第一章16 『怪物の涙』
騎士団4人は今すぐにでも戦いの態勢を整えた。 デパートの外では多くの人が今の状況を見ていた。 騎士団の一人が口を開いた。
「侵食者が3人、いや4人か?クローゼットの下の奴は何だろう?」
「特にあいつは侵食化がかなり進んでいる。お前たち覚悟しろよ」
リョウタは彼らの言うことを聞いていた。 悔しい気持ちに反論したかったが、むしろ闘争心と怒りが生まれた。 特に攻撃の準備をする姿を打ち砕きたかった。
正確な状況把握をせず、自分を怪物として見ているという事実が悔しかった。 ますます理性を失っていくのが感じられるリョウタ。
「あいつ、今見たらやつじゃないか?」
「有名なやつか?」
「確かに資料で見たことがある。 騎士団に入ってきた侵食者。長谷川リョウタだ」
「それがあいつなのか?」
「やはり侵食者は侵食者なのか」
「俺が先に行く」
彼らのうちの1人が突入する準備をしている。 リョウタはその姿を見て本能的に危険を感じた。 それで彼の角はさらに長くなり、両肩に大きなとげができた。 緊張感が溢れるその瞬間、丈夫な男が口を開いた。
「そうか...、結局お前も俺と似た運命だったのか」
彼の声を聞いてリョウタは彼を見た。 彼はすでに体の鉄筋を抜いて立っていた。
「お前がどんな過程で騎士団に入ったのかは分からない。 ただ、お前は決して彼らと並ぶことはできない。 利用価値が下がれば、今のように直ちに捨てられるだろう。 まるで野良犬のように」
彼は淡々と落ち着いて話し続けた。 リョウタと命がけの戦いをしたが、それによる感情は解消されたようだ。 むしろ戦いよりも大きな意味を見ていた。
「犬の仮面。 いや、長谷川良太。 侵食者は結局侵食者として生き、死ぬしかない。 俺と一緒に行こう。 そして新しい世界を作るんだ」
しかし、リョウタは彼の言葉を聞いてもまったく気にしなかった。 知人たちの仇である彼が仲間になるよう勧めている。 もちろん彼はその事実を知らずに言っているが、リョウタにはまったく有り得ない話だった。 彼は答える代わりに攻撃姿勢をとった。
「それがお前の答えなのか? 俺が憎らしいのか? クリスマスに何かあったみたいだなぁ。 殺したければ殺してもいい。 それがお前の欲望なら」
「.....」
「みんな、攻撃準備!」
騎士団も緊張しながら、これから起こることに備えた。しかし、いざリョウタは行動に移すことができなかった。 最後に残った理性が彼の本能を抑えていた。 男は彼の姿を見て口を開いた。
「見た目だけ見れば完璧な侵食者なのに、まだ精神状態は甘すぎる。 それなら俺が手伝ってあげよう。 お前の本当の姿を見つけられるように」
男はリョウタを見て、その後倒れている愛待(あいまち)を見た。 そして服の中にある白く小さな球体を取り出し、周辺に撒いた。
リョウタ、騎士団、愛待まで、それが正確に何の物体なのか分からなかった。 しかし、誰もが本能的に知ることができた。 決して良くないことが起こるということを。
「復讐、あるいは救い。 それはお前の選択しだいだ」
「みんなここから出て行け! きっとあれは…!」
(避けられない…!)
「.....!」
やがて球体は爆発した。 周辺一帯は爆発の衝撃によって粉々になった。 土ぼこりが視界をじゃました。 数秒の時間が経ってほこりが消えたことを確認した騎士団は状況を把握した。 そこにはもう丈夫な男がいなかった。
「あいつ、爆弾をあんなにたくさん持っていたなんて...」
「残りの侵食者たちは?」
「おい、あそこ見ろ!」
騎士団が指差したところにはうつ伏せのリョウタがいた。 彼の背中の皮膚は消えていて、右手と左足首がなくなっていた。
リョウタの下には愛待がいて、彼女は驚いた表情で彼を見ていた。 そして、彼女は彼の保護のおかげで何の被害もなかった。
反面、彼の精神状態はまだ正常ではなかったため、彼女を見て獣のようにうなっていた。 充血した赤い虹彩は依然として鮮明に輝いていた。
「...長谷川くん」
「...アイ、...マチ」
彼の声はいつもより低く、人間と動物の間に似ていた。騎士団は彼の行動に驚いた。 侵食がかなり進んだ彼が、自分の欲望を置いて他人を救った。 彼らはまだそのような侵食者を見たことがない。
「人を...、助けたのか?」
「理性がまだ残っているのか... 次、なにするか分からない」
「何であれ、侵食者は侵食者だ。 弱まっている今、攻略しなければならない」
騎士団は再び戦闘態勢を取った。 リョウタは彼らの殺意を感じ、右足だけで立ち上がった。 そして彼らに向かって咆哮(ほうこう)した。 人と獣の声が合わさったような音だった。 歯も鋭く変わっていた。 事実上、人間の体をベースにした獣に近かった。
「くっ...!」
「....!」
騎士団は彼の咆哮に緊張した。 外見だけを見ても、彼の姿は驚異的だった。 侵食者たちもやはり個人差が激しい。ある存在はリョウタよりもっと怪物らしい奴もいる。
ただ、それは少数に過ぎない。 リョウタも同様なので、騎士団もなかなか見られない侵食だ。 そのため、気を引き締めて戦闘態勢を取った。
「長谷川良太! 今、お前をこの場から排除する!」
「ちょっと待ってください!」
リョウタと騎士団の両方が声の方向を見た。 そこには救急隊員が一人立っていた。 彼はリョウタが人々をクッションに案内するとき、下で待機し続けていた人だ。
「その人は侵食者でも怪物ではありません。 その方のおかげで多くの人を救うことができました!」
彼の言葉に騎士団は困っていた。
「・・・それは本当ですか?」
「そうです。私以外にも多くの人が証言できます」
救急隊員の言葉に従って、多くの人が建物に近づいた。 まるで言いたいことがあるようで、またこの瞬間を待っていたかのように。 侵食者リョウタの役に立ちたくて勇気を出そうとしていた。 ある消防士が先に口を開いた。
「あの方のおっしゃる通りです。 あの少年は多くの人を救いました」
その次に、別の救急隊員が口を開いた。
「そうです!僕も見ました。 火事と煙に満ちた建物の中で彼は勇敢を振る舞いました」
その次に、ある若い女性が口を開いた。
「そうよ、そうよ! あの人が私の家族を救ってくれました!」
その次に、ある青年が。
「僕の両親もあの少年が助けてくれました!」
その次に、あるお母さんが。
「私の子供たちも!」
1人の救急隊員から始まった言葉が、ますます多くの人々をこの状況に導いた。 みんなが大声でリョウタを弁護してくれた。 皆が同じ気持ちで感謝の意を表した。
彼の行為は単なる善意ではない。 命をかけてまた別の命を数え切れないほど生かした英雄的なことだからだ。 騎士団は市民の勢いに戸惑っていた。
「なっ・・・、どうしよう・・・?」
「こんな状況で長谷川を攻撃したら・・・、 相当困っちゃうな」
2人の騎士団が悩んでいたとき、1人の騎士団がこの状況を気に入らないように思っていた。
「でもあいつの侵食化はひどい! 放っておいてはいけない!」
彼の話を聞いて、もう一人の騎士団が口を開いた。
「今の状況を見たら、じっとしていよう。 むしろ、これ以上やったら僕たちが非難されるよ」
しかし、彼は落ち着かず、むしろもっと興奮した。
「クソ、みんな怖がりだなぁ——————、 よく見ていろ!」
一人の騎士団員が鞘(さや)から日本刀を抜いてリョウタに飛びついた。 市民はその様子を見て非難した。
「何してるんだ! あの少年は罪がないって!」
「彼は人々を救い、侵食者たちと戦った!」
「最初からあんた達が早く来ないからだよ!」
「もしお前達だったら、 そんなに多くの人を救えなかったんだぞ!」
騎士団員は彼らの非難が気になったが、それでも飛びついた。 彼の行動には非情な意志と決意が込められていた。
「情けない奴らだ・・・、 誰がお前たちを命がけで守ってくれてるんだよ? よく見ていろ、これが未来のためだから!」
いつの間にかリョウタの前に立った彼は、日本刀をリョウタに振り回した。 しかし、刀が彼に届く直前、なぜか止まってしまった。 日本刀は鮮やかに光を反射していた。
「なっ?」
騎士団員は彼を切ることができなかった。 正確に言えば、斬る直前まで行った。 しかし、リョウタの涙を流す姿を見て、止めるしかなかった。 依然として侵食の状態は深刻だ。 そのため、涙を流す彼の姿は違和感と戸惑いを与えるのに十分だった。
「・・・侵食者が、泣いてる?」
侵食者が泣かないことはない。 ただ、大多数の侵食者は欲望によって率直かつ堂々と行動する。 だからこそ、彼らにとって涙を流すほど感情を刺激することはあまりない。 騎士団員も侵食者の涙を流すのを初めて見た。
「クッソ・・・、お前は一体何なんだよ・・・!」
リョウタの理性は依然として薄い。 望むなら、いつでも爆発的な狂気を見せることができる。 ただ、彼の小さな理性は着実に彼を抑えていた。
変わってしまった自分を責めていた。 恨み、怒り、悲しみなど総合的な感情が彼をさっきから刺激していた。
そんな中、多くの市民の感謝と弁護を聞くようになった。 最後に残った理性はそれを逃さずに全部聞いていた。 一言一言を大切に聞いていた。 その結果、涙が出るしかなかった。
「じゃあ、どうやって攻撃するんだよ・・・」
彼の迷いに刀も揺れていた。 他の騎士団員はその様子を見てため息をついた。 そして口を開いた。
「おい、刀をまた入れろ」
「そう、これ以上は無意味だ。 あいつがいくら侵食者だとしても彼らにとっては命の恩人だ」
「俺も知ってるぞ」
彼は刀を鞘に入れて攻撃の意思がないことを明らかにした。 リョウタはそれを見て安堵したのか気絶してしまった。
~~~~~~~~~~~~~~~~
目覚めたリョウタ。 姿は平凡な人間に戻っていた。 気絶する直前までの記憶はあまり残っていなかった。 強烈な断片的な記憶だけが残っていた。
「・・・そのまま気絶してしまったのか」
彼は自分の服の状態を見た。 戦闘の時に着ていた服ではなかった。 ここ数ヵ月間、ひどい目にあった患者服だった。 服を見て一瞬不安を感じた。 この3ヵ月以上の間、果てしない退屈さに耐えた記憶が浮かんだ。
「まさか!」
あわててあたりを見回した。 もしかしたらまた隔離室に入ったんじゃないかと思って。 しかし幸い、自分の部屋だった。 相変わらず物はあまりないが、変わらない彼の部屋。彼はぼんやりと過去の記憶を振り返った。
愛待とデートをしたこと、爆弾テロが起きたこと、人を救助したこと、そして最後にかたきのような男と戦闘をしたこと。
「確かに侵食化がもっとひどくなったようが・・・、 何があったっけ?」
彼は立ち上がってスリッパを履いた。 そして部屋の外に出て廊下を歩き回った。 何かあったのか人が全くいなかった。
「何かあったのか・・・」
彼は部屋に戻って着替えをした。 そして寮を出て勤務地に行った。 そこにも人が多くなかった。 代わりにいる人たちは忙しく動いていた。 リョウタは今の状況を知りたくてニコラスの部屋に訪ねた。
「いらっしゃいますか?」
しかし、部屋からは何の返事もなかった。 彼はいつもの雰囲気と違って違和感を感じていた。
「おい、長谷川」
リョウタが声の方向を見ると宮脇(みやわき)がいた。 彼はいつものように堂々とした姿勢と冷徹な目つきをしていた。
「宮脇さん」
「探していた。話したいことがある」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
売店に行って飲み物を買った二人。 宮脇がリョウタの飲み物まで購入した。 宮脇はチョコラテ、リョウタは緑茶ラテを飲んでいた。 宮脇はチョコラテをただ飲んでいただけだった。 リョウタは彼がどんな話をするかずっと待っていた。 彼が先に口を開いた。
「話すことって何ですか?」
「どこから説明すればいいのか・・・、 何から聞きたいか?」
「僕が気絶した後のことが気になります」
「そうだろうなぁ———————」
宮脇がチョコラテを一杯飲んだ。
「お前、どれくらい寝ていたか知ってるのか?」
「えっと・・・、7時間くらいじゃないですか?」
「いや、お前3日間寝てたよ」
「3日もですか?」
「そうだ。俺もびっくりした。とにかく本論はこれから話す」
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