第81話 いまひとたびの奇跡
真ん中から、高めにホップ成分のあるストレート。
大介はストレートであることまでは読んでいた。
だがそのストレートの性質がどのようなものになるかは、打ってみないと分からないと思っていたのだ。
そしてバットがボールを捉えた瞬間、ボールの質量と一緒に、バットの重さまでもが消えた感じがした。
打球はライト方向、完全に引っ張った打球。
ぐんぐんと伸びていく打球を、ライトは目で追うだけ。
大介もその行方を見て、打球が失速するのを待った。
しかし打球は失速の様子を見せず、そのまま消えていった。
そう、甲子園の場外へ。
それを見た驚愕が、外野から波のように広がっていく。
声というよりは、もはや咆哮のように、叫びが轟く。
ォォォォォォオオオオオオオオ!
ォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオ!
ォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオ!
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
甲子園が大歓声で揺れる。
スタンドのライガースファンが、全て立ち上がって狂乱している。
グラウンドを一周する大介だが、甲子園でこんな歓声が上がったことはあっただろうか。
(それこそあの時か)
あの時は、金属バットで打った。
プロ入り後、木製のバットでは甲子園の場外ホームランなど打っていない。
そもそも金属バットを含めても、甲子園で場外ホームランを打ったバッターなど、大介以外には一人もいないのであるが。
まだ点差ではレックスがリード。
ワンナウトを取っていて、そしてここまで直史は、大介以外にヒットを許していない。
状況だけを見れば、まだまだレックスが有利と言うか、ライガースの勝利には距離がある。
だが試合の結果などとは別に、もっと特別なものを、今ここにいた人間たちは共有していた。
それは奇跡に立ち会うということ。
レックスの応援をしているファンでさえ、この光景は忘れることはないだろう。
パーフェクトというのは、これまでに何度も達成された。
しかし甲子園の場外ホームランというのは、これが初めて。
そして過去の記録を調べれば、大介の過去の記録を見つけるのだ。
あの夏を思い出す。
もちろん性質は完全に違うが、熱狂は同じものだ。
ただ完全に違うもう一つは、それが自分に向けられたものでないということ。
いや、あの夏もあの歓声を受けたのは、直史ではなく大介であったか。
直史のピッチングの間には、熱狂の中に静かなものがあった。
わずかな雑音さえも許さないという、クラシックのコンサートのような。
さて、この状況で冷静なのは誰か。
ぐるりと視線を向ければ、緒方だけは力強い目で応じていた。
(迫水は、まあ駄目か)
この試合の残り、どうにか壁になってくれればいい。
それにしてもベンチまで、この甲子園の狂乱に混乱している。
なんとスタンドから物が投げ込まれ、上半身を裸になったライガースファンがグラウンドに飛び出してきた。
審判が一度、試合を止めてきた。
幸いである。
このままであれば、味方の野手が混乱したまま、試合が続くことになった。
それが一時中断されたことによって、流れが途切れる。
完全にこの暴動ににた騒動は、レックスが精神状態を立て直すための時間稼ぎになった。
「佐藤、問題はないか?」
監督の貞本がそう言ってきたが、直史の答えは決まっている。
「馬鹿な観客が水を差したおかげで、試合の流れが止まりましたからね」
そう、レックスベンチも落ち着きを取り戻してきている。
ライガース側としては、まだ勢いを持ったままであろう。
しかしここで一気に攻撃を出来ないという時点で、流れが途切れてしまっているのだ。
幸運の天秤を、ライガースファンは自らの手で崩してしまった。
それを完全に見抜く直史の姿に、レックスベンチ内は、完全に安心を取り戻した。
20分ほどの中断で、乱入者は警備が連れて行き、投げ入れられた物体も撤去され掃除が終わる。
マウンドに戻った直史は、日本で一番過激と言われるライガースファンに感謝していた。
昔、アレクはブラジルならば、サッカーの試合で死人が出るのは珍しくない、などと言っていたが。
それに比べればどうということもない。
日本の観客は、拳銃など持っていないであろうし。
ワンナウトランナーなしから、バッターは二番の和田。
点差は一点となり、ここから高打率高出塁率打者に続いていく。
この展開からならば、さすがに直史の失点もありうる。
そう思っている者は、ライガースベンチにもいただろう。
ただこの中断時間の間に、完全に冷静になってしまっていた者もいた。
「終わったな」
大介の呟きに、大原はわずかに動揺した。
特大というも愚かな、おそらく日本の歴史の中で、最も飛距離のあるホームラン。
そんなホームランを打ってすぐ、大介は醒めてしまっている。
実は大原も、試合の中断は流れが悪いとは思っていたのだ。
あと一度、レギュラーシーズンで直史と対決する試合はあるかどうか。
そう考える大介の視線の先で、冷たくライガース打線を処理する直史の姿があった。
ライガースの打線は逸っていた。
レックスのベンチが、冷静さを取り戻していたのとは対照的である。
和田は比較的冷静にフォアボールも選んでいくバッターで合ったが、直史は珍しくもボール球しか投げない。
そしてチェンジアップを空振りして三振。
これでツーアウトだ。
三番のアーヴィンは、フルスイングで素振りをする。
力を見せ付けるようなパフォーマンスであるが、初球から直史のチェンジアップを空振りした。
あとはスライダーと、そしてストレートの空振りで、スリーアウト。
ゲームセットである。
甲子園のスタンドは呆然としていた。
とんでもない奇跡を見せられたと思っていたら、試合が終わっていた。
しかも大介が場外ホームランなどを打ったのに、ライガースは負けてしまっている。
何か時間を飛ばされてしまったような気分だった。
馬鹿なファンがグラウンドに飛び出すということは、稀にだがあることだ。
興奮を抑え切れなかったということは、分からないでもないのだ。
自分ももっと前の席にいたら、と想像した観客は多かったであろう。
そんな興奮の続きは、果たしていったいなんであったのか。
ここから一気呵成の反撃で逆転、という流れではなかったのか。
甲子園というのは昼間に限らず、マモノが生息しているのではなかったのか。
だが気づけば試合が終わって、ライガースは負けていた。
狐に化かされたような気分であったのかもしれない。
勝利インタビューというのは、もちろん勝者が呼ばれる。
そしてこの場合、最大の主君者というのは、九回を投げてヒット三本の二失点に抑え完投した直史になるのは、当然のことであったろう。
相手チームの主砲に、ホームランを二本も打たれたピッチャーが、勝利インタビューを受ける。
インタビュアーも少し釈然としていないようにさえ見えた。
ただ直史も、笑みなどは浮かべていなかった。
「ホームランを打たれて失点するのは、ある程度覚悟していました」
完全な無表情で、直史はそう発言する。
「野球は点の取り合いですから、もちろん相手の長距離砲の前に、ランナーを出さないようにとは考えていました」
あくまで結果論であるが、そして今日は一打席も出塁していないが、和田を一番にして大介を二番に置いた方が、統計での得点確率は上がっていたのだろう。
だが直史は、状況に応じたピッチングをした。
一打席目と二打席目は、ホームランにだけはならないように投げていった。
「三打席目は失投でした」
スルーを投げるつもりが、回転軸が上手く合わず、カットボールになってしまったのだ。
この人間の形をした何かも、失投などするのか、というのが感想である。
実際のところ今年の直史は、ほんのわずかにだがコントロールには問題があった。
かなり修正は出来てきているが、まだ完璧とまでは言えない。
そして九回の裏である。
「全力で抑えにいきましたが、打たれましたね。試合には勝てたのでいいですが」
そこが一番、理不尽さを感じさせるところである。
あんなホームランを打たれて、普通のピッチャーなら動揺してもおかしくないのだ。
もちろん中断があったため、その間に立て直したということなのであろうが。
「最後に勝っていたら、それでいいんです」
割り切った直史の宣言である。
直史は今日、フルイニング106球を投げて、二失点である。
つまり防御率的には2ということになり、これは他のピッチャーと比べても、明らかに優れている。
七回二失点であれば、ハイクオリティスタートであるのだから。
「三振をそれなりに取れたこと、フォアボールのランナーを出さなかったこと、そしてエラーがなかったことが勝因ですね」
レックスの得点力なら、大原相手であれば三点から四点は期待できた。
まさか全て計算の上なのか。
そうは思ってもその問いを、そのまま発することが出来るはずもない。
勝ったのはレックスである。
間違いない事実であるが、しかし雰囲気というか空気は、ライガースが快勝したような気がしていたのだ。
それなのに終わってみれば敗北し、この二連戦は連敗していた。
レックスとの勝率の差は縮まり、ペナントレースの行方が分からなくなってくる。
ライガースは選手たちさえ、それこそ最後にアウトになった和田やアーヴィンさえ、釈然としない顔をしている。
ただ大介だけは、大原の隣で笑っていたが。
「勝ったが負けて、負けたが勝てたな」
個人としては、大介は満足なのだろう。
ただ最後のストレートは、147km/hしか出ていなかった。
ホップ成分も強くなかったと思う。
大介は直史に対しては、疑い深くなっている。
今日の試合、もうこれで勝てると思ったとする。
ならばストレートを大介の目に焼き付けるために、わざとホームランを打たせたのではないか。
残りのペナントレースでの試合数。そしてその後のポストシーズン。
直史が大介との、絶対に負けてはいけない試合のために、布石を打ってきたという可能性を捨て切れない。
そして実際に、試合自体はレックスの方が勝っているのだ。
当たり前の話だが、大介の考えすぎである。
直史は勝てると思って投げて、そして勝てなかっただけである。
これまでならあれで、外野フライまでに終わっていたはずなのだ。
重要なのはフライ性のホームランではなく、完全にジャストミートされて場外にまで飛んでいったということだろう。
明らかに大介は、直史のストレートに対応してきた。
とはいえライガースの投手陣を考えれば、大介に打たれてもどうにかなるのでは、という見通しも立ってしまった。
ホームラン以外では、大介一人で一点を取ることは出来ないのだ。
第二打席までの組み立てをすれば、さすがに四打席連続のホームランなどはないであろうし。
……ないよね?
ともあれこれで、印象はどうあれレックスは二連勝したのだ。
首位のライガースとの差は縮まり、そしてついに逆転した。
残る試合数が違うので、確実なことは言えない。
しかし現在、ライガースの勝率は0.6357 対してレックスは0.6371となっている。
ほんのわずかの差であり、直接対決一戦でひっくり返る。
その直接対決も四試合残っているため、他のチームとの勝敗も重要になってくる。
大介は確かに直史から、二打席連続でホームランを打った。
だがそれが、チーム全体への勢いとはつながっていない。
結局ヒット三本は全て大介のもので、得点は大介のホームランのみ。
直史がそれで動揺していたなら、まだしも効果はあったであろう。
しかし結局は、あの甲子園の幻想的な熱狂の中で、一人だけ氷のように冷静に、ライガースの打線を終わらせてしまった。
打った大介のパフォーマンスは、もちろんこの日一番のものであったろう。
それでも本当に凄いのは、結果的に試合に勝ってしまうエースの方だ。
次のレックスの対戦相手は、神宮でカップスとなっている。
移動日に一日の時間があるため、本日はこちらで泊まりとなる。
直史はホテルの部屋に入ると、マッサージなどを予約する。
湯船に湯をためている間に、瑞希との連絡をする。
もうそろそろいい時間ではあるが、当然のように瑞希は起きていた。
今日の試合を見ていて、真琴は不機嫌になっていたそうである。
ホームランを二本も打たれていて、それでも試合には勝ったから問題はないという理屈は、彼女には通じなかったらしい。
『まだ本気で投げるのは怖い?』
「本気で投げるわけにはいかないからな」
既に沢村賞は決まったようなものだが、直史は日本の球界をあまり信用していない。
もっともそれは、MLBでも理由は違うが、信頼できない部分はあった。
NPBは老害であり、MLBは差別であると言える。
仕方がないとはいえ、大介は相当の回数、薬物チェックを受けている。
直史の場合は悪魔扱いされたこともあったか。
人種的な差別というのは、直史はさほど感じたことはない。
まあ直史の移籍する一年前に、大介が日本人選手の価値を上げていてくれたということもあるだろうが。
結局直史は、大介に振り回されたと言える。
ただ今年の場合は、逆に直史が大介を振り回していると言える。
MLBであれば5000万ドル以上の年俸提示があったらしいが、日本ではたったの10億でやっている。
NPBの中では破格の高額だが、MLBの一軍プレイヤーの中なら、平均を下回っている金額だ。
大介はもう、金銭欲や名誉や地位には興味がないのだ。
それらはもう、大介を満たしてしまった。
いまだに満たされないのは、強者との対決。
特に結局はほぼ勝てないままに、グラウンドを去った強者との対決。
それに大介は縛られている。
ライガースの次の対戦は、関東に移動してスターズ戦である。
ここからのスターズは、夏のアウェイが多かった分、ホームゲームが増えて楽になる。
もっとも八月終盤から九月に入ってのライガースは、ホームゲームが多いのに、負けている試合と五分五分程度であった。
残りの試合は圧倒的にホームゲームが多く、ラストスパートをかけるスタミナを削らずに済むであろう。
今日の試合、本当に大介は、勝ったとは思っていない。
高校時代の紅白戦、直史は大介をヒットまでに抑えて、結局試合には勝つという展開を何度も作っていたのだ。
今日のゲームはそれをさらに極端にした感じで、結局は点の取り合いに負けたということが事実であろう。
大介が何本のホームランを打っていても、それ以上に点を取られていては、勝てないという大原則を忘れてはいけない。
試合後のロッカールームなども、かなり微妙な空気ではあった。
間違いなく今日の試合、活躍したのは大介だけである。
大原は充分すぎるピッチングをしていたので、これを責めるわけにはいかない。
今季の大原は、今のところ4勝5敗。
リードしているところの勝ち星を、リリーフに消されている回数がそこそこ多いが、それはライガース全体の特徴と言えるだろう。
次の対決までに、どうにか出来るのか。
無言のまま、それを多くが考えていた。
考えるだけで、対処法など出ないというのが、正直なところであったろう。
【勝負に負けて】 新生! 佐藤直史総合スレ part364 【試合に勝った】
336 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
さすがに落ち着いてきたか
関西弁のカキコがひどかったな
337 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
ライガースファンにあたおかが多いのは昔から言われてることではある
338 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
スレ進みすぎやねん
なんやスレの速度、一時間で四つぐらい消化してたやろ
339 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
関西弁使うな
340 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
関西弁は敵性言語です
341 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
ほぼ絶叫だけで2スレぐらい飛ばしたからな
重複も多かったし
実況いけっつーのな
342 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
実況は実況でもうどうにもならんくなってはいたが
343 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
大サトーが一試合に二本ホームラン打たれたことってあったか?
344 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
あるわけない
少なくとも公式戦ではない
345 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
甲子園でもなかったな
そもそも高校時代はホームラン自体打たれてないんじゃないっけ?
346 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
神宮大会~
347 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
これだから若いのは
一年の頃は普通に打たれてるっての
348 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
打たれてないのは甲子園だけじゃなかったっけ?
349 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
wikiにはそこまでは書いてないからなあ
350 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
嫁のサイトにゴーするんだ!
351 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
残念、一年の春の記録はないんだな、これが
352 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
一年の春なんてさすがに公式戦は出てないやろ
353 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
白富東は古豪やからな
関東大会まで勝ち進んでたら別やろうけど
354 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
逆、順番が逆
SSコンビが入るまでは白富東はただの弱小
それが最強チームになって今はまた弱くなってるだけ
355 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
しかし人間に可能なんやね
甲子園の場外ホームランは史上二度目やって
356 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
あれ? 解説史上初とか絶叫しとらんかったっけ?
357 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
あの速いスレの流れでは分からないか
高校野球では一度記録されてる
白石が、金属バットで
358 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
あ~
359 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
金属www
360 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
なお白石は二年の秋からは木製使っているのはマメな
361 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
金属使ってたらどんな成績になってたんだろな
362 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
むしろ木製使ったことによって少し対戦数が増えたwww
363 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
甲子園での最多本塁打記録保持者やぞ
二位とはダブルスコア以上で
364 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
いうても白富東やから出来た記録ちゃうの?
365 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
一年の夏は甲子園出てないんだよ
しゃーないけどもう、知らん人も多くなってるんやな
366 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
ここは白石スレじゃねえぞ、と
367 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
しかし二失点完封で、完全にレックスの勝利とは言うべきなんだろうがね
368 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
あのホームランはないわ
たぶん今年の大事件として記録されるレベル
プロ野球史上初ということは間違いないし
369 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
普通のホームランの弾道ではあんな飛距離出ないからな
白石だけに打てるホームラン
距離どんだけ出てたんだろうな
370 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
そしてそんなホームラン打たれてもなお淡々と後続を打ち取る大サトーw
371 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
ほんまにメンタルオバケやろ
普通のピッチャーがあんなホームラン打たれたら心折れるぞ
しかも二打席連続
372 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
センターライナーもえぐかったよな
当たってたら死んでたぞ
373 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
そんだけ打たれていても試合には勝っているというw
374 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
それが一番意味不明www
375 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
勝負には負けたが試合には勝った、か
376 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
勝負もクソも相手打線を抑えた大サトーの完勝やろ
377 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
まあそのあたりの勝敗判定は野球は微妙だからな
378 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
別にどうでもいいけど、結局野球はピッチャーよ
真田がまだ現役やったら一失点ぐらいに抑えてライガースが勝ってた
379 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
大原に立場がないw
三島と直史が大介相手にまともに勝負をしてしまったため、その記録がえらいことになってしまっている。
この三試合で五本のホームランを打った大介は、シーズン通算のホームラン数が65本となっている。
前のペースに落としたとしても、14試合残っていれば5本ぐらいは打ってもおかしくない。
すると70本に届くことになる。
大介がNPBで残したシーズン記録は、MLB移籍前年の72本。
二試合あれば一本打っていたというペースである。
これが全盛期の人間であれば、納得出来なくもないのだ。
しかし大介はもう40歳になっている。
40歳となると王貞治が引退した年齢である。
まあその年も30本のホームランを打っていたりするのだが。
他にバリー・ボンズなどは40歳で45本のホームランを打っており、さらに四球出塁数やOPSの当時のMLB記録を作った。
ただ彼は薬物疑惑の騒動で、引退がはっきりとしないまま現役からフェードアウトした。43歳での実質的な引退であった。
そもそも40歳になったプレイヤーが、甲子園で場外弾を打つということが異常であるのだ。
当たり前のようにまた、ドーピングチェックを受けて、苦笑する大介であった。
それよりも重要なのは、次のスターズ戦である。
一試合目の先発は、上杉になるはずなのだ。
翌日、一般の新聞までを含めても、ほとんどが一面にこのホームランを持ってきた。
当然ながらトップニュースにまで、これが放送されている。
これがスポーツの分野にとどまらない、人類の大記録扱いされるのは間違いではない。
おそらくこの先も、甲子園で場外弾などは出ない。
現代ではホームランは、ある程度フライ性の軌道を取る。
するとやはり、遠くまでは飛んでいかないのだ。
かといって低い弾道だと、それもやはり特大のホームランとはならないはずだ。
大介にしてもあの、インパクトの瞬間に手の中から、バットとボールの重さが消えた感触は、そうそう味わったことがない。
質量がエネルギーに本当に変わってしまったような。
飛距離については場外まで飛んでしまったため、推定しか出ない。
ただ問題は飛距離ではなく、弾道であったのだ。
あの軌道でホームランが打てるなら、もっとたくさんのホームランが打てる。
しかし試合に負けたのに、そちらは全く放送されないのは、関西のテレビ局であるなあと大介は思った。
実際このホームランは、その日の夜になっても、まだニュースとなったままであった。
局によっては専門家を呼び、果たしてあれがどこまで飛んだのか、そしてどうしてあそこまで飛んだのかの見識を求める。
この専門家というのが、もう野球関係者ではあっても、元選手などではなく学者などになっているあたり、やってしまったことの人外度が分かる。
神奈川にまで移動してきても、まだその話題が中心となっていた。
次の対戦は、神奈川は上杉が投げることに決定している。
直史のストレートより、上杉のストレートの方が速い。
なので運動エネルギーは高くなって、とんでもないホームランが出るかもしれない。
そんな期待がされていたりするのだが、大介としてもあのホームランの理屈はある程度分かってきた。
そしておそらく上杉からは打てないものであろうとも。
ボールの持っているエネルギーというのは、スピードだけではない。
スピン量もまた、重要な運動量となる。
上杉は最近は、回転数の少ない球を投げていて、それによって内野ゴロを打たせることが多くなっている。
直史のあのボールは、バックスピン回転が充分にかかった上で、大介がしっかりとジャストミートしてしまったのだ。
なのでもし同じようなホームランが出るなら、その相手は武史のような、やはりバックスピンが多いピッチャーからであろう。
周囲はまだまだ騒々しいが、翌日にはもう試合である。
直史との対決が大きく注目されている大介だが、上杉とのレギュラーシーズンの対戦も、おそらくこれが最後となる。
そして上杉との対決は、これが現役最後となってもおかしくはない。
今年は完全に復活したと言われる上杉だが、大介からするとその輝きは、ロウソクの燃え尽きる最後の輝きとも思えるのだ。
もちろんせっかく日本に戻ってきたのだから、もっと上杉とも対戦したい。
しかしそれは必死になって戦って、ようやく勝てるかそれでも負けるか、という上杉との対決である。
衰えた者は、必ず引退するのが世界の条理だ。
そもそも戦力ともならないのであるから。
上杉は次のステージに、政治家というものが待っている。
野球の世界からは完全に離れてしまうのだろうが、選手でなくなった上杉に、大介は全く興味はない。
もちろん人間としての尊敬は、なくなってしまうわけではない。
ただどこかのチームの監督となったとしても、それに勝ちたいとは思わなくなるであろうことは間違いない。
最後になるかもしれない対決は、刻一刻と迫ってきていた。
待ちわびていると同時に、もったいないとも思える。
不思議な感傷であったと言えよう。
×××
次話「継承の行方」
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