第14話 スタイルの選択
人生は選択の連続である。
その選択の中でどうしても、捨てざるをえなかったものがある。
直史にとって今、捨ててはいけないもの。
それは約束の達成である。
かつての自分のスタイルや、過去の実績、また一試合あたりの平均数値など、そんなものはどうでもいい。
敗北すらも重要視する必要はない。それこそ大介との対決を避けることも考えていいのだ。
そういった全てのことの反対に、直史にとって大切なものがあるのだから。
(このピッチングをシーズン通して出来れば、完投も10試合ぐらいは出来るか)
そうは思うが、明日以降の疲労がどうなっているか、回復度合いを把握しなければいけない。
中六日で投げることは、さすがに決まっている。
今の基礎体力で、中五日などで投げるのは無理があるのだ。
(あとは首脳陣がどう判断してくれるか)
投げる試合は、おそらく25試合前後。
その中でライガースの試合は、少なければ少ないほどいい。
スコアは3-0であるが、そのスコア以上の完璧な勝利と言えた。
わずかにヒット一本、そしてエラーが一個に抑えたので、またもパーフェクトが狙っていける。
タイタンズの打線の得点力は、セ・リーグでは現在一番ではないか、とまで言われているのだ。
だがオープン戦から既に、ホームランを当たり前のように打っている大介のいるライガース。
全体的な攻撃力ではなく、突出した一人のバッターがいることの方が、直史にとっては問題なのだ。
ただそれは、パーフェクトの達成を考えたときの話。
過去の沢村賞受賞者の中に、どれだけパーフェクトを達成しているピッチャーがいるというのか。
当の直史や、あとは上杉は例外として、ほとんどいないだろう。
一試合だけ完璧なピッチングをするのと、年間を通じて安定したピッチングをするのは違う。
20試合をハイクオリティスタートで投げれば、だいたい16勝ぐらいは出来る。
そして防御率も2点台の前半にはなるだろう。
残りの試合は、勝ったり負けたりしても、勝率には問題はない。
目的を間違ってはいけない。
開幕に向けて完全に復活か、という論調でマスコミは報道した。
実際にワンヒットワンエラーというのは、ほとんどノーヒットノーランに近い。
ただ直史としては、外野にフライをそれなりに打たれているのが気になった。
わずかに弾道が低く、そして落ちるところが悪ければ、それなりにヒットになっていたであろう。
結果オーライと言えるのは、レギュラーシーズンに入ってからだ。
今はまだ、色々と試している段階と言える。
完封の翌日、目覚めた直史が感じたのは、体の重さであった。
試合後にストレッチもしてマッサージも受けて、風呂にもゆっくりと入ったにも関わらず、疲労は回復し切れていない。
(酸素カプセルにでも入るしかなかったか?)
それでも一般的な先発翌日のように、ジョギングなどをしたりもしてみた。
昔は100球どころか、150球を投げても次の日に、それなりのピッチングが出来たものだ。
やはり回復力の低下は、加齢によるどうしようもないものなのか。
だが五年以上のブランクを、半年ぐらいで埋めようという方が、甘い考えであったのかもしれない。
体を野球用に作り直す。
果たして体の細胞が、入れ替わるのはどれぐらいの時間が必要だったろうか。
沢村賞のために、数試合は完投する必要がある。
その試合は打たせて取ることを意識して、失点することも覚悟しておくべきだろう。
なんとか二失点以内には抑えたいが、こちらの得点が何点取れるか、直史はもう貢献することは出来ない。
自分に出来ることは、投げることだけだ。
(リーグを間違えたか?)
今更なことを直史は考えていた。
スタイルの変化を、周囲が認識しつつある。
直史は元々、変幻自在と言うか、無形のスタイルを持つピッチャーである。
なんでも出来るので、その中にはストレートを多用するピッチングをした試合などもある。
それでも基本的には、変化球を引っ掛けさせたり、緩急でスイングを狂わせたりと、技巧派の面が大きかった。
だがオープン戦が始まってから、明らかにその内容は本格派のものとなっている。
ここまでしっかりと成績を残せているのは、単純な実力のためだけではない。
対戦する相手が、直史の過去の幻影に囚われているからだ。
いつ変化球を主体に投げてくるか、それが気になっている。
何よりスルーを一度も投げていない。
スルーも重要な変化球だが、実際に対戦した強打者の多くは、むしろスルーチェンジを脅威に思っている。
あれは本当に、ブレーキがかかったように失速し、さほど球速が落ちているわけでもないのに、とてつもなくタイミングを合わせるのが難しい。
そしてさらに、スルーよりも明確に落ちるのだ。
同じピッチトンネルを通っているにも関わらず、だ。
スルーもスルーチェンジも、投げていないのではなく投げられない。
そう仮定するならば、バッターボックスの打者は、対応をある程度絞っていけばいい。
そもそも決め球のストレートでさえ、全盛期よりはずっと落ちている。
これに何も出来ないほど、NPBの分析班は無能ではないのだ。
ブルペンコーチの豊田の仕事は、一番重要なのはリリーフ陣の管理である。
だがそのためには、ブルペンに入る中継ぎと抑えだけではなく、先発ピッチャーの調子もしっかりと把握しておかなければいけない。
去年、直史はノンプロのチームを相手に、完封を果たしている。
しかしノンプロの一流チームであっても、プロの一軍とはやはり違う。
100球以上も投げたが、球数の問題ではないのだ。
カーブをそれなりに抜いて投げていたため、単純に肩肘の消耗はそれほどでもないだろう。
だが直史の自己申告で、今日は本当に軽いキャッチボールだけということになった。
キャッチャーを立たせたまま、20球ほども投げて、指先の感覚を戻したところであとは他のメニューに移る。
今日も試合自体は、またタイタンズ相手に行われるのだ。
やっぱり人間なんだな、と豊田は当たり前のことを確認する。
高校時代の直史は、既に何か人間とは思いにくい存在であった。
最初に対戦したときは、二年の春。
その時点で既に、甲子園デビュー戦をノーヒットノーランで飾った、派手な登場をしていたが。
基本的には無口であるというか、冷たい印象を与えた。
だが夏に、再戦した時は違う。
延々とアウトを取り続ける機械。
そんな恐ろしい存在と、二年連続で夏の甲子園で対戦した。
特に圧巻であったのは、最後の夏だ。
15イニングを投げて一人もランナーを出さないなど、どこか人間としておかしいものだとさえ思えた。
その後にはプロで同じチームとなったので、頼りになるエースではあった。
果たして人は、自分より優れた人間に、教えることが出来るのか。
豊田としては自信などないが、少なくとも見守ることは出来る。
もっとも直史の自己管理の徹底具合は、昔からよく分かっていたが。
現在のレックス首脳陣は、勝つことだけを考えているメンバーではない。
もちろん勝てばいいことは間違いないのだが、負けても問題はないとさえ考えている。
重要なのは興行的な問題だ。
勝つチームというのはもちろん、人気が高まってくる。
だが球団経営としては、しっかりと利益を出していかなければいけない。
今の監督である貞本は、GMからその話を聞いている。
これがMLBなら、GMの役割はそこまでのものではない、ということになるのだろう。
チームを強化するための資金を親会社に出してもらい、チーム作りを行う。
そして現場に勝ってもらうのが、GMの役目だ。
ただレックスは黄金期の後に、それを演出した主力が引退や移籍したため、人気が急落した。
同じ東京で、タイタンズという他のチームがあること、在京圏まで広げれば他にもチームがあることが、ファンの選択肢を増やしている。
そんな中で資金も潤沢でないレックスが、一軍最低年俸で、直史と契約することが出来た。
ならば出来るだけこれを活用しなければいけない。
「最初のカードのライガース戦は、アウェイの試合だからな」
「ホーム開幕戦の第一試合に、持って来た方が動員は見込めるだろう」
これが監督室でなされた会話である。
豊田は今の直史が、以前に比べれば相当に、衰えているのが分かる。
ただそれは別として、今のレックスの首脳陣は、指揮官と言うよりは経営者だなと思うのだ。
年齢的に頭が固いというのもあるだろうが、それ以上に親会社やGMに従順。
それ自体は社会人であり、また立場もあるから悪いとは言わない。
だが本当に利益を出すなら、まず勝てばいいのだ。
監督のマインドが選手に伝染したら、プレイは無難なものにしかならない。
以前のレックスを思い出すと、悲しくなってくる次第だ。
黄金時代のレックスというのは、実は直史がいた二年間だけではない。
あのチームを作り上げたのは樋口だと、バッテリーを組んだ豊田には分かっている。
それまでずっとBクラスが長かったレックスを、一年目途中から正捕手の座を掴み取り、Aクラス入りを達成。
その後は武史が入ったことも関係しているが、レギュラーシーズン自体は三連覇。
そして直史が加入して二年連続日本一となり、直史が移籍した翌年も、日本一となって三年連続レギュラーシーズンと日本シリーズを制した。
樋口が抜けてから一気に、レックスはBクラスの球団となった。
キャッチャーはピッチャーの次に試合貢献度が高いと言われていて、そしてピッチャーと違い毎試合出ることが可能だ。
武史と、その後の直史の成績が目立つが、あの時代のレックスは樋口のチームであった。
一番重要なピッチャーをコントロール出来るのが樋口であったのだ。
(またユニフォーム着てもいいだろうにな)
MLB移籍後に向こうで引退した樋口は、もうほとんど野球の世界に関わってくることがない。
そもそも現役時代から、球団に対する愛着などはなかったと思うが。
それこそコーチ陣に、樋口を招聘してほしい。
むしろ監督をやってほしいぐらいだし、樋口なら上との交渉も出来るだろう。
そのあたりの腹芸は、豊田には出来ないことだ。
このミーティングにしても、豊田の発言権は低く、事実確認程度にしか意見を求められることがないのだ。
完投後一日目、直史はある程度体を動かしはしたが、その後は完全な休養にあてた。
体力の回復に、肉体の損傷の治癒。
ピッチャーというのは投げるだけで、指先の毛細血管が切れてしまったりする。
そういったものを次のローテまでに回復させなければ、ローテーションピッチャーにはなれない。
もっとも最高のパフォーマンスを発揮し続けるのに、どれだけの休養が必要か。
レックスのストロングポイントは、とにかくリリーフ陣なのである。
「レックスのリリーフ陣はわしが育てた」
豊田はそんなことを内心では思うが、選手の才能が開花するかどうかは、本人の力が一番大きい。
それが変な回り道を行っていないか、そして何より故障しそうな投げ方をしていないか。
回り道を進むことが、絶対に間違っているとも言えない。
二日目、直史はまだ調子が戻らない。
スパイクを脱いだシューズで、グラウンドの外野を走っていたりする。
しっかりと食事をしてから、仮眠をしていたりする。
肩や肘が重いということはなく、体全体が重いのと、そして背中が張っていたりする。
なので練習よりも、柔軟やストレッチを念入りにしているが。
練習後のマッサージをうけていると「あ゛~」というような声が聞こえてきたりする。
おっさんの姿を見せているが、チームにはいい影響を与えていた。
ブランクのあるロートルピッチャーというのが、選手間の見方ではあった。
確かに今のレックスの選手は、おおよそが直史の引退前の試合を見ている。
それこそ野球をする動機になった選手も少なくはない。
だからこそ逆に、衰えた姿など見たくはなかった。
そんな彼らに対し、直史が見せたピッチングは刺激的ではあったのだ。
オープン戦終盤、チームの状態自体が上がってきている。
直史には地元開幕戦を、投げてもらうことに決定した。
(アウェイでライガース相手に投げるのは、シーズン復帰戦では苦しかっただろうしな)
それに三月下旬の試合であると、甲子園ではセンバツが行われている。
あそこ以外の場所では、やはり神宮がいい。
直史は高校大学と、野天型の球場で投げてきた。
そしてMLBの球場も、ほとんどは野天型である。
体が野天型に慣れているとでも言おうか。
するとドームの少ない、セのチームに戻って正解だとは思う。
もっとも神宮はそれなりに、ピッチャー不利の球場ではあるが。
試合後四日目には、なんとか調子も戻ってきた。
もうオープン戦での登板は短いイニングを投げ、あとはレギュラーシーズン突入と説明を受けている。
開幕カードには投げず、地元開幕の初戦で復帰後レギュラーシーズン初登板。
相手はまたもタイタンズである。
今年の試合スケジュールを、とりあえず四月分を確認する。
四試合目の地元開幕戦に投げると、なんと四月にはライガース戦に登板することがない。
もちろんこれはローテーションが上手く回ればの話だが。
(けれど五月は、二試合対戦予定か)
そう都合のいいスケジュールにはならないのだ。
オープン戦は勝率六割で終了した。
あくまでもオープン戦であるが、勝率六割を維持すれば、例年であれば優勝が現実的だし、少なくともクライマックスシリーズ進出は確定だ。
ただこれは選手の調子を見つつ、起用も色々と試した上での結果である。
純粋に勝つためだけの采配を振るったものではない。
そこを勘違いすれば、レギュラーシーズンで最下位に沈むこともある。
とりあえず直史は、シーズン中の生活について、マンションはそのままに、都内のホテルで生活することにする。
何より重視したのは、移動時間である。
この年齢になってくると、人生において最も価値のあるものは、金ではないようになってくる。
若い頃などは時間を安売りして、金銭を得ていたりするものだが。
現在の直史の資産なら、ビジネスホテルではない真っ当なホテルに宿泊していても、財産が消えることはない。
それよりも移動の時間を、どれだけ他に回せるかが、重要なことなのであった。
瑞希はマンションとこのホテルを行き来しつつ、仕事にも向かう。
彼女だけでは大変なので、定年を迎えた直史の母や、瑞希の母が子供たちの面倒を見るためにマンションの方を訪れる。
この二人はさすがに身内なので、直史の投げる理由を知っている。
明史の条件を聞いた時には、あの賢い子がどうして、そんな変な話を持ち出したのか分からない、と異口同音に発したものだ。
直史にはだいたい分かっている。
明史は知能指数が高く、また性格も大人びている。
ただ対人関係においては、交流手段に制限があったため、やや歪なところがある。
子供が親に求める、どれだけ自分を愛してくれているかの確認。
それをやっているだけだろう、と直史は思っている。
いつ死んでも分からないし、大人になれるか難しい。
そんな息子のために、自分が示すべきは挑戦する姿であろう。
そういったことを言葉で説明するのは、直史は避けた。
息子の感情を勝手に推測して言語化するのは、本人にとって気恥ずかしいものであると思ったからだ。
(こっちは、条件を果たすのみ)
男親は言葉よりも、背中で語り力で守る。
そういうものだと直史は思っている。特に息子に関しては。
いよいよペナントレースが開幕する。
レックスは最初のカードがライガースとの三連戦。
これで舞台が甲子園ならな、と大介あたりは考えていそうだろう。
直史は東京に居残りである。
第四戦の先発が決定しているため、一軍に帯同して移動しない。
ライガース戦を軽視しているのではなく、地元開幕を重視しているのだ。
直史としてはありがたいことである。
移動の時間が少なければ少ないほど、体力の回復に時間が取れる。
練習とトレーニングをしている時以外は、対戦相手の分析。
そして何より休養である。
成長のために必要なのは、運動、食事、休養の三つのバランスだ。
直史はもう成長することはないし、むしろある程度の状態に戻しただけでも、充分に驚異的なことである。
だが全盛期には比べるべくもない。
エース扱いされるのは、むしろありがたくない。
相手チームの二番手三番手と対戦して、勝ち星を稼いでおきたいのだ。
沢村賞の選考基準に、完投の数が入っている。
この間のオープン戦、内容的には素晴らしいと言えるのだろうが、ペナントレースはそのパフォーマンスを維持しなければいけない。
テストで言うなら一科目だけを満点取るより、全科目80点を目指す。
その方が総合的には、いい成績となるのだ。
大阪での開幕に向けて、直史が帯同していないのは、すぐに分かることである。
これをもってしてレックスは、直史をどう評価しているのか、分かるつもりになる。
だが実際には、復帰初戦をホームゲームで行いたいという意図があるのだ。
ライガース戦で投げさせるより、タイタンズ戦で投げる方が、同じ東京のチーム同士ということで、観客動員も増えるだろう。
この数年チケットの売り上げがいまいちなレックスとしては、チームの成績ではなく、球団の経営の問題が先に来る。
大学時代から直史は、神宮で活躍していたピッチャーだ。
古い野球ファンまでも、これには殺到してくるだろう。
直史は一度疲労を抜いた後、また肩を作っていく。
今のレックスの状態からすると、センターラインの守備を、ある程度はピッチャーも守らなければいけない。
だが直史はブランクがあるので、強い打球をキャッチするのは、昔に比べると難しくなっている。
打たせて取るためには、ムービング系のボールが必要だ。
しかしそれが上手く変化しない。
指先の微妙な感覚というのは、やはり戻らないものだろう。
大きく曲がるスライダーを投げてはいるが、これはかなり意識的にスピンをかけているもので、昔のようなコントロールはない。
どうやって投げていたのか、自分のことであるのに自分で分からない。
知識としてではなく、感覚として記憶する。
それが上手く引き出せないのだ。
ほしい球種はツーシーム、カットボール、スプリットの細かく動く速球。
それが投げられるなら、球数を大きく減らすことが出来るだろう。
今の直史にとっての生命線は、カーブになっている。
カーブとストレート、あるいはチェンジアップとストレートのコンビネーションで、バッターから三振を奪う。
難しいことのはずであるが、これが一番効果があるのだ。
大阪での開幕に向けて、レックスの選手たちが東京を発つ。
なんともおかしな感覚だな、と残された直史は思った。
MLBでは基本的に、ピッチャーは全試合に帯同する。
ロースター入りの人数と、ベンチ入りの人数が同じであるからだ。
NPBの場合はそれが違い、ロースターに入っている先発ピッチャー三枚は、ベンチには入らない。
先発はそうやって、体を回復させる必要があるからだ。
開幕戦に向けて逆算しながら、体を仕上げていく。
結局開幕までには、直史の想定していたところまで、ピッチングの内容は戻らなかった。
球速が以前よりも落ちたのに、それでもストレートで三振を奪う。
またフォームにしても、実は完全に効率のいいフォームではない。
それでも三振を奪うためには、このフォームが必要であるのだ。
深く踏み込むストレートは、前よりも足腰に負担がかかる。
この下半身の負担が、疲労の主な原因である。
あとは肘を少しでも落として、リリースポイントを低くしたい。
そうすることでボールの軌道は、ホップするものに近くなっていく。
ストレートが決め球になるなど、高校時代の自分が聞いたら笑っていたであろう。
だが野球を始めて20年以上も経過して、ようやくストレートを主体としたピッチャーになった。
何かの冗談のようであるが、これが本当だから訳が分からない。
レックスの室内練習場で、直史は投げ込みをする。
上半身はもう、下半身の力をボールに伝えるための、途中の経路に過ぎないという感覚。
肩や肘に負担をかけていてはいけない。そう考えていることが、変化球が変化しない原因になっているのかもしれないが。
(150km/hになんとか届けば、かなり楽なコンビネーションが使えるんだが)
しかし今は、球速ではなく球質を求める。
黙々と投げ続ける、多くの伝説を残したピッチャー。
その姿が与える影響は、じわじわと広がりつつあったのである。
第一章・了
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