第一章17 『信じてくれる人』
リョウタが気絶して数時間後、本部では緊急ブリーフィングが行われていた。 ブリーフィングはニコラスが行っている。 そして数十人の騎士団員がその場で聞いていた。 制服を着た人もいれば、私服を着た人もいた。 ニコラスは口を開いた。
「皆さん、お忙しいところに来てくださってありがとうございます。 しかし、今の状況はこれまで以上に重要です。 だから、よく聞いてください」
そして彼は画面にある男のプロフィールを浮かべた。 丈夫な体格とそれに対比される痩せた顔をした男だった。
「男の名は胡錦涛洋(コテキ・モリヒロ)。 年齢は37歳。 3ヶ月前に起きた通称「クリスマスの悪夢」の主要容疑者です
既にご存知だと思いますが、この人物が今日のデパートテロも計画したと推測中です。 また容疑者の仮面がなかったので、このように身分が分かりました。 彼の同僚によると、野良犬と呼ばれたそうです」
ニコラスは次のページに移った。
「彼はもともと爆弾製造をしていた人でした。 しかし、ご存知のようにサルデーニャ条約によって銃や爆弾のような武器製造に大きな制限を受け、彼も退職することになりました。
その後、さまざまなアルバイトをしていましたが、収入が十分ではなく、妻と娘一人が彼のもとを去ったそうです。 その後はご存知のとおりです」
騎士団員たちは彼の話を聞いてざわめき散らしていた。 日本を大きく揺さぶったクリスマス事件。 大きな規模に比べてまだ核心的な人物は捕まっていない。 しかし、今やっとある程度実体が明らかになった。 ある騎士団員が口を開いた。
「彼は現在どこにいますか?」
「今、彼の位置を追跡しています。 近いうちに分かると予想します」
別の騎士団員が口を開いた。
「助力者がいる可能性はあるでしょうか?」
「可能性はかなり高いです。 ご存知のようにサルデーニャ条約は侵食者にとって銃、爆弾のような武器はあまり効果的でないため結ばれた条約です。 数多くの国が同意しました。
その後、銃、爆弾は国が管理しながら極度に少ない生産量だけを維持しています。 しかし、彼は依然として多くの爆弾を製造し、これ見よがしにテロを起こしています。 かなりの資金と後処理能力が必要な仕事です。 だから助っ人はいる可能性は高いです」
騎士団員たちが彼のブリーフィングを聞いて、それぞれ多様な考えをしていた。 助っ人は誰なのか。 どこで爆弾を作っているのか。
彼の本当の目的は何かなどなど。 しかし、彼ら全員が共通の考えを持っていた。 彼を早く捕まえなければならないと。 ニコラスは口を開いた。
「とにかく皆さんが各自引き受けた任務があるでしょうが、できれば彼の逮捕に協力してください。 現在、上層部と政府も彼の逮捕に集中するよう求めています」
騎士団員たちがひそひそ話している。 今すぐ出動する意志が充満していた。 その後、騎士団員たちがニコラスに口を開いた。
「ところで長谷川リョウタの件はどうなりますか?」
「そう、俺もそれが気になった。 今あいつはどこにいるんだ?」
「聞いたところではかなりの侵食化になったそうだけど... 一緒にいるのは危険じゃない?」
彼ら全員がリョウタを認めないわけではない。 だからといって認めるわけでもない。 いずれにせよ、侵食者のリョウタは依然として危険人物と見なされている。 特に騎士団員は侵食者に恨みがある人が多いこともある。 ニコラスは口を開いた。
「長谷川リョウタは現在部屋で寝ています」
多くの騎士団員が彼の言葉に当惑した。 少なくとも隔離室にいると思ったが、平然と部屋にいるという事実が納得し難いようだった。
「おい!ふざけてるのか? あいつは侵食者だぞ! 特に同じ騎士団と戦う直前まで行ったと聞いたぞ」
「そうそう。騎士団が来る前まで、 侵食者に残酷に攻撃したそうだけど」
「残酷なのは別に問題じゃないと思うけど。 私たちも命をかけて戦う過程で、 それくらいはやってしまうよ」
「話が変に流れてるみたいだけど...とにかくあいつは結局侵食者だ。 時限爆弾と同じだって」
すでに物語の本質は変わっていた。 彼らは自分たちがやりたい主張だけに集中していた。 確かに彼らはまだ受け入れがたいと思っていた。 侵食者が騎士団員になったという事実を。 ニコラスは口を開いた。
「皆さん、やめてください。 こうするために集まったんですか? 今は長谷川件が重要なのではありません。 俺たちの目標はあくまでもコテキです。 また、彼のテロによって多くの人が危機に見舞われました。 そのような状況で長谷川はできる限り最善を尽くしました」
「俺たちもやはり最善を尽くして活動しているぞ? みんなが命をかけているのに長谷川のような例外だと特別扱いしていいのか?」
「それもそうです。 俺たちは皆、使命を持って侵食者と戦っています。 それは長谷川も同じです。 俺も彼を警戒しないわけではありません。 とにかく侵食者ですからね。
しかし、今日の結果だけを見ましょう。 彼は数十人の人を救出しました。 そして、同じ侵食者たちと戦い、彼らを無力化させました。 彼の行動では一切非難されることはありません」
騎士団員たちは何の反論もしていなかった。 彼が侵食者ではあるが、同時に数十人の人を救出したのも事実だからだ。 そんな英雄的な業績に対しては非難する人はいないだろう。 ニコラスは口を開き続けた。
「とにかく、彼を受け入れるのがまだ難しいのは認めます。 特に、今日の暴走は依然として彼の危険性を知ることができました。 それでも、今の彼の性向は決して破壊を望んでいません。 だから今後の活動を見守って判断してみましょう」
その時だった。ブリーフィングルームに急いである騎士団員が入ってきた。
「失礼します。でも急いで伝えることがあって来ました。 今、コテキの位置がある程度把握できたそうです。 ある廃工場一帯を拠点に活動を行っているそうです」
彼の話を聞いて騎士団員たちがひそひそ話し始めた。 ニコラスは口を開いた。
「分かりました。詳しい位置についての情報を今すぐ教えてください。 それに合ったブリーフィングをしてすぐ出動します」
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宮脇(みやわき)がリョウタにブリーフィングに関する内容を話してくれた。 リョウタは彼の話を聞いて考えが複雑になった。 騎士団員に依然として受け入れられていない事実。 危険人物として扱われる事実。 それでもニコラスは自分を支持している事実など。 悲しみと喜びが共存していた。
「騎士団の方々は僕をそう思っているんですね...」
「まあ、無理ではないだろう」
「僕はこれからどうすれば...」
「俺に聞いても分からないぞ」
デパートでコテキが自分になぜそう言ったのかある程度理解できた。 侵食者は結局侵食者として生きて死ぬしかない運命。 もちろん、大きく見ると、彼のテロによってリョウタは侵食者になったも同然だ。
誰のせいでこのようなはめになったが、ずうずうしく言う彼を許すつもりは死んでもなかった。 もちろん、彼が怪物になってしまった過程は少し残念だと思った。 宮脇が口を開いた。
「とにかく多くの騎士団員が彼を捕まえようと集中している」
「それがもう3日前ですが、まだ捕まってないんですか?」
「聞いた話では廃工場が1、2個ではないと言って、進入が非常に難しいという。 中にはあらゆる地雷と爆弾がいっぱいだそうだ」
「ああ...」
「まあ、本拠地だからそんな備えは前からしていたんだろう。 不安な点は、いざそこに奴がいなければ、ただの無意味で終わる点だ」
「僕の考えもそうです。 すでに誰かが訪ねてきたことを知っているはずなのに、あえてそこに居続ける理由はないと思います」
「そう、相変わらずそこにいるなら騎士団を相手にする自信があるとか、何か目的があると見るしかない。 それにもう問題は廃工場だけではない」
「また何かあったんですか?」
宮脇は深いため息をついた。 なんだか頭の痛いことが起こったように。
「最近、何人かの侵食者の中に小さな爆弾を使う奴らがいるそうだ。 特に千代田区を中心に」
「爆弾をですか?」
「そうだ。どうせあいつらは爆弾でよく死なない。 反面、平凡な人には本当に致命的だ。 少ないリスクで大きな利益を得ることができるから使わない理由はないだろう」
「やっぱり供給者はコテキでしょうか」
「確かではないけど、その確率は高いだろう。 最後の抵抗でもするのか、周りを回すためかもしれないし。 長谷川、お前があいつと相手しただろう? 何か覚えてるのはないか?」
リョウタは彼との戦いと会話を思い出した。 暴走後の記憶はあまりなかったが、彼の言葉と表情ははっきり覚えていた。 しかし、リョウタはすべてを話すのを嫌っている。 侵食者としての運命と仲間になれという誘いを。 それで目的だけを言おうとした。 彼は慎重に口を開いた。
「...新しい世界を作ると言いました」
「新しい世界?」
「はい、確かにそう言いました」
宮脇は話を聞いて呆れた表情をした。 チョコラテを一杯飲んだ。
「ふざけやがって。 一体何の世界なのか分からないけど、 やり方が完全に間違ってるんだぞ」
彼の落ち着いた態度と対比される騒々しい行為。 平凡な労働者だった彼がどうして凶悪犯になったのか、またどんな思想でそうするのかリョウタは気になった。
「なぜその人はそんなことをするのでしょうか」
「俺は知らないぞ。 そんな犯罪者たちの考えなど理解するつもりは全くない。 退職させた社会への復讐とかだろう」
リョウタは彼の動機が気になった。 もちろん、どんな理由があっても彼の行動は絶対理解するつもりはなかった。 数多くの人を殺害し、リョウタに悲劇をもたらした張本人だからだ。 だから一体どんな理由でそんなことをしたのか知りたがっていた。 彼が席を立った。
「やっはりこのままではダメです。 今すぐにでもコテキを止めなければ」
「お前ならそう言うと思った。 でも、そう放っておけないぞ」
「えっ、どうしてですか?」
「何故俺がここにいると思うんだ?」
考えてみると、多くの騎士団員は席を外してコテキに集中している。 しかし、なぜか宮脇は本部に残っており、長谷川と時間を過ごしていた。
「えっと・・・休みですから?」
「休みの日にはここに出もしなかったぞ。面倒くさいだろ?。 お前を監視するためにいるんだ」
「僕を監視するためですか?」
「そう、ニコラス隊長の命令だ」
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3日前のブリーフィングが終わり、ニコラスは宮脇を呼んだ。 ニコラスは口を開いた。
「長谷川がこれからいつ目覚めるか分からないけど、もし目覚めたら彼を止めてくれ」
「休みの日に出勤もしたのに、 それはまた何のお願いですか?」
「きっと長谷川はコテキを止めようとするだろう。 普段から彼の正義感から見ればじっとしていられないと思う。 しかし、今回は違う。 コテキは長谷川にとってかたきに近い。 きっと接触すればまた暴走が起こるかもしれない」
「それで彼が作戦に参加しないように防げばいいということですよね?」
「うん、そうだ。特に大多数の騎士団員はまだ彼を認めていない。 このような状況で再び暴走すれば、彼らに良い口実を与えることになるだろう。 だから頼むよ」
「あいつ、言うことを聞きましょうか? 敵が目の前にいるのに、じっとしているのが難しいと思いますけど」
「うん、それは正しい。 でも長谷川はいい子だから素直に聞いてくれると思う。でも...」
「?」
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「お前が行きたい気持ちは分かるけど、送れない。だから今回だけは本部で休んでろ」
「・・・はい」
リョウタは再び席に座った。 ニコラスの考えは妥当(だとう)だった。 そこに悪意のある目的はなく、リョウタを心配して宮脇に監視を任せた。 リョウタはそれを知っているので残念だが、これ以上行動することは考えられなかった。 宮脇は彼の気持ちに気づいた。
「あんまり残念に思うな。 お前はまだ騎士団になって一週間も経ってないぞ」
「・・・」
「だから他の奴らが受け入れるのに時間がかかるのは当然のことだ。 もしお前が侵食者でなくても最後まで嫌がる奴らもいただろう。 誰もがお前を好きになるわけではない。だからこれから騎士団員がお前を受け入れるように努力すればいいんだ」
「・・・宮脇さんは僕のことをどう思いますか?」
「俺は侵食者が嫌いだ」
「あはは・・・」
「でも、お前はある程度例外だ。 俺と愛待(あいまち)、ニコラス隊長が一番長い間お前を見たと思うけど、少なくとも俺が見たお前は他の侵食者とは違う。 それに数十人の人も救った。けど、もし暴走したら、俺もその時はどうするか分からないぞ」
「はい・・・ありがとうございます」
リョウタはまだまだ先が遠いと感じた。 しかし、それでも自分を支持してくれる人がいるという事実が力になる気がした。
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