第11話 オープン戦

 全盛期の自分を100としたら、今はおよそ70ぐらいであろうか。

 直史は適当にそんなことも考えていた。

 実際は10かもしれないし、90かもしれない。

 100になっていないのだけは確かだが、ピッチャーというのは結局、実際にマウンドで投げてみないと分からないのだ。

 それも練習試合やオープン戦などではなく、プロのレギュラーシーズンのリーグ戦においてだ。


 結局はその日、マウンドに立ってみないと分からない。

 ピッチャーというのは究極的にはそういうものなのだ。

 直史はそれを、かなり安定させることが出来ていた。

 この安定感こそが、最大の特徴であるとも言えるだろう。

 そして安定していない時は、すぐさまそれを修正する。

 この修正能力も、直史は際立っていたと言っていい。


 フィジカル的な面では、直史を上回る選手は何人もいる。

 だがメンタルも含めた、コンディションコントロールが、直史は傑出して上手かった。

 これは下手にフィジカルに自信があるため、おざなりに日常を過ごしている選手では身に付かないことである。

 要するに普通なら、天才はどこか驕ってしまうものなのだ。


 ここで驕らない人間というのは、よほど精神修養を極めたものか、もしくは底抜けの野球馬鹿だけである。

 どんなことであっても、楽しんでいるのが一番、上達は早い。

 人生の第一を野球に捧げてしまった者。

 その意味では武史などは、精神修養もしていないし、野球馬鹿でもなく、純粋に野球に対して醒めているからこそ、普通に野球に取り組んでいるという、珍しいタイプの天才であるだろう。樋口もこれに近い。




 自己分析をするのはともかく、直史はいよいよ投内連携などの練習も終えて、オープン戦の紅白戦に入っていく。

 試されるピッチャーはたくさんいるので、一試合全てを完投することはまず考えられない。

 ただ直史はほんの少しだけ、わがままめいたことは言ってみた。

 先発として登板させてもらえないだろうか、というものである。

「まあ、最初の試合はそれでいいんじゃないか?」

 監督の貞本が、特に興味もなさそうに、そんな言葉を返した。

 一応は他のコーチにも目を向けるが、反対の声は上がらない。

 大賛成というわけでもなかったが。


 直史は先発でもリリーフでも、どちらでも実績がある。

 特に国際大会などではリリーフの印象が強く、完全無敗を誇っている。

 だが一度目の引退をするまでは、とても現代野球では考えられないような、完投能力を持ったピッチャーであった。

 なので復帰後もまずは、先発で使う方針ではあったのだ。

 本人もそのつもりなら、試してみようと思うのが普通である。


 直史としてはさっさと先発としての力を見せて、リリーフに回されないようにしたかった。

 沢村賞はサイ・ヤング賞と違って、先発ピッチャーに送られるものだからだ。

 実際にサイ・ヤング賞はわずかながらクローザーも獲得しているが、沢村賞はそんな例外はない。

 先発完投型という、今ではもう絶滅危惧種となったピッチャーに、与えられるものであるのだ。


 もっともその選考条件は、それなりに時代と共に変化している。

 今のプロ野球は球数制限は当たり前であり、七回以降はリリーフ陣が〆るという形を取っていることが多い。

 体力的に衰えた直史としては、ありがたい傾向ではある。

 それでも数試合は完投がなければ、対象者なしということもありうるのだが。


 正直に言ってしまえば、沢村賞に選ばれるピッチャーは、確かに凄いピッチャーだ。

 だが選ばれたピッチャーが本当に一番すごい先発であったかというと、それはちょっと違うだろうと思われる。

 防御率が2の前半であったとしても、勝ち星が全く積み上がらなければ、条件を満たさなくなる。

 勝つか負けるかなどというのは、ピッチャーだけの仕事ではない。

 味方の援護がなければ、少なくとも一点は取ってくれなければ、ピッチャーの力だけでは試合には勝てない。

 事実直史は、援護がなくて勝ちが付かなかったという試合がそれなりにある。




 現在のレックスは、先発ローテーションが安定していない。

 それに比べるとリリーフ陣は、まだしもいいと言えるであろう。

 パンチ力がそれほどではないので、どうしても投手と守備で失点を防ぐ必要が出てくる。

 そういう条件で豊田がやっていることは、相当に貢献度は高い。

 ブルペンのリリーフ陣を、上手く見極めているからだ。


 直史も全試合完投、などということにはこだわっていない。

 25試合も投げたら、10試合ほど完投すれば、それで充分なのがこの数年のNPBだ。

 そもそもNPBのピッチャーの上澄みは、MLBに移籍することが多いというのもある。

 日本のピッチャーは世界一の層、などとも言われたりする。

 実際のところそれは、間違いでもないと直史は思うのだが。


 先発ローテの中で計算できるのは、直史と青砥を除けば、他には一人ぐらいである。

 あとは助っ人外国人を含めても、調子がよければどうにか、というぐらいのピッチャーが多い。

 そして上手く終盤までリードしていれば、リリーフ陣がなんとかするというわけだ。

 そのリリーフ陣が休むためにも、直史の活躍は期待されている。




 キャンプが始まれば首脳陣は、開幕を誰に先発させるかということも、当然ながら考えていくものだ。

 実績から言えば直史なのだが、さすがにあまりにもブランクが長すぎる。

 今のレックスのエースは、25歳の左腕である三島。

 去年も13勝を上げていて、チームの中では一番の勝ち頭であった。

 レックスの先発の中では、他の指標もおおよそはトップとなっている。


 正直なところエース格であると、相手チームのエースに当てられる場合が多いので、二番手ぐらいで丁度いい。

 直史には打算がある。

 開幕戦にエースを使わず、引退間近のピッチャーの花道にしたという例もあるのだ。

 レギュラーシーズンの優勝を見据えて対戦するなら、そういった戦略も必要になってくるだろう。

 まず直史としては、ローテーションに相応しい実力は示さないといけない。


 左打者相手は、やはりツーシームまたは高速シンカーがないと厳しい。

 逃げていく球が、ないからである。

 チェンジアップを上手く投げたら、落ちながら逃げていく軌道になることはある。

 だが高速のツーシームはアウトローに投げれば、打たれてもまずファールになるボールだ。

 遅いシンカーであると強打されれば、上手くフェアグラウンドの中に飛ばされてしまう場合もある。


 それでもここでは、上手く緩急で打たせて取った。

 オープン戦だからということもあるだろうが、まだバッターの方も仕上がってきていない。

 投げてくれるピッチャーがいないと感覚が狂うバッターに対して、ピッチャーは自分一人でもそれなりに仕上げられるという点で違いはあるが。

 結局初回の攻撃は、三振なしで上手く打たせた。

 オープン戦での仕上がりで、レギュラーシーズンの予想をするのはもちろん危険ではあるのだが。




 3イニングを投げて被安打二なので、まずまずの内容と言えよう。

 ただエラーが絡んで失点を許している。

 かつてのレックスは投手だけでなく、守備も堅いものがあったのだが、やはりチーム全体が雑と言おうか。

 ショートの緒方がいるので、内野はそれなりに回るのだが、彼もかつてに比べれば守備範囲が狭まっている。

 あとはサードに打撃に振り切った選手を入れているのも、問題ではあろう。


 緒方は確かに名手ではあるが、直史の二歳年下である。

 それがいまだにショートのレギュラーポジションというのは、かなり問題があるのではないか。

 もっともショートは大変なポジションであるし、緒方は打撃もそこそこいい。

 これに下手に若手を試すと、内野守備が崩壊する可能性もある。

(左右田をショートの後釜に考えてるのかな?)

 直史の考えでは、身体能力に優れた左右田を、ショートとして育てる。

 緒方は上手く状況を把握しているので、セカンドを守らせた方がいいのではないか。


 もちろんこれらは全て、首脳陣が考えることである。

 ただその首脳陣の中の一人である豊田は、直史に対して気安い。

「どうだった? 久しぶりの試合形式のピッチングは」

「相手がうんぬんじゃなく、自分の体が動かないのが辛い」

「まあ若い頃のようにはいかねえだろ」

 こうやって同年代と話していると、なんだか昔に戻ったような気がしてしまうのも不思議な話だ。


 先発のローテを回せるピッチャーというのは、かなり難しい問題だ。

 これよりはクローザーを除く中継ぎの方が、ある程度は運用しやすい。

 若手をどんどんと試していく、というのも一つの手段だ。

 プロはある程度、通用しない選手が出てくるのが当たり前なのだ。

「先発があと二人は固定出来てないだろ」

「そうなんだよな」

 キャンプの間にその程度は、直史も分かっているのだ。




 今年のレックスの新人は、基本的に大卒や社会人が多い。

 去年までの戦力では足らないし、FAや外国人で大物を取ってくることも出来なかったからだ。

 いや、因果関係としては逆で、即戦力を取ったからこそ、FAや外国人は動かなかったと言うべきか。

 この数年の成績不振で、観客動員なども下がり、球団が貧乏であったということはある。


 ここに少し、直史の不安要素がある。

 中六日で投げる先発でなく、クローザーの方が出る試合数は多くなるからだ。

 もっとも負けている試合や、大差で勝っている試合などは、クローザーは必要にならない。

 するとやはり登板の間隔がおおよそ予想できる、先発の方がいいかもと思うかもしれないが。

 そこいらは広報なども含めた、現場よりもさらに上の判断が、現場を縛るかもしれない。


 豊田としては直史には、他のピッチャーをまとめる役割を果たしてもらいたい。

 直史自身は率先するタイプではないが、なにしろカリスマ性が違う。

 それに意外と親切なところがあるのは、豊田自身も体験していることだ。

 もっともあれは樋口とのコンビがあったからこそ、成立していたものかもしれないが。

 直史にかつてほどの余裕を感じない。

 レギュラーシーズンが始まれば、すぐに40歳を迎えるロートルとしては、むしろ当たり前なのかもしれないが。

 直史らしくはないな、と豊田は少し感じていた。




 ベテランと若手では、練習内容もトレーニングも変わる。

 育成段階と即戦力でも、やはりそういったものは違う。

 直史ぐらいの年齢で、そしてピッチングスタイルであると、ピッチングコーチが教えることが出来ない。

 ただオーバーワークにだけは気をつけるのみであるが、それもまた直史は、淡々と地味なトレーニングも繰り返している。


 やらなければいけないことを、当然のようにやる。

 そんな直史が一番注目しているのは、やはりキャッチャーである。

 オープン戦で組むこともあるし、投球練習でも組む。

 そして誰をキャチャーにするべきか、自分なりには考える。


 正直なところキャッチャーとしての能力は、新人の迫水も含めてそれほどの差はない。

 だがバッティングに関しては、この新人が相当の貢献をしてくれることは明らかであった。

 あの練習試合の後、壮絶なまでにバッティングの調子を落としたらしいが、新人合同自主トレなどを経て、かなり調子を戻してきている。

 何よりもシートバッティングで、直史に打たせてもらっているのが大きいような気もする。


 そんな迫水は当然のように、直史に対して質問をしてくる。

 旧知の間柄以外で一番ぐいぐいと来るのは、この迫水であろう。

「あのストレート、どうやって投げてるんですか?」

 ブルペンでは問題ないが、試合形式の場合であると、何度かミットからこぼしてしまった。

 気にするのは当然であろう。

「あれか」

 直史としても、これは説明の必要がある。




 ストレートの性質を決めるのは何か。

 球速が一番分かりやすいが、球速だけでは空振りしない、というのも分かってきている。

 あとはホップする球、というものもある。

 これはボールのスピン量と、スピン軸が関係している。

 ここまではよく知られていることだ。


 あとはフォーシームストレートで投げること。

 縫い目が空気との摩擦で受ける影響は、実はそれなりに大きい。

 ここら辺の常識で言えば、直史のストレートは、綺麗なバックスピンストレートとは言えるだろう。

 だがそれではまだ、ストレートの秘密にたどり着いたことにはならない。

 教えてしまったとしても、特に問題はない。

 ただ懇切丁寧に教えるというのも、思考力を低下させるだけのような気もする。


 なので直史は、端的に言った。

「角度だな」

 迫水はああ、と納得したような表情を一瞬浮かべたが、すぐにまた違う疑問が浮かぶ。

「けれど、どうやって?」

「それは他のピッチャーと比較したり、フォームのチェックをしたりして、自分で調べた方がいい。他のチームのピッチャーの攻略にも、絶対に役に立つからな」

 そう、迫水はバッティングを評価されているキャッチャーなのだ。


 難しい顔をする迫水であったが、具体的な方法まで全て教えてしまえば、その情報が洩れる危険性もある。

 もっともわざわざ説明しなくても、大介には分かっていたようだが。

 直史が到達した、変化球としてのストレート。

 それは言語化出来るが、別に新しいことを言われているわけでもないのだ。


 MLBでは既に多く評価されているが、これはまた別の点からすると、ものすごい古い時代の技術でもあるのだ。

 もっとも昔は角度と言えば、上から投げ下ろすという、間違った認識が通用していたようであるが。

 それはそれでまた、違ってはいるが正しい解答でもあったりする。

 調べようと思えばこれも、調べられる知識ではある。

 だがその知識を正しく応用するのは難しい。




 知識というのは武器である。

 だが単純に知識があっても、理解していなければ無駄なことである。

 たったの一行や二行で説明される文章の背景には、膨大な知識を前提としたものがあったりする。

 直史は角度といったが、これは上下の角度と左右の角度のどちらか、というのもあるだろう。

 はるか昔から使われるクロスファイアーという左右の角度もあるが、直史の使っている角度は上下の意味である。


 高身長であることを利用した、上から投げ下ろす。

 これは昔はよく言われていたが、実際はほぼ意味がない。

 なぜならリリース位置は、前であれば前であるほど、ボールには力が伝わり、タイミングが取りにくくなる。

 そうするとボールは、自然と低い位置でリリースすることとなるからだ。


 ストレートの軌道を考えてみれば、ボールは下から投げた方がいい。

 その方が角度は、より落ちないボールとなる。

 アンダースローは全てのボールが魔球となる。それが打ちにくい理由である。

 直史の場合はまさに、これを意識したボールとなっている。

 より深く踏み込み、より前でリリースすることによって、その軌道は地面と平行に近くなっていく。

 結果的にはホップ成分がなくても、ホップしているような軌道になるのだ。


 またホップ成分を含んだバックスピンストレートは、空気抵抗自体は強く受ける、という理屈にもなる。

 そういったいいストレートとは別の、角度で勝負したストレート。

 ヴァーティカル・アプローチ・アングル(VAA)と呼ばれる理屈で、直史のストレートは評価すべきであるのだ。

 ちなみにこれが最も強い威力となるのは、高めに意識的に投げたストレートである。

 低めのストレートが浮くのではなく、最初から自信を持って投げた、高めいっぱいや少し外れるぐらいのストレート。

 これはバッターからしたら、甘い球に見えてしまうこともある。




 誰かに教えるということは、自分が最も勉強をしなければいけない。

 1のことを教えるためには、少なくとも10のことを知らないと、その深い部分までは教えられないものがる。

 ただ教える立場の人間というのは、自然と驕ってくる場合が多い。

 それでもたとえば数学のように、不変の定理を教えるのなら、ある程度は簡単なのかもしれない。

 受け取るレベルに合わせて、進行を進めていくという問題はやはりあるが。

 だが野球のピッチングなどというものは、体格などによって明らかに最適解が人それぞれに違う。

 一人の選手を100点に育てるよりも、10人を90点に育てる方が難しい。


 直史としてはだから、原理などは教えることが出来るが、結局は自分で試さなければどうしようもないと思っている。

 そしてそれは正解であろう。

 オープン戦が始まる頃には、直史が孤高の存在であるというのも、ようやく薄れてきている。

 特にシートバッティングなどでは、練習したい通りのボールを投げてくれる存在であるのだ。

 ストレートのコマンド能力と、カーブの緩急。

 このあたりだけでも、充分すぎるほどの勉強になっている。


 そして結果的にではあるが、直史はコーチである豊田をも教える立場になっていたりした。

 このシーズン、直史は自分がそれほど多くの試合で、完投できるとは思っていない。

 そこで勝ち星を稼ぐのであるなら、ブルペン陣の強化は必須であるのだ。

 直史は国際大会などでは、決勝戦でクローザーを務めるなど、修羅場でのピッチングに慣れている。

 もっともそれを含めてプレッシャーに強いというのは、それこそ負けても死ぬわけでもない、という開き直りの要素が大きいのだが。


 MLBを経験した直史としては、日本人が真面目すぎる、という意味が分かってきている。

 これはいい面もあるので、全否定するわけではない。

 ただ文化的なものとして、日本では慎重に行って、失敗を防ぐことを重視する。

 リスクをあまり取らない文化と言うべきか。

 この点アメリカは、失敗経験をあまり恐れない。

 実際のところ日本でも成功者というのは、失敗しなかった人間よりも、失敗してもそこからまた挑戦した者が圧倒的に多いのだ。




 直史の言葉の意味を、迫水はある程度理解したらしい。

「VAAですか」

 こういう時にすぐに調べられるあたり、野球は分析と統計のスポーツと呼ばれる由縁であろうか。

「そうだな」

 直史もそこまでなら、すぐに分かるだろうと考えている。

 いいか悪いかではないが、NPBにおいてはキャッチャーは、かなりの頭脳職であるのは間違いないのだ。


 VAAとはヴァーティカル・アプローチ・アングルの略で、投球がホームプレートを通過するときの角度のことである。

 ピッチャーは高いマウンドのから投げ下ろすので、基本的に角度はマイナスになり、フォーシームの場合は−4°から−7°の間になると言われている。

 これが0に近いほど、バットはボールの下を通過しやすい。

 いわゆるライジングファストボールに近くなっていくのだ。


 直史のストレートは、いわゆる球持ちがいいストレートとなるので、リリースの瞬間には地面からの距離が小さなものとなっている。

 さらにフォームの改良によって、上から投げ下ろすという要素を極力省いている。

 可能な限り地面と平行な軌道にすれば、比較してホップするように見える。

 このあたり140km/h台で空振りが取れるピッチャーの、特徴と良く似ているのだ。


 直史が現在使っている主な変化球は、カーブとチェンジアップ。

 どちらも落ちる球か、沈む球のどちらかである。

 そしてアウトローに外す時などは、あえて普通のストレートに近づける。

 また高めに分かりやすく外す時もだ。

 主に二種類のストレートを使い分ける。

 これは純粋に、普通のストレートとチェンジアップを拡大解釈したものに似ている。




 実のところ高めのストレートが、日本でも通用するかというのは、微妙ではないかと直史は思っていたことがある。

 日米の野球を比べると、日本はまだレベルスイングが多かったからだ。

 フライボール革命はアッパースイングにつながっていると思われているかもしれないが、実はアッパースイングというわけでもなく、打球の角度をバレルと呼ばれる範囲にすることが重要視される。

 NPBはまだ、レベルスイングが多いのだ。


 直史が引退後はMLBも、単純にフライを打つというのは減ってきている。

 三振かホームランか、というトレンドがまた、変化していると言っていい。

 より三振を少なくして、出塁を目指す。

 ツーストライクまでは大物狙いでもいいだろう、という割り切った考え方になってきているらしい。

 大介は例外であるが。


 このストレートの投げ方の違いは、体のコントロールが重要になってくる。

 また相当に体幹が強くないと、とても投げ分けられるものではない。

 疲労もたまりやすいので、ストレートの使いどころには注意しないといけない。

 そういった諸々の条件はあるのだが、明らかに直史は、ストレートを決め球の一つとして使えるようになっていた。

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