても、こんな気分にはならなかったろう。

 もちろんやるからには、絶対に勝ってやるというつもりであったが。

 気持ちがどこかへ逃げてしまって、大介もモチベーションが上がらない。


 明日の練習が終われば、もう甲子園で相手を迎えることになる。

 レギュラーシーズンもポストシーズンも、ライガースはぎりぎりの戦いを制してきて、本来なら戦意は高くなっているはずだ。

 それがこんなことになっているのは、全て直史のせいであるが、直史に責任は全くない。

 全ては、打てなかったライガース打線が悪い。

 それは間違いないのである。




 日本シリーズにおいて、ライガースは普通にエースクラスのピッチャーを使っていく。

 畑と津傘の他に、普通にローテーションピッチャーに頑張ってもらう。

 おそらく日本シリーズでライガースが日本一になるとすれば、それはロースコアゲームに持っていけた場合であろうと、首脳陣は考えている。

 ただ第一戦から、エースクラス二枚を使っていくのか。

 今のチーム状態を考えれば、第一戦は捨ててでも、チーム状態を改善したい。


 そう考えたライガースは、ここで経験豊富なベテランの大原を、第一戦に使うことにした。

 相手も初戦は、エースクラスのピッチャーを持ってくることは分かっている。

 ライガースよりもずっと、楽にクライマックスシリーズを勝ってきたのだ。

 ピッチャーは充分に休んでいる。

 ライガース打線も四日間あったのだが、ある程度は回復していると思いたいのだが、そう思える根拠がない。


 練習ではある程度打てても、それはレックス戦の前の話である。

 しかし今のライガースは、練習でもバッティングが狂っているように感じる。

 大原を出すということは、ある程度のハイスコアゲームにしなければ、ライガースの勝利はありえない。 

 追い込むことによってどうにか、打線の状態の改善を祈る。

 もう思いつきと言うか、ショック療法としか言えない。

 大原にとっては、ちょっと気の毒かもしれないが。


 日本シリーズの初戦の先発を命じられて、個人的には本望である。

 常に二番手以降の扱いであった大原は、だからこそ相手のエースとの対決は少なく、200勝に到達したとも言える。

 もう長くないプロ野球人生、こういった役割はむしろ望ましい。




 今年の日本シリーズに向けられる注目は高くない。

 セ・リーグのクライマックスシリーズが盛り上がりすぎた、というのが理由であろう。

 ファーストステージの直史と上杉の投げ合いは、おそらくNPB史上最高のものであったと言えよう。

 その後のファイナルステージでは、直史の無双と、それでも勝利したライガースの大介の打撃。

 あまりにもこれらが派手であった。 

 そのくせ最後には、引き分けによる判定勝ちで、ライガースが勝ちあがってしまった。

 直史と大介の、最後の対決も実現せず。


 傑出したピッチャーとバッターの勝負は、そこだけを見れば完全にピッチャーの勝ちであった。

 しかしバッターに与えられる最後の機会も、あのルールによって消えてしまった。

 それなのに勝ち上がったのはライガース。

 もちろんルールに則ってはいるが、素直に認められない人間が多いのも確かだろう。

 大介自身が、ハシゴを外された感じを受けているのだから。


 勝ちは勝ちだと、祝うことも難しい。

 あれは引き分けが、ルール上勝利になってしまったのだから。

 そして直史に圧倒的に支配されて、大介がほとんど一人で点を取っていった。

 八点の得点の中で、大介がホームを踏んだのが七点。

 これはもう、攻撃がほとんど大介一人で成立したようにさえ思える。


 その大介がどうにか、バッティングの好調を保っている。

 ただ練習では打てていても、試合前の湧き上がるモチベーションというものがあまりない。

 ひたすら直史と対決するために帰って来た。

 もう今さらMLBに戻ることは考えていない。

 来年以降もNPBにいるつもりだが、果たしてどこにモチベーションを置けばいいのか。

 珍しくも大介は、苦悩しているのであった。




【シーズン終了】 神聖! 佐藤直史総合スレ part680 【不敗継続】


514 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 お~福岡が先制か

 まあ順当やな


515 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 ライガースのピッチャー大原やしな

 むしろここまで良くもった方やで


516 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 なんというかもうスレの進みもまったりとしてきたな


517 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 試合中はひどかったからなあ

 12回の表のレックスの攻撃とか


518 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 なんかライガースもあれで燃え尽きた感じはする


519 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 ファイナルステージもほとんど白石しか打ってないしな


520 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 つーかライガース打線の皆さんは大サトーの呪いにかかったまんまだな


521 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 呪いっつーかバッティングを封印されたと言うべきか


522 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 大サトーは祟り神やから呪いでもええやろ


523 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 ちょくちょくいる関西弁ライガースファンか?


524 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 関西弁のレックスファンもいるやろ

 ライガーススレは沈んだまんまだしな


525 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 まあ日本シリーズ進出っても誉められた内容じゃなかったしな


526 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 頼みの白石も、大サトーからは結局一本も打ってないし


527 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 左右田を捻挫させた打球は実質ヒットだと思う


528 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 あれがなかったらレックスもあと少しは点が取れたと思う


529 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 まあ白石被害者の会に入ったしな

 今年は広島がひどい目にあってたけど


530 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 あいつおらんかったら本当にレックス優勝してたやろ


531 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 なんかでもライガース負けそうやな


532 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 福岡普通に強いしな

 それにしてもライガース全然打てんな


533 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 白石ホームラン打てんな

 クライマックスシリーズではホームランばっか打ってたのに


534 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 まあまだ第一戦というのはある

 しかしライガースの打線ひどいな


535 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 レギュラーシーズンの九月半ばまでは圧倒的だったけどな


536 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 大サトーに連続パーフェクト食らったのが全ての原因と言えなくはないか


537 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 白石も雑魚ピッチャー相手に打ってるだけだしな


538 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 雑魚ではないけどここで打てないとね

 結局は大サトーの呪縛からは逃れられなかったということになる


539 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 つーかちょっとルール変更した方がいいやろ

 あの12回の裏がないと言われた時の脱力感よ


540 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 11回の表で点が取れなかったのがなあ

 あそこは先頭の大サトーに代打送っておくべきだったんかもな


541 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 それは後からだから言えることであってな

 あの時点でランナーなしから代打は出せんだろう


542 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 12回の表にレックスが点を取れなかったのがな

 もう一度対決は見たかった


543 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 つーか大サトーの足取り不明、完全に続報ないよな


544 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 海外って言ってたからまたMLBかと思うけど……

 今年の成績見たらMLBも無視出来んだろうし


545 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 その辺契約どうなってるんだろな

 大サトーのことなら一年ごとに契約切るとかの特約入れてそうだけど


546 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 今年の成績からすると10億ぐらいで契約更改が妥当だろうけど

 レックスにそんな金あるんかな


547 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 迫水と左右田も一気に上がるだろうしな

 金銭トレード濃厚じゃない?

 地元の千葉……は金ないかな?


548 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 いや大サトー一人でどれだけ集客上がったと思うよ

 余裕で払えるだろ


549 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 でも10億か

 MLBだったら三倍は軽く出すだろうな

 全盛期は60億でやってたんだっけ?


550 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 レートが違うけど日本円だと70億ぐらいだったと思う

 41歳でMLB復帰はないやろ……

 あったらすごいけど……


551 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 ぶっちゃけ通用すると思う?


552 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 それは余裕で通用すると思う

 あ、ライガース負けた


553 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 おお、のんびり進行だったなあ




×××



 次話「昇華」

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