二章 シーズン開幕
第15話 開幕!
いよいよ今年もプロ野球のペナントレースが始まる。
そして試合を重ねるごとに、自分のプロ野球人生が終わりに近づいていくことも感じている。
オープン戦で絶好調であった大介だが、モチベーションが完全に戻ったのは、直史のピッチングを見てからだ。
直史はもう、進化も成長もしない。
だが変化して、適応しようとしているのは分かる。
野球のある人生を送ってきた。
この年齢まで現役である選手というのは、なかなかいないものである。
純粋に実力では若手に匹敵していても、チームの戦力の若返りなどを考えれば、若い方を使う。
若さとはそれだけで武器なのである。
なので若手のチャンスを叩き潰してでも、首脳陣に使ってもらう理由。
それは圧倒的な成績を収めていくしかない。
スポーツ選手の加齢による衰えは、筋力などよりもずっと、腱や靭帯などから柔軟性が失われていくことによる。
骨のわずかな衝撃吸収力すらも、段々と失われていく。
何より怪我の治癒力が落ちていく。
大介はつまらない怪我でプレイが出来なくなることを、一番に恐れていた。
それは事故によって選手生命を失った実父から、教科書的に教わったものだ。
本当の衰えがやってくるまで、ずっとグラウンドには立ちたい。
一般的に言われているのは、動体視力の衰えだけは、どうにもならないというものであるが。
開幕三連戦、対戦相手はレックス。
だが舞台はホームであるにも関わらず、甲子園球場ではない。
センバツの試合によって、ライガースは大阪ドームを使用している。
それだけで少しテンションは下がるのだが、大阪入りしたレックスは直史を含んでいなかった。
地元開幕のピッチャーに、直史を持っていったというわけだ。
レックスとしてもちゃんと、エースの三島を開幕戦に持ってきてはいる。
MLBに慣れた大介としては、NPBの常識に戸惑いというか、そういえばそうだったな、と思い出すこともある。
おおよそ六日間試合があって、そして一日休み。
MLBのような殺人的スケジュールではない。
日本からアメリカに渡って、成功する選手と失敗する選手の違いは、このハードな日程に耐えられる体力にあると思うのだ。
あるいは体力を温存する、徹底的な自己節制。
単純に技術だけなら、MLBに挑戦するようなNPBの選手は、全て達している。
だが通じる者と通じない者がいるのは、ある種の体力の差だ。
直史などはそのあたり、消耗を徹底して配慮していた。
結果としては過酷なはずのMLBにおいて、NPB時代以上の成績を残したのだ。
大介もまた、むしろ成績を伸ばした一人である。
試合数が多いので、単純にホームランや打点の数を、伸ばす機会は増えていた。
だが過密スケジュールで、対戦するピッチャーの数もNPBに比べれば多く、レベルも平均的には高い。
それなのに打率が上がっていったあたり、やはり大介もおかしい。
また打率もだが、より打撃指標としては適していると言われる、OPSも上がっていった。
むしろ敬遠されることは、多くなっていったのにだ。
単純にアメリカの場合は、日本よりもあっさりと申告敬遠は多くなっていった。
一番ひどかったシーズンなどは、フォアボールが267個だったのに対し、申告敬遠が204個。
日本では一応勝負の体裁を整えるが、アメリカでははっきりと歩かせることが多かったのだ。
もっともそれでも、勝負か敬遠かがはっきりしていたので、その年には82本のホームランを打った。
大介のキャリアハイにして、MLBのシーズン記録。おそらく年間の試合数が増えない限りは、これが破られることはない。
ちなみにMLBはレギュラーシーズンの試合を減らして、ポストシーズンの試合を増やそうという動きがあるので、これは永遠に抜かれない記録になるかもしれない。
レックスとの第一戦、ライガースも地元開幕であるので、エースを出してくる。
右腕の畑は、父もプロ野球選手という、二世選手である。
知らない間に日本人選手も世代交代が進んだのだな、と思うのが大介。
それでもトップクラスは相変わらず、MLBに挑戦してくる。
日本の場合ピッチャーは、野手よりもずっと活躍できる可能性が高い。
紅白戦で対戦したが、この畑も充分にMLBで通用するポテンシャルを持っていると思う。
乗り込んできたレックス打線を相手に、まずは三者凡退でのスタート。
そしてその裏、ライガースの攻撃である。
ライガースの現在の監督は、かつてエース格としてローテーションを長く守っていた山田である。
高卒育成枠から支配下登録、ローテーションに入って真田と共にライガースの先発を務めることが長かった。
キャリアの終盤はリリーフに回されていたため、ブルペンの事情も把握している。
その山田を筆頭としたライガース首脳陣は、果たして大介の打順をどうしたのか。
かつてのNPB時代ならば三番であるし、MLBに倣うなら二番である。
結論が出ないまま、今日は二番バッター。
先頭が出塁せず、彼の打席が回ってきた。
MLBは統計によって、どういうバッターならどの打順に置くのがいいのか、科学的に決定している。
だがそれは本当に正しいのか、と懐疑的になる人間はいる。
セイバー・メトリクスは誕生してから半世紀ほどにもなるが、いまだにそれは発展を続けているのだ。
統計ばかりを追っていると、シーズン成績は残せるかもしれないが、いざという時に弱い選手になる。
大介の場合は統計で飛び抜けている上に、重要な試合ではさらに数字を挙げているのだが。
レックスの先発三島は、まずまずいいピッチャーだろう。
MLBに行ってもエースクラスとまでは言わないが、ローテーションのピッチャーとして投げるぐらいには、力がある。
だが直史との対決の前に、こいつは邪魔だ。
ストレートを一球見た後、その後の変化球はカットする。
内角を厳しく攻められても、当たらないボールは避けない。
勝負球になるストレートは、安定して150km/h台の半ばは出してくる。
コンビネーションの中でストレートを使うタイプで、かなり完成度の高いピッチングをしてはいる。
(だけど全然怖くないんだよな)
軽く振ったスイングで、打球はドライブがかかりながらセンターの頭を越す。
フェンス直撃のボールが、勢いがありすぎて戻ってきて、単打にしかならなかったのは驚きである。
アウトローを簡単に打つのは、大介にとって難しいことではない。
普通のバッターには扱えない、長さが10cmほども長いバットを使っているからだ。
体格の小さな大介は、外のゾーンが広いMLBでは、このバットがなければもう少し普通の人間らしい成績になっていたかもしれない。
もっともこの重くて長いバットを自由自在に振り回せる人間は、他にはいないであろう。
バットの規格の中で、ほぼ全員が似通った形を使っているなら、それが正解ということだ。
五月に40歳を迎えるロートル。
基本的に年齢を重ねれば、動体視力が落ちるため、速球には弱くなる。
そう考えてストレートを決め球として投げたが、ほぼジャストミートされた。
角度がなかったためホームランにこそならなかったものの、打球のスピードはホームラン級。
さすがはMLBの頂点に立つバッターだ、と三島は感じていた。
ストレートを見せ球にして、変化球でカウントを取り、ギアを上げたストレートで三振を狙う。
だがそれを簡単に打たれてしまって、ランナーとして出してしまった。大介にとっては一塁でも、出塁すればそこは即ちスコアリングポジションのようなものである。
映像では何度も見た、ライナー性の打球がそのままスタンドに飛び込む光景。
それに比べればわずかに届かなかっただけ、運がいいと言えようか。
大介はMLBで、いまだに年に30個ほどはシーズンで盗塁をしている。
昔ほどの数ではなく、成功率を相当に重視してはいる。
盗塁はMLBのセイバー指標では、それほど重要なものではない。
だがランナーが走る姿勢を見せることは、ある程度ピッチャーへのプレッシャーとなる。
大介の盗塁数は日米を合算していいなら、世界記録を達成している。
だがそれぞれのリーグで、ということならどちらも更新していない。
走塁における負担で、故障のリスクは高まる。
なので問題なく決められる場面以外では、走らないようにしていた。
しかしリードは大きく取る。
走るぞと思わせれば、それだけピッチャーの注意を引ける。
レックスは今日も、ルーキー迫水がマスクを被っている。
社会人出身の即戦力と言えど、投手陣との連携は取れているのか。
少なくとも注目されているのは、バッティングの方である。
プレッシャーの中で、レックスは一失点。
初回の攻防は、ライガースに分があった。
ただ大介は、MLBとNPBの違いに、やや勘が鈍っているところはある。
いや、基準となる判断力が、違っていると言うべきだろうか。
進塁打で二塁に進み、ツーアウトからのタイムリーでホームへ帰還。
ノースライでまず、一点を取った。
試合はその後も、ライガース有利に働いた。
甲子園球場ではないと言っても、大阪のライガースファンは日本のファンの中で一番熱狂的である。
開幕戦ということもあって、スタジアムはライガースの応援一色。
この状況で勝てというのは、今のレックスの戦力では難しい。
これは勝てる試合だな、と大介は途中で確信する。
点差は五点と、プロ野球ならいくらでも逆転の可能性がある点差だが、レックスはビッグイニングを作ることに長けていない。
五点差が中盤であれば、ほぼ勝てなかったのが去年のレックスだ。
長打を打てる信頼性のあるバッターがいないというのは、かなり厳しい。
まさにスモールベースボールと言うべきだろうか。
MLBの徹底した分析野球に慣れた大介は、それでは勝てないと分かっている。
一発勝負であれば、確かに作戦を立てて、どうにか勝つという選択肢もあるだろう。
しかしレギュラーシーズンの試合は、ある程度大味に戦って勝てなければ、シーズンを通じて勝つことは難しい。
NPBは目の前の一試合にも、かなり力を入れて戦う。
だがMLBは負けると分かったら、もうその試合は捨てていく。
今のレックスはMLB的と言ってもいいかもしれないが、対戦相手が悪い。
負けた相手をどんどんと煽っていくライガース。
これはMLBのチームの中では、なかった現象である。
(まあ日米の野球の違いか)
開幕戦は、シーズンの中の一試合に過ぎないと考えるなら、エースを出してくる意味はない。
結局最後まで試合の流れに変化はなく、初戦はライガースが制したのであった。
最終的なスコアは6-2とレックスも全く歯が立たなかったわけではない。
しかし実際に試合を見ていれば、展開は完全にライガースの流れであった。
(六回二失点で負け星がつくのは、ちょっと厳しいな)
どうもベンチの采配に積極性が感じられない。
先発の交代のところで、勝負が決した感じがした。
投げていたのが自分であったら、と考えたりはする。
ライガースの打線はそれなりに強力であるが、それ以上に諦めが良すぎる。
オープン戦でもその傾向は見えたが、勝ちパターンのリリーフ陣は、やはり力がある。
しかし負けている試合を逆転するための、しぶといタイプの敗戦処理がいない。
敗戦処理でも実績を出していったら、ちゃんと役割を与えられる。
だが首脳陣の継投がそもそも、捨てた試合には執着しないものであるように思える。
そう、かつての星のようなタイプがいない。
直史は試合の翌日も、普通に室内練習場で調整をしていた。
またこの場所には、二軍のピッチャーもいたりする。
二軍の若手の中に、将来性のありそうなピッチャーはいないのか。
直史は自分の見る目を、あまり信用していない。
球速以外で勝負出来るピッチャーというのは、なかなか実績以外で判断するのは難しいのだ。
直史としても他人に構っている余裕はない。
しかしチームとしては、特に打線の援護がないと、自分の成績だけで勝ち続けるのは難しい。
昔のように無失点記録を作るなど、そういったことは難しい。
実際にオープン戦でも防御率は、ほぼ1ぐらいにはなっていた。
ベンチの采配を見ていると、おそらく一点を争う試合では強いのだろうな、とも思える。
だがプロのレギュラーシーズンは、もっと大味であってもいい。
目の前の一勝のために、一点にこだわる。
そんな試合を続けていては、小さくまとまってしまう。
……目の前のバッター一人、一試合すら負けまいと思っていた、直史が言っても全く説得力はないだろうが。
開幕三連戦、二戦目はレックスが勝利した。
ライガースの先発が調子が悪かったのと、レックスの外国人が大介の怖さを知っていたため、徹底的に勝負を避けていったからだ。
それでも外に外したボールを、レフトのフェンス直撃二塁打にはしてしまった。
リードした展開で終盤に入ると、レックスは継投していく。
このリリーフ陣の強さだけは、リーグの中でも上位なのだ。
今の戦力状況では、ペナントレースを制するのは難しい。
だが後ろのリリーフが強いということは、直史にとってはありがたいことだ。
六回か七回まで投げておけば、その後のイニングをリリーフに任せざるをえない。
もちろん場合によっては完投も狙っていくが、無理はしないというのが直史の今シーズンのモットーとなっている。
「ふむ」
直史はレックスのデータ班と一緒に、ライガースの試合を確認していたが、それよりも先に確認するのは、タイタンズの試合であったりする。
タイタンズは開幕戦を地元で行い、そちらでしっかりと勝っている。
神宮の一戦目に投げてくるピッチャーは、比較的弱めのピッチャーであると言える。
レックスは得点力全体が低いというわけではない。
ただビッグイニングを作るのは下手なのだ。
監督の采配が悪いとは、確かに言えるだろう。
それに競った試合で逃げ切る展開なら、それなりに勝っている。
ライガースとの二戦目も、大介を回避したからこそ勝てたとは言えるだろう。
タイタンズも全体としての得点力は、かなり高い。
上位打線がつながっていけば、ビッグイニングがすぐに発生する。
同じ東京のチームであるため、移動での疲れや調整不足もあまり考えられないだろう。
直史はそんなことを考えながらも、オープン戦では対戦していない選手のデータを頭の中に入れていった。
NPBとMLBは、同じルールで違うスポーツをしている。
これはよく言われることで、現役バリバリのメジャーリーガーが来日しても、期待したほどには成績を残せなかったりする。
だが直史はNPBと言うか日本の野球に、確かに適応できている。
あと、試合日程を考えれば、肉体的な頑健さは間違いなく、メジャーリーガーの方が優れている。
スポーツの世界は、特に興行のスポーツは、どれだけの量を戦えるかも重要なことだ。
個人競技であれば、ゴルフなりテニスなり、あるいはボクシングなり、ある程度は日程を自分で調整できる。
しかしシーズンがあり、チームに所属する団体競技ともなれば、そうはいかない。
だが野球の先発ピッチャーは、ちょっと特殊ではあるかもしれない。
一週間に一度の出場。
MLBはこれがもうちょっと短い登板間隔であった。
先発ピッチャーは全てのポジションの中で、もっとも試合貢献度が高くなる。
だからこそ先発がそろっていないチームは、何をしても勝てない。
ライガース相手に、レックスは一勝二敗で開幕のカードを終えた。
そして次はいよいよ、神宮での地元開催となる。
相手は同じ東京のチーム、タイタンズ。
距離的に近いだけあって、双方の情報がすぐに知れ渡ったりするあたり、このネット社会でも情報を伝えるのは人間だと思う。
開幕カードを二勝一敗で終えたタイタンズ。
いよいよ直史のシーズンが始まる。
レックスはライガースに三連敗してもおかしくなかった。
それがどうにか防げたのは、MLB参加の3Aでプレイしていたオーガスを、今季獲得していたからである。
ヒューストン傘下であったので、メトロズとの接触はそれほど多くない。
だがスプリングトレーニングの開催地の関係で、大介に投げる機会があったのだ。
そこで軽々と場外まで運ばれて、メジャー昇格が見送られたのが去年の話。
くすぶっていたオーガスは、レックスからのオファーを受けてNPB入りした。
MLBは確かに、メジャーにまで上がれば巨万の富を得るし、拍手喝采を浴びることになる。
だがそのマイナーの生活は、NPBの二軍よりもハードだ。
移動はバスであり、スケジュールもきつい。
年俸が安いというのも、メジャーを諦める理由になったりする。
NPBの球団はかつて、そういうぎりぎりメジャーに上がれない選手を、上手く獲得してきていた。
あるいはメジャーでは衰えが目立つ選手というのを、日本で最後に花を咲かせようとしたりもした。
今のMLBには、NPBで実績を残して、そこからメジャーに上がるというルートが存在する。
ただその前にマイナーである程度の実績を残していないと、やはりメジャーでは通用しなかったりするが。
NPBと違って、MLBでは新人がメジャーに一年目でプレイする確率は、圧倒的に少ない。
それはプロスペクトをじっくり育成しようという、MLBの方針も確かにあるのだが、圧倒的な才能を持っているものからすれば、歯がゆい待遇であったりもするのだ。
そういった、現地での大介を知っていたことが、勝負を避けさせた。
悪いことではない。認めるからこそ、勝負を避けるのだ。
大阪ドームのライガースファンはブーイングの嵐であったが。
三戦目も落としたのは、そういった前日の空気が残っていたからかもしれない。
だが移動に一日をかけて、そして地元開幕戦。
レックスは意識を切り替えて、タイタンズとの対決に臨む。
(大介に一本もホームランは出なかったのか)
直史は軽くだが、大介の打席だけはチェックした。
大介は多くの場合、シーズンの開幕戦で、ホームランを打っては派手な歓声を上げさせていた。
ただ打率が四割を超えているので、バッティングの調子自体は悪くないのだろう。
ランナーがいる場面では、かなり露骨に避けられている。
まあMLBでは、満塁のシーンで敬遠されたのも珍しくなかったので、ランナーがいる時は勝負をしないのが無難である。
お祭り男の本領も、さすがに衰えたということだろうか。
ランナーのいる場面では勝負されないということは、打点も上がっていかないということだ。
ただ打率が四割をキープしている状態では、さすがに勝負に行くのは難しいだろう。
もどかしさを感じているのは、大介本人が一番大きいはずだ。
直史は大介に対する分析は、そこそこでやめておく。
予定がずれない限りは、四月中には当たらない相手なのだ。
まずは目の前の、タイタンズ戦を投げることに意識を向ける。
タイタンズ戦の後は、またもホームでのフェニックス戦。
相手の力量を考えたら、そちらはある程度力を抜いて投げられるだろう。
フェニックスはもう10年以上連続でAクラス入りを果たしていない。
最後にクライマックスシリーズに進んだのは、上杉が故障離脱して、スターズがチーム崩壊を起こした年である。
もっともそれも一年だけで、翌年から連続でリーグ最下位。
これを脱出するのは、かなり難しいと思われている。
強いチームに必要なのは、まずキャッチャーだろうと直史は思う。
ピッチャーを除けば一番試合での貢献率が高いポジションは、キャッチャーであるのだから。
竹中がいた時代は、まだ弱いなりに最下位を防げる年はあった。
彼が早めの引退をしてから、暗黒期が始まったと言ってもいい。
レックスとしてはここで、勝ち星を稼いでおかないといけない。
直史としてはここで、力を温存して勝ち星を稼いでおきたい。
(多分、ある程度の点差が開けば、早めに交代することもあるはずだ)
全力を出すのは、それこそパーフェクトが狙える試合にすべきであろう。
重要なのは勝ち星を稼ぐことと、いい投球内容を残すことだ。
クオリティスタートはなんとしてでも維持する。
7イニングまでなら今の直史でも、ほぼ相手を抑えることが出来る。
体力という有限のリソースをどう配分するか。
それが一度は引退し、体力上限の低下した直史が、考えなければいけないことである。
先発の前夜、直史はホテルの部屋でタイタンズの、打線の復習などをする。
(それほど強くはない、と思う)
MLBに比べれば、強打者は少ない。
だが巧打者は多いのが、NPBであると言える。
単純なフィジカルで勝負するのではなく、アマチュア時代から蓄積した技術でもって、点を取るためのバッティングを行う。
チームバッティングの意識が強いのが、NPBの野球なのだ。
(するとやっぱり、大介は二番には置かない方がいいのかな?)
タイタンズのことを考えていても、すぐにライガースの、大介のことを考えてしまう直史であった。
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