第100話 奇跡よ続け

 直史がこれまでやってこなかったのだから、当然ながらNPBでは初めてのことである。

 二試合連続のパーフェクトを、しかもリーグナンバーワンの打力を誇るライガーズ相手に達成する。

「そう言われても大学時代は四試合連続とか、MLBでも連続パーフェクトはやっているから」

 インタビューに対する直史の対応は、とてもインタビュアーを困らせてしまうものであった。

 これが事実であるというのが、なお救えない。


 重要なのは明日の試合である。

 共に最終戦となる、スターズとの試合は本拠地神宮で。

 スターズは上杉、としてレックスは三島。

 去年であればほぼ互角ではないか、と言われていただろう。

 しかし今年の上杉は、明らかに復調してきている。

 現時点で19勝2敗というのは、歴代のピッチャーの成績を見ても、まずありえないものであろう。

 だが実際は、黒星を味方に消してもらっている試合もあるのだ。

 圧倒的な存在ではあるが、それは実力的に圧倒しているわけではない。

 その存在感が圧倒的であるがゆえに、周囲に影響を与えるのだ。


 直史は試合後すぐにシャワーを浴びて、マッサージを受けてから眠りに就く。

 今日の試合は、見ているだけなら圧倒的であったろう。

 しかし投げている直史としては、本当に限界に近いピッチングであった。

 正直に言えば、どこかで壊れていてもおかしくはない。

 それでも壊れなかったというのは、まだその時ではないからであろう。


 翌日には移動して、その直後に試合。

 もっとも直史が完投したため、ブルペンのピッチャーは全員がしっかりと休めている。

 移動だけでも疲れるのは、40歳だからであろう。

 新幹線の中でも疲れたままでいるが、それでも今日の試合、終盤にリードしていればリリーフで投げる。

 そしたらクライマックスシリーズまでに、休みが取れるからだ。




 レックスが勝てば勝率が完全同率で、直接対決の差からレックスのペナントレース優勝。

 負けるか引き分ければ、ライガースは甲子園で胴上げである。

 前日にパーフェクトで負けていて、胴上げもないものであるかもしれないが。

 それでも優勝であることに違いはない。

 大介たちは一応、マスコミ向けに写真を提供するため、クラブハウスにやってきている。

 ただ選手たちの表情は暗い。

 大介のみは、その暗い表情の中で、瞳に危険な輝きを宿しているが。


 同じピッチャーから、二試合連続でパーフェクト。

 今後二度と生まれない記録であろうことは、間違いないだろう。

 このレギュラーシーズン終盤だからこそ、ありえないことが起こってしまった。

 野球の神様は、ひたすら直史には機会を与えるらしい。

 ただしその機会はひたすら過酷なものであるらしい。


 クライマックスシリーズがどうなるか、大介はちょっと想像がつかない。

 レックスが優勝するかどうかで、ライガースの日本シリーズ進出の難易度が圧倒的に変わるからだ。

 またここでの決戦に勝っても、そこで精神的に燃え尽きてしまう可能性もある。

 レックスもライガースも両方だ。

 特に直史は、無理をして六連戦で、三回は投げてきそうでもある。


 一応はビールかけ用に、ノンアルコールビールが用意されている。

 ここのところはシャンパンファイトだったので、久しぶりになる大介だ。

 一応国際大会ではビールなのだが、ここ最近は年齢を理由に辞退したこともある。

(相手が負けるのを待つしかないというのも、なんというか情けないな)

 もちろん勝てなかったライガースが、全て悪いのだが。

 ここで時間を少しもらわないと、ライガースは特に打線陣が、メンタルを回復させる時間が足りなくなる。




 優勝を争っているライガース相手に、絶対的なエースが二試合連続でパーフェクトを達成して勝利した。

 そしてこの最終戦、勝利すれば優勝となる。

 普通ならばこれは、レックスが勝利する流れであろう。

 だがスターズには、そういった流れを断絶させる、圧倒的に支配的なピッチャーがいる。


 上杉はこの事態になることを、少し前から覚悟していた。

 ただ想像を超えていたことは、直史のピッチング内容である。

 コツコツと当てていくNPBのバッティングは、実のところパーフェクトを達成するのには難しいのだ。

 それをやってのけてしまったところが、直史のなんとも恐ろしいところであるのだが。

 スーパーエースの成しえた偉業を、どれだけチームが活かすことが出来るか。

 スターズであれば、必ず勝とうとするだろう。

 だがレックスは、この勢いを利用することが出来るのか。


 ましてスターズは、投げるのが上杉である。

 かつてのような圧倒的なピッチングは、さすがにもう出来なくなってしまった。

 だがそれでも高い勝率や防御率、そして奪三振率を誇る。

 エースはチームを勝たせるもの。

 そしてチームの選手全体が、勝たせたいと願うもの。

 まさに上杉はそういう存在なのだ。


 神宮球場で、最終戦が行われる。

 スターズもまた、ここで勝てばクライマックスシリーズ進出だ。

 これまでの試合結果で、引き分けでも進出はない。

 シンプルな状況になったものである。




 ライガースを相手に、絶対に負けられない試合で、二試合連続のパーフェクト。

 このパフォーマンスは間違いなく、今年一年では最高のものであろう。

 ただ空前絶後ということであれば、大介も甲子園で場外を打っているので、どちらがより化物なのかは比較がしづらい。

 どちらも化物だと言ってしまうのが、一番思考停止なようでいて、実は誠実なものであるのかもしれない。


 東京に帰ってきて、もうすぐに試合の準備をする。

 そんな中で直史は、クラブハウスでの仮眠を選択する。

 起床してから四時間はしないと、人間の体は本格的には覚醒しないらしい。

 そこから逆算しても、少しは眠っておきたい。

 決戦を前にして、普通に仮眠を取れるその精神に、チームメイトはドン引きしている。

 ただ直史は前日、パーフェクトを達成しているのである。

 そして今日も、状況によってはリリーフをするという。


 一人のピッチャーであるが、ピッチャーの出来る範囲を超えてピッチングをしてしまっているとでも言うべきだろうか。

 ちょっと同じ人間とは思えない、という感想を抱いてしまっても仕方がない。

 そして恐るべきは、これが圧倒的なフィジカルなどではなく、メンタルから成されているパフォーマンスであることだ。

 もちろん技術はあるが、それを行使するのは心の強さが必要になる。


 直史のピッチングというのは、繊細さと大胆さが同居している。

 針の穴を通すようなコントロールに、打てるコースに150km/hほどのストレートを投げ込む度胸。

 しかしながら結果的には、そのストレートでバッターから三振を奪うのだ。

 なんであれで三振が奪えるのかは、むしろ同じピッチャーの方が不思議であったりする。

 もっともデータ班に分析結果を聞けば、その理屈は分かる。

 分かっても自分には不可能だ、ということも同時に分かるのだが。




 先発の三島は、ライガース戦で好投したものの、ライガースもピッチャーの好投と、味方の打線の援護があと一歩足りなかったため敗北している。

 だが今シーズンも完封をしているため、間違いなくエースクラスのピッチャーではある。

 さすがに上杉と比べれば、劣るとしか言いようがないが。

 またリリーフ陣は、ほぼ全てのピッチャーがスクランブル体制である。

 今度は逆に、レックスのピッチャー全部で、上杉に挑むのだ。


 あるいはこの試合、直史をどこで使うかが、ポイントになるかもしれない。

 当たり前のようにクローザーとして使うことを、首脳陣は意図している。

 しかし状況によっては、クローザーよりセットアッパーが重要な試合もあるのだ。

 クローザーは最後のイニングを〆るために出てくる。

 だがセットアッパーは、ピンチの時に火消しとしても使われるのだ。

 もっとも、選手寿命は短いらしいが。


 直史が目を覚ましたのは、試合が始まる二時間前。

 もう少し早く起きるつもりであったが、周囲が気を遣ったのである。

 今年のレックスがここまで来れたのは、100%直史の力である。

 もちろん野球はチームスポーツであるし、他の先発がいなくても苦しいことにはなっていたであろう。

 だが圧倒的な存在感を示し、相手に絶望を抱かせたのは直史だ。


 実際に上杉に勝てるのは、直史だけであろう。

 もっとも今季に限って言えば、直史が投げたのに負けた試合は、上杉との対決だけだ。

 途中交代で、そこまでは互角であったので、敗戦投手にはなっていないが。

 どちらもほぼ全盛期であった頃の投げ合いを思い出す。

 野球の歴史において、最も完璧と呼ばれるあの試合は、今でもずっと話題になる。

 お互いがお互いを、パーフェクトに抑えて延長まで投げきった試合。

 結果は引き分けになったので、どちらにもパーフェクトの参考記録にしかならなかった。




 試合の時間が迫ってくる。

 直史は今日は、キャッチボールもまだ行っていない。

 肘はともかく、肩が少し重い気がする。

 ただ万全でなければ、それはそれなりに投げてしまうのが直史だ。

 スターズの打線は怖いバッターもいるが、それでも全体的に凶悪、というほどではない。

 基本的にはレックスとも似たタイプなのかもしれない。


 泣いても笑っても最終戦。

 ここで勝って、クライマックスシリーズのファイナルステージで対戦相手を待つ。

 主に直史の疲労を、そこまでに取っておく。

 九月に入ってからは、中四日の他にも中五日というのが二日あった。

 おかげで勝ち星はどんどん増えたわけだが、九月にエースがここまで投げなければいけないという時点で、かなり苦しい。


 今日の試合に投げることがなければ、直史は結局今年、27先発で26勝0敗という記録を残したことになる。

 えげつない数字であるが、これでもまだキャリアハイではない。

 NPBに限っても、二年目は27勝しているのだ。

 また防御率も、一年目と二年目は0.1を切っていたが、今年は0.2をぎりぎり切るぐらい。

 被本塁打も五本というのは、直史としては多すぎる。

 かつては年間0本という頭のおかしなシーズンもあったのだから。




 神宮は完全に満員状態。

 これで今年の優勝が決まるのだから、それも当たり前かもしれない。

 また上杉に関しては、引退の噂が出ていたりもする。

 今年19勝、今日勝てば20勝のピッチャーが、どうして引退なんだ、というのが一般的な見方かもしれない。

 ただ今年の上杉は、本当に無理をしているシーンが多かった。


 無理を通すことによって、チーム全体が活性化することは多かった。

 スターズはやはり、上杉のチームなのだ。

 一人のプレイヤーが、20年ほどもチームのカラーを決めた。

 これほどのカリスマを持つ選手は、歴代を見てもそうはいないだろう。

 あるいはピッチャーの中では最高かもしれない。

 なんといってもバッターと違って、毎試合出るわけではないのだから。


 同じピッチャーでも直史は、チーム全体を背負うという意識などはない。

 ただ重要なポイントではしっかり投げて、確実に勝利する。

 確実に急所を狙った矢の一撃。

 しかもたっぷりと毒がついている。

 今年の実績だけを見れば、投げ合えば直史が勝つ、ということになるのだろう。

 だが途中交代であっても、今年の先発同士の対戦では、上杉が勝っている。

 故障明けということもあるし、そもそも負け星もついていないのだが。


 もしも直史が負けるとしたら、それは大介のライガースではない。

 上杉のいるスターズだ、という論調もあったりする。

 直史自身が、それは充分にありうることだと思っている。

 上杉は単純なピッチャーではなく、味方全体の力を上げてくる。

 いわば兵士たちを率いる現場指揮官で、その能力とカリスマがものすごい。

 対する直史は、作戦立案をして、戦術レベルで勝利を決定させる。

 最強の個人戦力と言っていい。

 どちらがチームを勝たせるのか、それはもう結果で出ている。

 上杉には負け試合があるが、直史にはない。

 ただこの結果だけを見て決めるのも、乱暴ではあるだろう。




 試合が始まる。

 ホームゲームではあるが、スターズも本拠地は比較的近いため、応援がそれなりに入っている。

 単純に勝った方が、ペナントレースを制するか、クライマックスシリーズに進むか。

 どちらにも譲れないものがある。

 最初はベンチにいる直史であるが、こういうところの進言はしにくい。

 直史はチャンスの活用には疎いし、ピンチに関してはそれ以前に、ピンチを作らないピッチングをしてしまうのだ。


 もっと自分が強く進言していれば、と思った試合もある。

 ただ世間は結果だけを見て批判する。

 大介にホームランを打たれた試合にしても、OPSを見ればボールゾーンで勝負をするなら、ホームランにまでは持っていかれない可能性が高い。

 その程度のデータはあるので、あの場面では勝負したのだ。

 そもそもその後、フォアボールで出たランナーとして、もう一度ホームを踏んでいるのだ。

 結果が出てからでしか、采配の批判などは出来ない。

 もっともその采配の反省は、しっかりとしなければいけないが。


 三島にかかっているプレッシャーは相当のものだろう。

 特に相手が上杉なので、一点を取られるのも敗北につながる可能性がある。

 だが試合前に受けていた迫水は、そこまで三島が萎縮しているとは思わない。

 日本の高校野球出身の選手は、基本的にプレッシャーに強いと言われたりもする。

 もっとも直史は、アメリカなどはアメリカで、のびのびとプレイする環境に慣れているので、これも変なプレッシャーはかからないと思っているが。




 プレッシャーに対する考え方はそれぞれだろう。

 直史は期待してくれている人のために、投げていたという気持ちがある。

 高校時代は少なくとも、家族や親戚、近所の人たちがとても喜んでいたので、全力で投げることが出来た。

 大学時代は勝つことだけが目的であったが、樋口と理想のピッチングを求めるのは楽しかった。

 そしてプロでの試合は、己のプライドのためであったろうか。


 直史は基本的にプレッシャーを感じない。

 それはいざとなれば、自分の力でなんとかなるという、絶対的な自信があるからだ。

 ボロボロに消耗してから打たれても、さほどプライドは傷つかない。

 それでもしっかりとお返しはしていったが。

 NPBはやはり、応援している声がはっきりしているのがいい。

 MLBでアメリカに五年もいたが、どうも観客の観戦の仕方が、日本とは違うなという違和感は残っていた。


 三島は初回を、しっかり三人で終わらせることに成功。

 この大事な試合で、プレッシャーに負けていない。

 ただプレッシャーがかかると、むしろ力を増すというのが、上杉であり大介であったりするのだ。

 一回の裏、レックスの攻撃はあっさりと二人までは終わってしまう。

 もっとも二番の緒方は、かなりボールを見ていったが。

「どうだ?」

 直史から問われても、短く答えるしかない。

「粘って終盤勝負かな」

 かつての上杉と今の上杉の、一番違う点。

 それは体力的な問題であろう。

 上杉も直史と同じく、ライガースには負けていないピッチャーだ。

 それでも必ず、狙い目というのはあるはずなのだ。




【連続完全試合!】 神聖! 佐藤直史総合スレ part451 【神話更新!】


206 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 上杉もえぐいピッチングするな~


207 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 実況は実況へ


208 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 試合後もここが実況みたいになってたよな

 いったいどれだけえげつないのか


209 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 普通のレックスファンが向こうに行っている間に、ようやくこっちで話出来るな


210 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 凄いというか怖いわ

 まさか二試合連続パーフェクトなんて誰も想像できん


211 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 大学時代……四試合連続パーフェクト……


212 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 大サトーと樋口がいて優勝できなかったシーズンがあるってなあ


213 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 監督がよほど無能だったんだな

 土曜日に投げて日曜日に負けても、月曜日に投げればいいだけだし


214 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 そうは言っても学業優先だから月曜日の試合にはあまり出ていなかったとか


215 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 嫁さんの本は基本的に本当のことしか書いてないからな

 つーか二試合連続は普通にMLBでやってるし


216 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 白石のいるライガース相手にやったのが凄いのよ

 改めて調べたら東大相手に第三戦までもつれこんで、これリリーフで勝ってるのな


217 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 東大なんてボーナスステージなのに負けてんの? 

 さっぱり分からん


218 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 古参として言わせてもらうとあの年の東大は怪物がいたから……


219 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 上杉の嫁さんが大サトーの妹たちとバッテリー組んでるんやで……


220 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 あれ? アスミンって女優じゃなかったっけ?

 マルチタレントというかバラエティにも出てた気がするけど


221 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 そもそも東大だったんか

 いや大サトーの妹達のほうは有名だけど


222 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 白石の嫁な

 ちなみに白石の息子が来年から高校野球に入ってくるぞ~

 150km/hオーバーを連発する中学三年生


223 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 実はプロ入りするまでは、妹たちの方が大サトーより有名だったという事実


224 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 現役で東大合格して芸能活動してたからなあ

 まあその二人と重婚して当時はすごいバッシングあったけど

 懐かしいなあ 今となってはもう何もかもがみな懐かしい


225 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 なんか知らない事実を前提で話されてると困る


226 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 別に皮肉とかじゃなくてここは大サトーの嫁の書籍読んだら面白いぞ

 高校時代の信じられない話とかが一次資料で残ってるし

 上杉の嫁は結婚しなかったら史上初のNPB女子選手になってたかもしれんし


227 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 いやでも在学中からもう芸能活動メインにしてたやろ

 確かに女としては女子野球で世界大会のエースピッチャーだったけど

 天は二物も三物も与える典型的な存在


228 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 アスミンの特徴

 ・可愛い

 ・踊れる

 ・歌える

 ・演技できる

 ・野球は女子世界一

 ・コミュ力お化け

 ・旦那が上杉

 ・子供いっぱいいるのにまだ可愛い


229 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 プロ入りするまでとか言ってるやついるけど普通に大サトーの方が有名

 甲子園の活躍で芸能人みたいに騒がれたし大学野球の復権も大サトーの功績


230 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 大学野球と言うよりは六大学リーグの復権な

 まあ西郷もいたし下の小サトーも入ってきたんでタレントはそろってた


231 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 このあたり人間関係が複雑なんよね

 アスミンが高校日本一になった時にバッテリー組んでた子が小サトーの嫁だし


232 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 エミリーですな

 子供の頃は海外のピアノコンクールとかで優勝しまくってたけど

 イリヤにことごとく上を行かれて挫折したという

 なおイリヤはあまりクラシックに興味なかった模様


233 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 そのへんは嫁の本にはないな

 でもネット探したら普通に出てくる


234 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 イリヤの曲はいまだに名曲だもんな

 若すぎる上に暗殺って、女ジョン・レノンと言われるのも納得


235 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 ジョンと違って未だに、未発表曲が普通に毎年出てくるけどな

 どんだけ才能があったんだか


236 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 試合の話から遠ざかっている……


237 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 そらここは実況じゃないし

 パーフェクトも昨日の夜から明け方に話しまくってみんな燃え尽きたんちゃう?


238 名前:代打名無し@実況は野球ch板で

 あ!




 三回までは両者無失点で進んだゲームであったが、均衡を破ったのはスターズであった。

 ワンナウト三塁という状況から、あっさりと外野フライを打って、それでタッチアップ成功。

 まずは一点だけであるが、上杉を相手にすると、この一点が厳しい。

(上杉さんはだいたい、先に点を取ってもらうと、負けないからなあ)

 今年の負け星二つも、粘っていた試合で相手が先に点を取り、そこから追いつけないというものであったのだ。

 あと多いのは、同点の状態で終盤まで進み、結局上杉には勝ち負けがつかないというもの。

 上杉にはもう昔ほどの完投能力はない。


 レックス打線は、基本的に長打一発で点を取る、というものではない。

 もちろんそれもあるが、基本的にはパターンにはまればそこで点を取る、というのが計算された得点だ。

 ホームラン一発の得点というのは、あくまでも幸運だと考える。

 ただパターンが分かっていれば、上杉ならその場面だけ、力を入れて投げてくることがある。

 それが主に大介相手のピッチングとなるのだ。


 大介以外を相手にすれば、手抜きと言えるのか。

 確かに手抜きなのであろうが、それでも上杉を上回る成績を残すのは直史だけである。

 そもそも昔から、下位打線には力を抜いて投げて、中軸だけに本気を出すというのは、当たり前のことである。

 なのでこれに関して、上杉に何かをいう野球関係者はいない。

 全く匿名のBBSなどでは、時折見かけたりはするが。


 重要なのは年間を通して、ローテーションを守ることである。

 そして結果的に優勝できればいい。

 スターズはそもそもの戦力として、優勝が難しいのだ。

 それでも最善を目指した結果が、このピッチングである。




 160km/hオーバーのストレートが、何度も出ている。

 それでもレックスが、ノーヒットに抑えられているわけではない。

 上杉は全く打てないわけではないのだ。

 ただ本気になった上杉は、圧倒的に攻略難易度が変わるというだけで。

 クライマックスシリーズ進出のかかったこの試合、上杉とスターズの方が覚悟が決まっている。

 負けても一応はクライマックスシリーズに行けるレックスとは、そこが違ったのかもしれない。


 三島のピッチングも、もちろん悪いものではないのだ。

 だが上杉のピッチングは、三塁を踏ませないというもの。

 困ったときには剛速球。

 そんな大味なピッチングが、通用してしまうのが上杉だ。

 せめて一点ぐらいは取ってくれ、というのがレックスの首脳陣の正直なところであろう。

 そもそもその作戦を立てるのが、首脳陣の役割であろうことは置いておいて。


 直史はもう、次のステージを考えている。

 上杉は確かに、この試合を勝たせるのかもしれない。

 だが払う代償はそれなりに大きくなるはずだ。

 ……大きくなったらいいな。

 もしもファーストステージの初戦で投げてくるなら、中四日ということになる。

 この終盤、上杉は中四日が続いている。

 そして第一戦も投げるというのだろうか。


 直史はもしファーストステージから投げることになっても、中五日で投げることが出来る。

 そこまで計算していたわけではないが、それなりに球数も少なく出来た。

 もっともそれでファイナルステージまで進んでも、さすがに限界があるとは思う。

 ファーストステージを第一戦しか投げないとしても、ファイナルステージ初戦に投げようと思えば、中三日という日程になる。

 厳しくなってきた。




 体が重い。

 さすがの上杉も、この終盤の登板間隔は、完全に回復するには難しいものがあった。

 かといってレックスは、点を取るためのパターンがしっかりと存在するチームだ。

 出来るだけランナーを出したくない、というのは当たり前のことではある。

(下克上か)

 ここで勝っても、クライマックスシリーズの第一戦で、スターズはまたレックスと対戦することとなる。

 これが勝っても負けてもスターズが進出出来るなら、むしろ負けておいた方が下克上はしやすかったかもしれない。

 しかしここで勝たなければ、スターズに次はないのだ。


 レックスはレックスで、やはり投手事情が厳しい。

 だが勘違いしてはいけないのは、レックスは直史以外のピッチャーでも、ちゃんとライガースに勝っているのだ。

 もちろんライガースは三勝するか、二勝と引き分けでもいいので、圧倒的に有利にはなるが。

 それにしても直史も、ここでピッチャーとして酷使されすぎである。

 二試合連続パーフェクトなどというのは、本当に人間の限界を超えているようにも思えるが。


 上杉はとにかく、目の前の勝利のために投げるしかない。

 もちろんその後のこともあるが、まずは勝たなければどうしようもない。

 こう目的を絞ったときの上杉は、本当に強い。

 試合が進んでいっても、レックスに得点を許さない。

(樋口がいれば分からなかったがな)

 あの、大一番においては、あるいは大介並に、結果を残す男。

 樋口と武史のそろったレックスが、最初にスターズとライガースの時代を終わらせたのだ。

 果たしてこの先がどうなるか。

 上杉にさえ、もう分からない限界近くで、全ては進んでいた。



×××



 次話「覇者」

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