第23話 丁寧な生き方
おおよそほとんどのプロ野球選手は、自分の寿命がまだ半分以上残っている状態で、現役を引退する。
肉体を酷使するスポーツは、それだけ現役でいられる期間は短い。
これでも野球はまだマシな方で、柔軟性を必要とするスポーツなどでは、30歳のトップレベルプレイヤーがいないようなものもある。
地味に相撲なども、現役でいられる年齢の上限は低い。
40歳のプレイヤーが今、NPBに果たしてどれぐらいいるものか。
あの鉄人上杉でさえ、もう引退の話が普通に出てきている。
この二年、年間で20試合先発で投げられていないのだ。
むしろ三年前には、25試合先発しているというのが脅威なのだ。
それでもあの故障がなければ、果たしてどれだけ記録を伸ばしていたことか。
直史は現役に執着などはない。
だが自分の美学や信念などよりも、ずっと重要なものを背負って投げている。
それはとてつもない負荷ではあるが、同時に力を与えてくれるものでもある。
(先に一点……)
そう思いながら見ていた先で、六番打者である迫水が、完璧にボールを捉えていた。
レフトスタンドに入る、プロ公式戦の第一号ホームラン。
バッテリーを組む直史にとって、重要な援護点となった。
迫水に対して直史は、それほどの期待をしていなかった。
そしてこれまでは、その期待以上の働きはしてくれている。
ワンバンするカーブなども投げたが、体で止めて後ろには逸らさない。
その迫水の、先制のホームランである。
(よし)
この瞬間、多くのレックスファンは、試合の勝利を確信した。
佐藤が投げるなら一点あれば大丈夫。
昔からよく、直史はそんなことを言われていた。
だが実際のところ、負けた試合を見てみれば、二点以上取られていることが多いのだ。
これは直史のせいではないが、あまりに鉄壁のピッチャーが点を取られてしまえば、打線も動揺していつも通りの力が出せないのかもしれない。
それにしても直史は、味方の援護が少ないピッチャーなのだが。
二回の裏、直史のピッチング内容は、四番を空振り三振で打ち取る。
続く五番には内野フライを打たせ、六番は内野ゴロでしとめる。
要した球数は、わずかに10球。
一回の裏は七球しか使っていないので、このペースでいくとまた、とんでもないものになるかもしれない。
とんでもないスピード進行で、試合が進んでいく。
カップスの攻撃が早く終わるのはまだしも、レックスの攻撃もまた、それに引きずられるように早く終わっていく。
テンポのいい試合だな、と直史は思っていた。
たださすがにリードが一点だけというのは、ソロホームラン一本で追いつかれる点数である。
このあたり直史は己の力を過信していない。
野球というのは一発逆転があるスポーツなのだ。
強いチームが確実に勝てない、というのはジャイアントキリングを求める観客にとっては、面白いものなのだろう。
だがあまりに偶然性が強すぎては、それはそれで不満が出てしまう。
そんな中で確実に楽しめるものがある。
充分にありうるとは分かっていても、それでも期待してしまい、奇跡のように思える。
それが直史のピッチングなのだ。
五回の表に、レックスは二点を追加する。
ここでようやく、直史はわずかに緊張感を弛める。
四回まで直史は、許したランナーは一人もいない。
当たり前のように、ここまでをパーフェクトで封じている。
記録の上では知っているはずだ。また観客として視聴者としても、散々に目にしているはずだ。
だがリアルタイムで展開されるパーフェクトピッチングというのは、これほどまでにプレッシャーをかけてくるものなのか。
スタジアム全体、見ている観衆にさえ、席を立つのを忘れさせるような。
敵も味方も、プレッシャーの中でプレイすることになる。
だが一番のプレッシャーをかけられているはずの直史は、なんとなく試合の流れが見えてきている。
これは以前にもなかったものだと思うのだ。
(今日は打たれるな)
直感と言うよりも、これは確信に近い。
五回の裏、ツーアウトまでを完全に封じていた直史。
だが六番に掬われた打球が、レフト前に落ちる。
エラーになる余地もない、完全なクリーンヒット。
スタジアム中がざわめくのが、マウンドの上ではもっともはっきりと聞こえた。
直史はこれまで、プロのシーズンを通して、年に複数回のパーフェクトが出来なかったことがない。
回数だけならプロ四年目、MLB二年目のシーズン六回が一番多い。
だが割合的に見るなら、MLB三年目は先発としては四ヶ月しか投げなかったが、五回のパーフェクトを達成している。
当たり前のようにパーフェクトを達成する。
合法のドラッグのように、それを求めて観客はスタジアムに向かうのだ。
ヒット一本を打たれたところから、逆にレックスは打線がよく動くようになった。
六回から七回に、それぞれ二点ずつを追加。
7-0とスコアが動いてしまっては、ほぼ試合は決まったようなものである。
あとは直史が、完投するかどうか。
そして直史としては、完投数は稼いでおきたい。
もう一本だけ、内野の間を抜けていくヒットが出てしまった。
しかしそれでも、9イニングを完封し、92球。
11奪三振で無四球無失策と、パーフェクトに近いピッチングをここでも演出したのであった。
貯金が作れていく。
このカップス戦の後、まだレックスはアウェイゲームが重なっていく。
スターズにフェニックスと、相手のスタジアムでの試合。
ただスターズなどは在京圏なので、あまり遠征というイメージは湧かない。
移動で時間が潰されないというのは、本当にありがたいことだ。
広島から戻る新幹線の中でも、直史はおおよそを眠りながら過ごす。
この二連戦を勝利し、レックスは波に乗りつつある。
ただ次のスターズ戦は、三連戦の初戦が三島と上杉の投げあいになる。
衰えたとは言っても、まだまだ上杉は160km/hは投げてくるし、ムービング系でバットを折ってくる。
三島にとってはまだ、苦しい相手だと言えるかもしれない。
直史としては、今の上杉相手ならば、それほど恐ろしくはないかなと感じている。
かつては1を切っていたシーズン防御率も、今では2を超えている。
ただこれでも、先発ピッチャーの中では、相当の力量ではある。
それにスターズは上杉がマウンドに立つと、チーム全体の戦力が一回り強化されるところがある。
チームの顔は監督であることが多いが、スターズの場合はもう完全に、上杉のチームとなっているのだ。
直史はだいたいNPBにいた頃は、相手のエースに合わせて投げさせられていた。
それでも引き分けはともかく、敗北はなかったのである。
しかしお互いに相手をパーフェクトに封じあったあの参考パーフェクトの試合からは、随分と年月が流れたものだ。
今ではもう対戦したとしても、そこまでの熱量を持ったピッチングは出来ないであろう。
加えて直史は、もう壊れてしまうようなピッチングは出来ない。
どちらかがどこかでローテーションをずらさないと、対戦することもないだろう。
広島から戻ったその日は、当然ながら休みである。
だがMLBなどでは、移動してすぐに試合などというのも、珍しいものではなかった。
よくあんな日程に耐えられたものだな、と今なら思う。
若かったのだ。
野球はとにかくピッチャーというポジションが、圧倒的に負担が大きい。
MLBが完全にDH制を採用し、ピッチャーを専門職としたのも、よく分かるというものである。
そして今ではどんどんと責任投球回が短くなり、リリーフをいかに安くそろえるかで、レギュラーシーズンの結果につながるところがある。
直史はその風潮に喧嘩を売って、ほとんどの試合を完投していたが。
100球程度しか投げなくていいなら、それも通用するのだ。
ホテルに戻ってきた直史は、くつろいだ格好になると、ベッドに横たわった。
昨日は一日軽い運動をしただけで、もちろん試合には出ていない。
だが今の直史はもう、緊張状態にあるだけで、ある程度は消耗してしまうようだ。
それとあとは、単純に移動があったからだろうか。
広島から東京までは、新幹線一本で戻ってこれるのだが、セ・リーグの中では一番長い移動距離だ。
MLBの飛行機での移動に比べれば、何ほどのものでもない。
あちらはファーストクラスの設備で、新幹線よりもゆったりと体を休めることが出来た。
ただそういったこと全てを含めて、やはり年齢による衰えが大きい。
あるいはブランクにより、体のリズムを取り戻せていないのか。
一度は週休二日の生活に慣れてしまった。
人間らしい生活、と言ってもいいだろうか。
プロ野球選手は一般人と比べれば、どいつもこいつも超人である。
その中では直史は、体力的には一般人に近い。
東京のホテルを常宿としていると、利点は色々とある。
その中で直史が一番重要視しているのは、やはり時間の使い方だ。
人間は年を重ねるごとに、時間というもののありがたみが分かってくる。
特に金銭的に困っていなければ、時間というものより貴重なものはない。
次いで健康あたりであろうか。
なにもしなければどんどんと、肉体が衰えていく。
だがピッチャーの中には40歳を超えても、年間に15勝以上した例もあるのだ。
直史は衰えるはずの肉体を、どうにか運動や休養、そして食事などによって、維持ではなく向上させようとしている。
そしてそれはある程度のレベルまでは、成功している。
試合から中一日で、東京に戻ってきた。
思えば直史も、大学時代とNPB時代で、東京に住んでいることが多い。
単身赴任に近いが、週に一度は瑞希がやってきてくれる。
ただ子供たちに会えないのが、寂しいし心配でもある。
それを思うと大介たちが戻ってきてくれたのは、ありがたい面も大きいのだ。
椿と桜は交代で、甲子園近くのマンションへ通っている。
そして子供たちは実家にいるわけだが、ある程度は手がかからなくなっている年齢が多い。
親戚同士の助け合いと言っていいのだろうか。
だが最優先は、明史のことである。
そのために今、直史は投げているのだから。
大介が他のピッチャーを打って負けを多くつけ、防御率を悪化させてくれる。
もちろん同じライガースのピッチャーには、そんなわけにはいかないのだが。
ライガースのエース畑は、直史から見てもいいピッチャーだ。
二年連続で沢村賞の有力候補にはなっていた。
それでも全盛期の直史であれば、問題はなかったろうが。
(皆、いなくなっていくんだな)
年月の流れを感じながらも、直史はそれに抗っていく。
東京からちょっと横浜まで移動し、スターズとの三連戦が始まる。
レックスは三島、スターズは上杉という両チームのエースの対決。
だが観客が本当に見たかったのは、間違いなく直史と上杉の対決であったろう。
衰えたとは散々言われながらも、いざという時の上杉は、全力で完封してくる。
相手が強ければ強いほど、限界を超えて投げてくるのが上杉だ。
今の直史の立場からすると、対戦したくはない。
直史は一試合を落としてでも、シーズンを通じての成績を残さなければいけないのだ。
直史はこの三連戦、チームに帯同していない。
ひたすらレックスの室内練習場や、SBCを訪れて、ピッチングの精度を上げていく。
次のフェニックスとの試合、名古屋ドームはピッチャー有利。
だがホームランが出にくいというだけで、直史にとって有利とは限らないのだ。
その日のメニューを終わらせて、テレビでスターズとの試合を見る。
スコアは五回を終えて1-1であるが、両エースに自責点はついていない。
だがお互いにエラーが出ているというのは、緊迫した投手戦においては、ピッチャーの神経を削ることがある。
平常心をなくした方が負けるだろうな、と思うと共に、上杉に限ってはメンタルが揺らぐことはないだろうなとも思う。
六回を終えたところで、三島は降板する。
同点の状況で、レックスは先にエースを降ろしたのであった。
そして七回の表まで、上杉はまだ投げる。
ここも抑えて、わずかに一失点でハイクオリティスタート。
レックスはリリーフとして投入するのは、敗戦処理ではないが、勝ちパターンのピッチャーでもないという、また若手に経験を積ませるものであった。
2-1の僅差でレックスは敗北した。
これはエースをどこまで引っ張るか、という首脳陣の判断が結果を左右したと言ってもいいかもしれない。
もう少し三島を引っ張っていたらというのは、結果論に過ぎない。
球数もそれなりに増えていたし、明日と明後日はリリーフ陣がそれなりに必要になる。
またスターズの選手は、上杉が投げる時は、よりその力を発揮するようになってきているのだ。
エースの使命はチームを勝たせること。
そう考えるなら、上杉はまだまだエースの資格を有していると言える。
だがかつてのような、完封して当たり前、というほどの圧倒的な力は感じない。
この試合もリリーフに任せていた。
かつての上杉であれば、リリーフを休ませるために完投していたのに。
それでもチームは勝つ。
純粋に戦力ではなく、精神力で勝っているような気がする。
もちろんメンタルもまた、スポーツにおいては重要な要素であるのだが。
(残りの二試合をどう戦うか、うちの首脳陣の見せ所なんだけどな)
あまり期待はしていない直史である。
スターズとの二戦目は、今季まだ負けがついていないオーガス。
だがこれは完全に自分の実力というわけではなく、運よく打線の援護があるからという結果である。
また相手チームも、自軍のエースは相手のエースに当てるというのを基本としている。
そのためエースであっても圧倒的な成績は残さない。
指揮官によっては相手のエースには弱いピッチャーを当てて、その試合は捨ててしまうという潔いやり方をする人間もいる。
それでも基本的には、エース対決というのがプロ野球の見所であったりはする。
今の直史には関係のないことである。
開幕戦ではなく、地元開幕戦に抜擢されたことが、直史にとっては幸いであった。
もしも開幕戦であったならば、いきなりライガースと対戦となっていたわけだ。
現在、ライガースはセ・リーグの首位を走っている。
そんなスタートダッシュに成功したライガース相手に、まだ本調子でない直史が投げたとしたら、負けていた可能性は高い。
目的がはっきりとしている直史は、大介と真正面から対決するつもりなどはない。
敬遠という立派な作戦を、使わせてもらうつもりである。
このオーガスのピッチングは、前の登板と違って安定したものであった。
六回を投げて二失点と、充分なクオリティスタート。
そして都合よく、打線の援護もしっかりとある。
勝ちパターンのリリーフにつなげていける展開。
既に三点差がついているここから逆転するには、スターズの打線は強力ではない。
統計的にいけば、これでもう勝てる。
完全に勝ちパターンのリリーフを使うのではなく、一般的な中継ぎも使う。
リリーフを一枚でも休ませれば、次の試合は楽になっていくからだ。
実際にこの試合、リリーフ陣は少し点を取られたが、レックスはそれ以上に追加点を取った。
スターズとしても点差がついた状況から、追いかけて逆転をするために、強力なリリーフを出していくわけにはいかない。
もちろんこういった場面で、若手に経験を積ませることはある。
だが敗戦処理にも近いこういった状況での登板は、若手のモチベーションを下げることにもなりうる。
出番があるだけで充分に、アピールするチャンスと考えれば、前向きに投げられるとも思うのだが。
実際に青砥などは、こういう場面で出場機会を与えられることが多かったのだ。
最終的なスコアは7-4で決着。
先発のオーガスはこれで、負けなしの三勝目。
勝ち星の数自体は、これで直史に並んでいる。
もちろん本人も、この結果に慢心することはない。
なにせ同じチームに、はるかに恐ろしいピッチングをしている人間がいるのだから。
オーガスはMLBではルーキーリーグから順調に上がっていったものの、2Aでしばらく足踏みが続いていたピッチャーである。
その青年期には、直史のピッチングをMLBの試合で見ている。
またWBCにおいては、クローザーとして投げた姿も。
過去のレジェンドと思っていたのは、同じカリフォルニアに在住していた彼の方が、日本のファンよりも大きかったかもしれない。
だがオープン戦からこっちのピッチングを見ていれば、明らかに自分の勘違いであったことが分かる。
これでもまだ、全盛期に比べるとずっと、控えめなピッチングをしている。
MLBでは年に何度もパーフェクトをして、マダックス程度では誰ももう、納得していなかった。
チームを優勝に導くこと、アナハイムにおいては三度。
そのうちの二度は、ワールドチャンピオンの瞬間にマウンドにあった。
日本に来たのはあくまでも、金銭的な事情が大きい。
今年から二年契約を結んだが、いつかはアメリカに戻る。
あそこが最高のリーグであるというのは、今でも共通の認識であるのは、日本人選手もNPBで結果を残せば、MLBに挑戦することからも明らかだ。
しかし今、世界最高のピッチャーは、この同じチームにいる。
何かをつかめば、自分はMLBに至り、そして爪痕を残す選手になれるだろう。
スターズとの第三戦も、レックスは勝利した。
翌日が休みということもあって、首脳陣が勝ちパターンのリリーフまでも、贅沢に使ったからだ。
スコアは5-2と、かなり投手が継投して安定していた。
これで今年はここまで、リリーフデーは二勝一敗と、なかなかの結果である。
やはりエースクラスが勝ってくれるのは理想だが、それ以外のピッチャーでどれだけの勝ち星を得られるかは、ベンチの采配というものだろう。
これにてレックスは12勝7敗。
セ・リーグにおいての順位は二位となった。
先頭を走るのは、タイタンズを二勝一敗で叩いたライガース。
15勝5敗という、とんでもない勝率でスタートダッシュを継続させている。
この成績における貢献は、やはり大介が最大のものである。
20試合経過の時点で、既にホームランは9本。
打率はようやく0.390を切ったが、それでもOPSは1.5以上を保っている。
四試合連続でホームランが出ず、これで少しは衰えたかと思ったら、また三試合連続でホームランを打ってくる。
開幕からの連続安打記録は19試合で止まったが、出塁の記録はずっと続いている。
いくら大介でも、五打席のうち三打席を歩かされてしまえば、残りの二打席で凡退するということはあるのだ。
ライガースが先頭を独走し、それをレックスが追う。
三位争いはスターズとタイタンズが行い、カップスとフェニックスが続いている。
今年のセ・リーグのペナントレースはライガースとレックスが争うのではないか。
そう、あの直史と大介が揃った、たった一年のシーズン。
あの年、大介は72本のホームランを打った。
そしてその記録は、いまだに更新されていない。
横浜から東京に戻り、そして次は名古屋に行く準備をする。
フェニックス戦で投げた後は、ホームゲームでのライガースとの対戦が待っている。
しかしこのカードでも、直史の登板予定はない。
またアウェイでのカップス戦第一試合が、登板予定となっている。
カップスはこの間マダックスをされたばかりなのに、またも直史の先発と当たるという、なんとも間が悪いと感じているかもしれない。
ただ直史としてはカップスは、パーフェクトをするにはやや、やりにくい相手だと感じている。
スターズとフェニックスなら、なんとかなりそうな気もするのだが。
(名古屋ドームか)
完全にピッチャー有利と言われる球場だが、直史はさほどそうは感じていなかった。
かつてはゴロを打たせることを重視していたため、そもそもボールが飛びにくいということも、重視していなかったのだ。
今は圧倒的に、フライを打たせる割合が上昇している。
そして少し自分の成績を見てみたのだが、NPB時代の二年間は、今よりも奪三振率も高かった。
つまり今は、ホームランの危険性があるフライを打たせている上に、だからといって三振が取れるようになったわけでもないのだ。
これで名古屋ドームで、どういうピッチングをすればいいのか。
直史は色々と考えることが多い。
今のレックスの首脳陣には、それほど優秀なピッチングの組み立ての出来る人間がいない。
ほぼ全て直史が考えて、その感覚で投げている。
各球団のキャッチャーを見ても、それほどリードで期待できるような選手はいないとも思えるので、そこを嘆いてもどうしようもないのだが。
(恵まれていたんだな)
今更ながら、過去に組んだキャッチャーたちに、感謝の念を送る直史であった。
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