第49話 多種多様
【非常識が】 新生! 佐藤直史総合スレ part213 【常識である】
218 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
何が起こったのか誰か説明よろ
219 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
一晩明けて冷静になったような気がする
220 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
>>218
>>5
を参照せよ
221 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
イエーイ
今季三回目のノーヒットノーラン
ウエーイ
222 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
今年三回目のノーヒットノーラン
全て同じ人物により達成されるwww
223 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
地味にマダックスも達成だけど牽制って球数には入らんのな
224 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
9回27人2四球でノーヒットノーラン達成
さてどこがおかしいのか指摘してみよう
225 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
なんで蛍死んでしまうん?
226 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
大サトー登場以前、いや上杉登場以前は、ノーヒットノーランの価値ってもっと高かったと思うの
227 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
上杉も初年度からノーヒットノーランしてるからな
228 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
なんか様々なノーヒットノーランか近い記録見せてくれるので楽しいwww
229 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
フェニックスベンチのみならずレックスベンチもお通夜状態になってるの藁
230 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
なんでレックスまで? 勝ったやん
231 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
なんかピッチャーの歴史にことごとく記録を残してるよな
232 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
まあMLB時代から、パーフェクトの達成記録の半分は大サトーだったしな
ノーヒットノーランぐらいフツーフツー
233 名前:代打名無し@実況は野球ch板で
感覚麻痺してきてる
古参のファンはこんな感じ、毎試合味わってたのか
直史の「調子が悪い」を信用してはいけない。
豊田にしても、そう言いつつ普通に完封はしてしまうのを見てきたのだ。
調子が悪いのにノーヒットノーランをしてしまうのか。
確かにめったに出さないフォアボールを、二つも出してしまってはいたが。
ボール球を上手く振らせたことにより、奪三振も12までは増えている。
パーフェクトでないのに、27人で試合が終わっている。
それが二試合連続で続いた。
単純なパーフェクトよりも、よほど珍しい記録ではないのだろうか。
もちろん価値としては、パーフェクトの方があるに決まってはいるのだが。
ただ、珍しい記録であることは間違いない。
パフォーマンスとしてはまさに、数十年に一度あるかどうか。
ただ直史はその生涯で、そういった実績をいくつも達成している。
実働七年で、これが八年目。
最初から最後までずっと、最高のピッチャーに相応しいピッチングをしている。
さすがに今年はと思った40歳のこのシーズンでさえ、また新しいことをやってしまっている。
野球の神様が奇跡を起こすために、選んでしまったような性能。
いや、この性能を持っているがゆえに、世界が求めてしまうのか。
直史に言わせると、ほとんどは偶然である。
野球においてだけは、自分は大変に運がいい。
他のこともたいがいは運がいいのだが、子供たちのことだけは、さすがに思うところがある。
もっとも自分の子としてではなく、日本の一般家庭の子供として生まれていたならば、おそらくは死んでいたであろうことを考えると、子供たち自身の運は、さほど悪くもないと思う。
直史の成績を古くからたどっていくと、年齢を重ねれば重ねるほど、その内容が凶暴になってくる。
とは言っても六年目と七年目は、違う部門で数字が恐ろしいことになっている。
基本的にクローザーを一時的にやった五年目以外は、六年目までその成績は上がり続けた。
中四日から中五日で投げて、ほとんど全ての試合でマダックスを達成。
勝ち星もクローザーに二ヶ月移動した年を除けば、全て30勝以上達成した。
試合数が多いMLBの方が、勝ち星は増えやすいと思う人間もいるかもしれない。
だが実際のところはレギュラーシーズンの期間はほぼ変わらないので、登板間隔が短く、移動などで休めないMLBの方が、ハードであることは間違いない。
一番恐ろしい記録はおそらく、八試合連続マダックスというものであろうか。
今年は序盤こそやや普通の人間に見えたものの、この四試合はサトーを含むマダックス。
結局シーズンを通じて勝とうと思うなら、球数を抑えるのが重要なのだ。
10年以上直史のピッチングを身近で見ていなかった、日本のファンにはやや遠い事実であるが、MLBでは直史の投げる試合は必ず席が埋まっていたのだ。
もっとも集客ではやはり、毎試合出る大介の方が、貢献度は高かったのだろうが。
これによってフェニックス打線は心を折られた。
翌日の第三戦、三島が完封出来たのは、そのあたりも絶対に理由になっているだろう。
主砲は一振りで相手ピッチャーの心を折ることが出来る。
そしてエースは一試合で、相手の打線を絶不調に陥らせることが出来る。
三島は今季二度目の完投で、最初の完封。
ヒット3本と3四球に抑えての、立派なものである。
それでも物足りなく感じてしまうのは、全て直史が悪い。
かつて合法ドラッグとまで言われた、そのピッチングの内容。
野球関係者は現場の人間に限らず、これをどうにか分析しようと試みたりしている。
だがパーフェクトやノーヒットノーランが偶然にもある程度は助けてもらっての記録だと思えば、これはいったいなんであるのか。
本人に尋ねるのが一番いいのだろうが、直史としても今はまだ、説明は避けたいであろう。
実際はその指導を受けた人間は、プロやアマを問わず、それなりにいる。
だが前提条件が極めて限定的であるため、出来るはずがないという結論に達するしかない。
やっていることの非常識さは、それぞれの内容を追っていくのではなく、総合的に見て判断するしかないのだろうか。
そうすると基本的に、直史が迫水のリードに納得していないことに気づくのだろうが。
迫水としてはどうにか直史との、復帰初戦を飾ることが出来た。
しかしボール球をそれなりに投げて、相手のバッターが空振りをしてくれるのは、かなり不思議にも思ったのだ。
そこで直史から、これまでのピッチングスタイルについて、相手が分析していることに言及される。
試合前のミーティングでは、もっと単純に球数は多くなる、と言っていただけであった。
確かにこの最近の試合の中では、99球は相対的に多かった。
ピッチャーの平均基準からすると、それでも充分に少ないものなのだが。
この試合に関して言えば、試合は心理戦という側面が大きかった。
普段は技術的に、相手の技術や力を封じてしまう。
しかしボール球を増やすという選択肢を、バリエーションの一部として考える。
ツーナッシングからは普通に三振を奪いにくるというのが、直史の通常のパターン。
また初球からストライク先行というのもパターンである。
その全てのデータを逆手に取られた。
直史は次の日にはそれを忘れて、新たな調整に入る。
次はタイタンズを相手にホームゲーム。
まだ自分の感覚が戻っていると感じていない。
運任せのピッチングをしてしまったことは、心から反省している。
結果が出ればそれでいい、というわけではないのだ。
次につながるピッチングをしなければいけない。
フェニックス戦の次は、タイタンズとのドーム三連戦。
もちろん直史は出番がないので、SBCにやってきて調整を始める。
今回は名古屋からの帰還と、球数がやや多かったために、一日はほぼ休んでいる。
しかし次の日からは、普通に投球練習を開始している。
トレーナーは厳密に球数制限をしたいのだが、医学的見地から見ると直史の肩肘は、特に問題がない。
ならば投げた方がいい、と考えるのが直史である。
セイバーはデータ分析をする。
普段は投げないスライダーを多投したというのが、ああいうおかしな数字になった理由であろう。
ただ他に、ツーシームも上手く使えている。
カットボールの割合は、やや少なくなっているが。
そしてストレートだ。
なんだかんだ打たせて取っていたはずが、試合の終盤にはストレートで三振を奪っている。
一度印象付けたところから、再びのスタイルチェンジ。
これは向こうの打線もたまらないだろうな、というのがセイバーの感想である。
調子が悪い時の、それでもアジャストしていく修正力。
直史というピッチャーは、そういうコントロールさえもが上手い。
自分という存在を、フィジカルからメンタルまで把握しておく。
それがまずピッチングを良くする基本である。
このあたりの節制が、普通の人間は出来ない。
ただ野球に限らず、極度の節制をしている超一流選手というのは、それなりにいるのだ。
スターズとの三連戦、またも雨で初戦が流れた。
この程度の雨だったら、MLBであればやっているかな、というのが直史の感覚だ。
怪我の原因などにもなるため、天候のコンディションが悪い中ではしないのが、選手を守ることにはつながると思う。
このあたりNPBは、MLBに比べるといい環境だ。
直史のようなコントロール重視の人間としては、戦場の霧になりうる天候というのは、あってほしくないものであるのは間違いない。
試合が流れても、基本的に直史の登板はスライドしていく。
今回の場合はそもそも投げる予定がなかったが、すると上谷や百目鬼の出番が飛ばされていくのだ。
勝利が前提とされるピッチャーは、そういったことが行われる。
MLBではあまりないことであるのは、向こうではカードごとの先発が発表されるからだ。
タイタンズ戦三連戦のカードの最終戦。
それが終わると待っているのは、オールスターである。
金にも名誉にも、そして公式戦以外にも興味のない直史は、ここでまた調整を行う。
そして今度こそ、オールスター明けにはライガースとの対戦が待っているのであった。
相変わらず直史は面白い。
そう思いながらバットを振るう大介は、またも調子を上げてきていた。
レックスとの試合が流れて、モチベーションが低下していたのは確かだ。
タイタンズとの三連戦でも、一本もホームランが出なかった。
たったそれだけのことで、不調扱いされるのもなんであるが。
しかし直史のノーヒットノーランのショックで、またモチベーションが上がってくる。
この手ごわい相手を認識すると、己の力も上がっていくという能力。
戦闘民族と言われるのもむべなるかな、というものだ。
ただ直史がノーヒットノーランをした翌日は、実際はタイタンズとの三連戦の最後で、少しから回っていたのも確かだ。
被害に遭ったのは、次のカードのフェニックスである。
つい先日に直史にノーヒットノーラン、そして三島に完封を食らったフェニックスは、またも壮絶な事故に遭うことになる。
何も悪いことはしていないのだが、ご機嫌な状態の大介と遭遇すること自体、運が悪いとも言える。
このカードで、大介は三試合連続のホームランを打ったりした。
フォアボールで何度も歩かされたりはしたものの、10打数の6安打。
ホームラン三本以外は、単打、ツーベース、スリーベースが一本ずつという、またおかしな記録を出していた。
89試合が終了した時点で、ホームランはついに40本に到達。
このペースで打っていけば、普通に60本は超えていくであろう。
こんなバッターと同世代に生まれたピッチャーは、チームメイト以外は時代を呪うしかないのかもしれない。
上杉のような例外は、もちろん存在するものだが。
ライガースのチーム自体を見たならば、雨天で中止になった期間を挟んで、今季二度目の三連敗というものもあった。
しかし大介が爆発すると、試合は大きく動くのだ。
またライガースは打線が好調で充分な貯金があったため、若手のピッチャーを試していくという余裕もあった。
こういった実戦での経験を積ませられる余裕があるというのは、常勝軍団を作るためには重要なことである。
ただ大介は、あまりそんな余裕はないだろうとも思っていた。
レックスとのゲーム差はまだ広がっていない。
逆転はされないが、雨天で二試合が中止になってしまったのだ。
つまり直接対決が、後に残っているということになる。
もっとも間隔を短く直史以外のピッチャーに投げられても、どうにか勝てる試合は多いだろう。
直史を正面から攻略する方法としては、単純にして明快なものがある。
それは直史以外のピッチャーから勝って、直史に負担を強いるというものだ。
あの夏の甲子園、白富東が勝てた理由は一つ。
直史が15回をパーフェクトに抑えた翌日も、完封したからだ。
真田にはそこまでの体力はなかった。
いや、あれを体力と言っていいのかは微妙だが。
精神は肉体を凌駕する。
直史はそれを体現するかのように、本当に気絶するまで投げたのだ。
その後も試合終了後に倒れたことはあり、本質的には意外と体力を短時間で爆発させるわけではない野球では、あまりないことだ。
ピッチャーだけはやはり、特別なポジションではあるのだろう。
しかし故障ではなく、体力を限界まで使うというあたり、直史以外のピッチャーでは見られない現象である。
ライガースは雨に祟られていると言えるかもしれない。
続くカップス戦もカードの初戦が雨で流れた。
もっとも考えようによっては、ここまでレックス戦で直史と当たっていないというのは、ライガース打線にとっては幸運と言っていいのかもしれない。
ただ直史と大介の勝負が実現していないというのは、お互いにとってはともかく日本だけではなく世界の野球ファンにとって、不幸なことであるかもしれない。
カップスは大介の打撃にチームを破壊され、今年はもう最下位が決まったようなものである。
そう思われていたのだが、フェニックスも直史と大介の二人に、徹底的に破壊されている。
肉体的な負傷者を続出させたことを、さすがに大介は悪いなとは思っている。
MLB時代は内角を狙われてキレたが、それでもピッチャーに返すよりはホームランでの仕返し、というものが大きかった。
アンリトンルールというものを意識的にしたことはない。
このカードカップスは、完全に大介に怯えていた。
前のカードでも雨天のため、一試合を延期していたライガース。
カップスとの試合がシーズン終盤に残っているというのは、言ってはなんだが勝ちやすいチームが残っているということで、悪いことではない。
大介を体験していない若手のピッチャーなどは、無謀にも第一打席は勝負してくる場合などがある。
少しぐらいはミスしてもいいだろうに、甘く入ると軽々と持っていってしまうのだ。
これだけ打ってもキャリアハイには届かない。
なぜならキャリアの最高の成績は、NPBでは年間72本のホームランを打っているのだ。
二試合にほぼ一本のペースでの量産。
もちろん六月のようなペースで八月と九月を打てば、70本以上ということもあるだろう。
ホームランの神様は、どこまでを大介に許すのであろうか。
ライガースの方が試合の消化が早い。
そしてレックスとの直接対決の機会は多い。
これはシーズンのペナントレース終盤まで、優勝が決まらないという流れであり、プロ野球全体を見ているファンとしては面白い限りであろう。
レックスとライガース。
どちらにも絶対的なプレイヤーが存在する。
この二人の関係性を見れば、それだけで今年のプロ野球は面白い。
当事者としてはそんなことは言っている余裕はない。
直史は必至で、大介を打ち取るためのコンビネーションを考える。
自分の持っているものを全て活用してでも、四打席を抑えるのは難しい。
味方の打線がどれぐらい援護してくれるか。
ここまで一点でも取ってくれれば、必ず勝ってきたのであるから、それぐらいは期待してもいいと思うのだ。
まずは目の前のタイタンズ戦だ。
前の試合ではしっかり抑えたが、悟にはヒットになってもおかしくない打球を打たれている。
結果が全てではあるが、過程を分析しなければ次には負けるかもしれない。
そしてセ・リーグのチームでは打撃においては、ライガースに次ぐ二番手の指標を持っている。
これをしっかりと抑えられるなら、ライガース戦の前のいいテストになるだろう。
悟を擬似大介として、これをしっかりと抑える。
だが大介用の切り札を、どこまで使っていくか。
一度しか使えないような切り札を、大介でない相手に使うわけにはいかない。
しかし直史のそれは、あくまでコンビネーションが主体だ。
切り札をあえて見せ球にするという手もある。
そしてタイタンズ相手の第三戦が始まる。
ここまでの二戦、レックスは裏ローテの先発であるが勝っている。
百目鬼の出来が良かったと言うか、どんどんと良くなっている。
先発ローテに入ってから七試合、全て六回までは投げている。
四点を取られた試合が一つあるだけで、あとは全てクオリティスタート内に抑えている。
勝ち星も四つついていて、何より負け投手になっていない。
奪三振率も高いので、これは少し未来のレックスのエースとなるかもしれない。
そういった若手のピッチャーにも、首脳陣は直史のピッチングを見せておきたい。
さすがに今日はベンチ入りしない百目鬼だが、しっかりとそのピッチングは球団寮のテレビで見ているだろう。
勉強になるから見るなど、そんな消極的な理由ではない。
誰もが見たいのだ、直史のピッチングを、そのパフォーマンスを。
マウンドさばき一つを見ても、その圧倒的な蓄積が分かる。
プロでは八年目の経験で、それだけを見ればまだベテランでもないのかもしれないが。
ホームゲームのため、先攻するのはタイタンズ。
そしてタイタンズ首脳陣は、また二番打者に悟を持ってきている。
いっそのこと先頭打者に持って来ても良かったのでは、などと直史は考えたりする。
ただどちらにしろ、パーフェクトを達成するためには、四打席目を与えてはいけないことに変わりはない。
ネクストバッターズサークルに入っている悟を意識から切り離す。
一人ずつ、丁寧に投げよう。
先頭打者をピッチャーゴロに打ち取った直史。
その前に、悟は立ちふさがる。
今シーズン最初の対決では、ホームランを一本打ち、一応は一矢を報いた。
だがその次はヒット二本の完封に抑えられ、そしてその次ではあわやパーフェクトというノーヒットノーラン。
いや、あれはもうパーフェクトと言ってしまってもいいだろう。
直史があの試合の少し前から、さらに成績に無茶振りがかかってきていたことは理解している。
奪三振が多くなり、また球数もしっかりと抑えられるようになっている。
きっかけになったのはカップス戦で、1-0と一点でも許してはいけないという状況を経験したからだと思う。
あの緊張感が直史の、まだ眠っていた部分を目覚めさせたのだ。
四試合連続のマダックス。そしてその中に二つのノーヒットノーラン。
ランナーを許しておきながら、27人で試合を終わらせ、球数は81球未満。
珍しく二つもフォアボールのランナーを出した次の試合は、結局はノーヒットノーランで、二試合連続の27人シャットアウト。
どういう頭脳をしていたら、そんな巧妙な試合運びが出来るのか。
(とりあえず俺は、この打席は球数を増やすことを狙っていくぞ)
悟は己の実力を、過信するような人間ではない。
小賢しいと言っていいのだろうか。
直史は悟の実力を認めている。
まだ調整が不充分であったシーズン序盤であるが、自分からホームランを打ったのだ。
いや、それよりももっと以前に、高校時代に悟のことはそれなりに見ていた。
後輩であるということもあったが、純粋に才能が優れていることは感じたのだ。
大介とよく対比されることも多いし、実際に長打力、走力、守備力などの傾向は似ている。
ひどい言い方をすれば劣化大介となる。
しかしその後の実績を見れば、一点がほしい場面での勝負強さというのは、樋口に匹敵するのではないかと思えるところがある。
(そちらのキャリアも、もうすぐ終わりだろうに)
最後の輝きを全て、塗りつぶしてしまおう。
直史の今季のピッチングは、あらゆる絶望を具現化したものであったろう。
大介を打ち取るにはどうすればいいか。
高校時代は、打ち取るとまではいかなくても、失点しないまでに抑えるのはどうにか出来たのだ。
ホームランでさえなければどうにかする。
そのための打順調整などもやっていた。
悟の脅威度は大介ほどではないが、一歩間違えればホームランを打たれることは分かっている。
タイタンズとの前回の対戦はノーヒットノーランどころか、あと一歩でパーフェクトというところまでいったが、今日はあの日に比べれば少し、調子が落ちていると思う。
そう前の試合も言っていたが、ノーヒットノーランは達成している。
しかし直史にとって、フォアボールが出ているノーヒットノーランというのは、自分の中ではあまり価値がないのだ。
あと問題は、直史ではなく迫水の方にある。
迫水相手に、直史はスルーの練習もしている。
確かにそれをキャッチすることは出来るようになったが、問題は直史がそれを安定して投げられないということ。
そしてキャッチングする時の体勢が、明らかに違うということだ。
(第一打席からいきなり打たれるのは嫌だな)
また悟は下手に一本でも打たせると、他のバッターが凡退した場合、二打席目は先頭打者になってくる。
ノーヒットノーランとは違うノーヒッターあたりが発生する可能性がある。
今日の試合は確実に、勝利だけを狙っていく。
もっとも勝利するために必要な、完封だけを狙う。
などと考えて投げていたら、自然とノーヒットノーランぐらいは達成してしまうものだ。
欲をかいてはいけないのである。
初球、直史はインローを攻めた。
そのままなら当たるか、といったところでボールはわずかに変化する。
ゾーンにまでは変化しなかったが、避けなくてもよかったであろうツーシーム。
悟はわずかに腰を引いて、そのボールを見送った。
(147km/hか……)
これでまだ、全盛期ではない。
150km/h台のムービングを投げていたのが、直史の全盛期である。
悟は直史の対策をしっかりとしている。
それはこのシーズン、おそらくポストシーズンまで進めば、レックスと当たる可能性が高くなっているからだ。
ライガースは現在首位を走り、レックスがそれを追う。
タイタンズがさらにそれを追うという体制が、もう二ヶ月ほども続いている。
この中でライガースとレックスは、間違いなくごく一部のプレイヤーの影響力が……いや、それぞれたった一人の選手の支配力がチームを高めている。
ライガースは去年も強かったが、レックスはBクラスであったのだ。
それがここまで勝っているのは、間違いなく鉄壁の先発完投型ピッチャー一枚が追加されたからだ。
(ただ勝てるってだけじゃなく、イニングを投げるのがすごいんだ)
完投することによってリリーフ陣を休ませる。
つまり一人で先発だけではなく、リリーフ二枚分ほどの仕事もしている。
間違いなく現在のNPBにおいて最も影響力のあるピッチャーである。
数年前までの上杉と比較すればどうであろうか。
比較するのも失礼では、という指摘もあるかもしれないが、少なくとも今年一年の内容を見るなら、直史の方が上である。
もっとも触発された上杉は、ピッチャーとしては数年ぶりの活躍を見せているが。
内角を攻められたからには、次は外というのが一般的だ。
対角線を狙うならアウトハイとなるが、そこは悟も得意とするコースだ。
長打にするのは厳しいが、合わせてミートしヒットにすることは出来る。
そう思っていたところに投げられたのは、大きく弧を描くカーブであった。
分類するならスラーブとも言えるそれは、斜めに大きく空間を切り、インローの低めに決まった。
今度のコールはストライクである。
内角に二回投げてきた。
セオリーなら今度こそ外角であるが、さらに裏を書いてインハイストレートも充分にありうる。
(インハイストレートなら打てる)
わずかに迷うところもあるが、あえてそんな分かりやすい攻撃的な組み合わせを、直史はするであろうか。
組み立てとしてはあまりに乱暴であるが、しかし心理的には充分にありうる。
そして直史の投げたのは、インハイストレートであった。
悟は何も複雑には考えず、ボールの軌道をイメージしてスイングする。
だが、ボールの軌道はわずかにゾーンから外れているか。
(いや、ボール半分)
ゾーンに残っている。
そしてスイングの軌道を、途中で無理やり変えようとする。
どうせ変えるなら、空振りをしていた方がよかった、と思ったのは後のことである。
高く舞い上がったボールであるが、距離はそれほども出ない。
セカンド緒方がわずかに後退し、そこでキャッチ。
結局は三球しか使わず、悟を打ち取った計算になる。
(今日は随分と攻撃的なのかな?)
打つためにピッチャーの心理状態まで考えないといけないのなら、それはとても難易度が高いことになるだろう。
一回の表から既に、悟はこの試合の苦戦を予想することが出来た。
直史としては、完全に理想的である。
空振り三振は難しいだろうとは分かっていた。
ならばフライを打たせるつもりで、外野も少しポジションは前。
だが内野フライであったのは、球威が優ったから。
まずは一打席の処理が完了である。
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