これが、狙いだったのか。気づいたぞ。

エリー.ファー

これが、狙いだったのか。気づいたぞ。

 検索ワードに、犯人の意図がある。つまり、犯人はあの人です。

 はい、そうです。

 犯人は、あの人です。

 え、あの人って、誰ですかってことですか。

 いや、あの人です。

 何が。

 いやいや、分かってますよ。

 私、気づいてますから。

 ほら、あの人ですよ。

 あの、人。

 凄く、その、なんていうか影が薄くて性格の普通の人です。

 いつも、穏やかで何を考えているのか分からない人ですよ。

 私としても非常に残念です。

 まさか、こんなことになってしまうなんて。

 どうすればよかったんでしょうか。

 多くの人が犠牲になったわけですが、これ以上のことは語れません。

 私はまだ男子高校生です。

 仮に、意見があったとして、皆さんを納得させられるようなレベルには達していません。

 本当に、残念なことですが。

 私には、ただ探偵としての役割を全うする以外の生きる道がないのです。

 皆さんの気持ちは分ります。

 まるで、世界が壊れてしまったかのような感覚なのですよね。

 どうして、こんなことになってしまったのか、今一度考えたいのですよね。

 分かります。

 私もです。

 でも、前を向くことを忘れてはいけないと思います。

 生きることを諦めるような選択肢を持ってはいけないと思います。

 頑張りましょう。

 私たちには、私たちが乗り越えられる試練しか与えられないのです。

 正義は、常に私たちにあります。

 いいですか。

 この悲劇を乗り越えるために、今日まで生きてきたのだと信じましょう。

 私たちには、勇気も、実力も、能力も、仲間も、気力も、すべてがあります。

 負けることなどありません。

 私たちの命は、今、この瞬間も太陽のごとく燃えているのです。

 神も嫉妬するほどの熱量は必ず悪を焼き尽くし、真実を白日の下にさらすでしょう。

 ですので。

 犯人は、あの人です。

 間違いありません。

 断言できます。

 もちろん、今の皆さんには難しいかもしれません。

 場合によっては誰が犯人なのかも分からないでしょう。

 でも、その不安を解消するためには戦うしかありません。

 あの人を捕まえ、そして、多くの人の幸せを願う。

 私たちにできることなんて、これくらいでしかありません。

 私も。

 私も皆さんと同じです。

 あの人を疑いたくなんてありません。

 だって、あの人はいつだって、私たちと同じ場所にいました。

 今だってそうです。

 でも、私たちとは全く違う道を歩んでいたのです。

 もっと早く気が付いていれば、私たちはあの人の心を助けることができたのかもしれません。あの人の手が血に染まる未来を避けられたのかもしれません。あの人と共に生きていく希望溢れる世界を作りだすことができたのかもしれません。

 でも、過去は変えられません。

 もう、望まない未来は確定してしまいました。

 しかし。

 私たちは、あの人をまだ信じています。

 あの人が、反省し、更生し、罪を償ってくれると信じることができます。

 それが、あの人と私たちとの間に生まれた関係、いや、絆なのです。

 私たちはファミリーなんです。

 温かい家族なんです。

 それが仮初だったとしても。

 嬉しかった、楽しかった、最高だった、愛しあった、助けあった、喜びあった、抱きしめあった、信じあえた。

 あの瞬間の、あの感情に、何の偽りもありません。

 一点の曇りなく、すべてが最高でした。




「あの人って、誰ですか」

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