第一章14 『漫画の主人公』
相変わらず食堂に座っている二人。 食事を終えてデザートに飲み物を飲んでいる。 愛待はアメリカーノ、リョウタはタピオカティーを飲んでいる。 彼が先に口を開いた。
「ところで、愛待はそばが好きなのか?」
「特に好きなんじゃなくて、 早く食べられるから」
リョウタは彼女らしい答えだと思った。 普通、ファミリーレストランやカフェに行けば、彼女と同じ年頃の女子生徒たちがおしゃべりする姿をよく見かける。 もちろん学生だけでなく大人たちも多く見られる。 そのため、彼女の答えはよく耳にする言葉ではなかった。
「じゃあ、ファーストフードとかもよく食べるの?」
「うん…、まぁ、そうね」
「へえ————、それは意外だなぁ。 愛待がファーストフードをよく食べるなんて」
「わ、私にどんなイメージを持っているの? なんか今日に限って似たようなことをたくさん言われる気がするんだけど」
「僕は愛待が健康のために効率的な食事だけをすると思った。 カロリー計算もしながら」
「効率を考えるのは合ってる。 早く食べて他の仕事ができるじゃん。 食事に多くの時間を費やすのはもったいないから」
「ああ————、納得した。 流石愛待なんだだなぁ——」
彼は何が彼女をこんなに忙しい人にしたのか疑問に思った。 確かに侵食者と関係があると思った。 しかし、詳しいことを聞けば、彼女の傷に触れることができると思った。 だからこそ、それ以上に言わなかった。
「そして···、ハンバーガーおいしいじゃん···」
「え?何だって?」
「ハンバーガーがおいしくて好きだと言ったの!」
「そ、そうなんだ.. 僕も好きだよ、ハンバーガー。 僕がおいしいところ知ってるので、いつか一緒に行こうよ」
「うん、いいよ。っていうか、何を自然に約束してるのよ!」
「いや、僕はただ愛待がハンバーガーが好きだって言うから教えたかっただけだぞ」
彼の言葉は悪意が全くない純粋な善意だったので、特に反論ができない愛待。 それでも自然に約束した自分を思うと少し恥ずかしくなった。
「というか、あなたは外出するには誰かと一緒に出かけなければならないじゃん。 私が一緒に外出してあげると思うの?」
「それはそうだけど、それでも愛待ならまた一緒に行ってくれるんじゃないか? 僕は信じているよ」
「···あなたさぁ—————、 今まで他の女の子にもこう言ってきたの?」
「うん?そうだなぁ……、特に意識したことはないからよくわかんない…」
「はぁ…その言葉も疑わしいんだけどね。もういいよ」
何も言わずに飲み物を飲む二人。 タピオカティーの甘みがリョウタの気分を良くした。 愛待が先に口を開いた。
「ところで長谷川くん。 あなたの能力は何? 今まで聞いたことがない」
「あ……、僕の能力? 特にすごくいい能力じゃないから言うまでもないよ」
「何言ってるのよ。 これからも一緒に侵食者と戦うことになるのに、能力を知っておかないと作戦を立て、敵と戦えないよ」
「それはそうだなぁ——————、 愛待は火を作ることができたよなぁ? この前見たよ。僕は」
そして彼は自分の両手のひらを広げた。
「僕は手で接触した相手の心を読める。 正確に言えば吸収するというかな? これで他人の感情を僕が代わりに背負うことができるんだ」
彼の説明を聞いても愛待は理解できなかった。
「それは……、どういうこと? 説明を聞いても何の能力なのかよく分からない」
「例えば、愛待が怒っている状況だとしてみよう。 僕は愛待と接触してその怒りの感情を僕が持っていくことができる。 そしてその時の怒りに関する記憶も少しだけど読める」
「ああ……、どういう意味か理解した。 それでは恨みや欲望のような感情、逆に良い感情も持っていけるの?」
「そう。でも、いい感情を持っていく必要ないからさ······ 今まで悪い感情だけ持って行った」
「長谷川くんらしい能力だね。 普通能力は自分の性格と関連があるから」
「そうかも。だから今までボランティアをする時、 この能力で人々の心を癒してきた」
「そうなんだね」
素敵だと思う、と付け加えようとした愛待。だが言わなかった。 明らかに、それは他人の役に立つ能力だ。 しかし結局、良くない感情を自分が背負わなければならない。 大きなメリットがあるには難しい能力だ。
「でも侵食者になってからは······」
その時だった。とてつもなく大きな音がしてデパートの片面が崩壊した。 まるで爆弾でも爆発したような状況だった。 リョウタと愛待は食堂で倒れていた。 幸い、他の方向から起きたため、軽い被害だけがあった。
「コホン、コホン……、 まさかこれは···、 あの時のような···、 あ、愛待!大丈夫?」
「うん……、私は大丈夫。 いったい誰が昼からこんなことを…」
「またあいつらかも……、 まさかクリスマスと同じやつか···」
「そういう可能性もある。 その後、多くの侵食者を捕まえたが、核心的な人物はまだいないんだよね」
平日なので多くの人はいなかった。 ただ、壁の一面が大きく崩壊したため、多くの人が被害を受けた確率が高い。 リョウタは今の光景を見るのが辛かった。 愛待も同じ気持ちだった。 被害が大きい方向に行くと、多くの人が現場で倒れていた。
「助けてください——————!!」
「ママ——————!!」
「俺の足が……! 俺の足が!!!」
「僕……、このまま死ぬの?」
そこは地獄に近かった。 リョウタはふとクリスマスの夜を思い出した。
「相変わらず……、 多くの人々が理由も知らないまま死んでいく···」
その時だった。
「助けてください——————!!」
「どうか……、許してください!」
1階から人々の悲鳴が聞こえてきた。 3階にいるリョウタだったが、悲鳴は鮮明に聞こえた。
「長谷川くん!あそこ見て!」
愛待が指したところには仮面をかぶった謎の男が3人いた。 痩せた男と丈夫な体格の男、そして背が190センチに見える男がいた。 痩せた男は通りすがりの人々を攻撃していた。
「あ……、あれは……」
「どう見てもこの事件の主導者たち。私が降りる」
「僕も一緒に行くよ」
「いや、私が一人で時間を稼ぐ。 きっとこちらに支援が来ているはずよ」
「でも、一人で3人を・・・、 それも装備もなく。 無茶すぎるよ」
「長谷川くん!一番大事なのは生存者だよ。 それ、知ってるんじゃない? だからあなたがあの人たちを救って。あなたが私より上手くできることだから」
愛待は一人で危険なことを知っていたが、彼にできるだけ戦いをしないでほしかった。 それで無理してでも一人で行こうとした。
「分かった・・・、じゃあ僕が責任を持って人を救う」
「じゃあ、これを」
愛待が渡したのは犬の仮面だった。
「これは?」
「さっきワタポメショップで買ったの。 念のため購入しておいた。 だからここはあなたに任せるよ」
「うん、できるだけ早くそっちに行くから」
「うん・・・、待ってるからね」
愛待は1階に下り始めた。 リョウタは彼女の後ろ姿から勇気と恐怖を同時に感じた。
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痩せた男はいまだに人々に暴力を振るっていた。 周りに多くの人が倒れていた。 体格のいい男が口を開いた。
「目標は達成したからもう行こう」
痩せた男が答えた。
「なんでだ?こんなに面白いのに。 今日の爆発は規模が小さい。 このまま帰るには物足りない」
「規模が重要なのではない。 核心は爆発にある。 これだけでも政府と機関、騎士団の信頼は大きく下がる。クリスマス以来、何の発展もなかったみたいに」
「俺はそういうことを説明してもよく分からないんだ————―、 ただこうやって遊ぶだけでいいぜ」
「あんたたち、ここまでよ」
3人の男の前に愛待が現れた。愛待は顔に犬の仮面をかぶった。
「こんなばかげたことをするなんて・・・、 何の罪悪感も感じないの?」
「はっ! お前もしかして騎士団なのか? 一人で来るなんて正気か? 殺してあげるよ」
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「だ、大丈夫ですか?」
リョウタはがれきを片付けながら人々を救助していた。 彼は浸食化を少しだけ使った。 そのため、体に大きな変化はなかった。 そして昨日と違ってすぐ侵食されたので不思議だと思った。 しかし、手が黒いため手袋をはめていた。 彼はいつもよりはるかに強くなった力でがれきを簡単に持ち上げることができた。 彼は若い男の救出に成功した。
「あ、ありがとうございます。 死ぬかと思いました・・・」
「歩けますか?」
「残念ながら、そうすることができません・・・」
「僕の背中におんぶしてください」
リョウタは彼を背負って1階まで降りようとした。 しかし、時間が経つにつれて建物は崩壊した。 炎と煙がだんだんひどくなっていった。 そのため、道がだんだんなくなっていった。
「クソ・・・、どうしよう」
「あの・・・、消防士たちが来るみたいです」
リョウタがガラスの壁から外を見ると、救急隊員と消防士が突入する準備をしていた。 彼は一瞬いい考えを思いついた。
「少々お待ちください」
彼は男を置き、ガラスの壁を手で割った。 壊しにくい強化ガラスだったが、リョウタの怪力によって可能になった。 男は彼の姿を見て慌てた。
「な・・・、何をしてるんですか? そしたら手もケガすると思うんですが」
「大丈夫です。体は丈夫ですから」
そして彼は外に叫んだ。
「救急隊員さん!消防士さん! 僕は騎士団員です! こちらの方向にクッションを用意してください! お願いします!」
彼の言葉に消防士たちは急いでエアクッションの準備を始めた。 そしてその周辺で救急隊員たちが待機をした。若い男はその姿を見て感心した。
「あなた・・・、騎士団だったんですね。 まだ学生に見えますが、本当にすごいです」
「ありがとうございます。 傷が早く治ることを祈っています」
「こちらこそありがとうございます。 一生の恩を受けました」
リョウタは若い男をクッションの方向に降ろした。 救急隊員は彼を急いで救急車に連れて行った。 リョウタはその様子を見てほっとした。そして、より多くの人々を救い始めた。 子供、若い女性、老人、子供たちの母親など、彼は見える人皆をクッションに案内した。 そして3階だけでなく4階までもその過程を同じように繰り返した。
「大丈夫ですか?歩けますか?」
「はい・・・、歩くことはできます。 本当にありがとうございます」
ある所には子供が泣いていた。 急いで子供のそばに行ったリョウタ。
「大丈夫?両親はどこにいるの?」
「あ、あそこにいます・・・」
彼は女の子が指した方向のがれきを片付けた。 そこには血を流している女性がいた。 意識はなかったが、息はしている。 彼は彼女を背負った。 そして子供の手を握った。
「私のママ・・・、 死ぬんですか?」
「いや、まだ生きてるよ。 安心しても大丈夫」
「・・・ママを救ってくれてありがとうございます・・・!」
「当然のことをしたんだよ」
彼はこの過程をいくら繰り返しても疲れなかった。 むしろ繰り返すほど、体からより多くのエネルギーが感じられた。まるで漫画の主人公のように。 4階にこれ以上の生存者がいないと判断した彼は、しばらく息を引き返した。
「はぁ・・・、はぁ・・・、 これ以上の被害者はいないのか? ・・・あ、愛待」
彼は人々を救うことに集中していたので、彼女のことをすっかり忘れていた。 彼女のことが心配で1階を見ると、かなり危険そうに見えた。 立っていられなくなるほどかろうじて持ちこたえている愛待。
「・・・愛待が危ない! 今すぐにでも行かないときっと死んでしまう・・・!」
リョウタの近くは家具を売っているコーナーだった。 彼は家具を見てあるアイデアを思いついた。
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愛待は息を切らしてやっと立っていた。 侵食者もかなりダメージを受けたが、時間が経つにつれて回復していた。
‛やっぱり装備もなく3人は無理だったかな・・・、特にあの体格のいい男は強い’
痩せた男が彼女を見て口を開いた。
「なんだ、最初来た時の勢いはどこに行ったんだ? 一人で3人倒しそうだったが」
「黙りなさい、このクズたちが。 あんたらは話す権利もない」
「何だと?」
しかし、痩せた男が出る前に、長身の男が先に彼女を攻撃した。
「っ!」
彼女は床に倒れた。 これ以上立ち上がるのも大変だった。
「ハハハ、普段は静かだったのに、こういう時は先に出るんだよなぁ?」
「···うるさいじゃん」
「まったく、不思議なやつだ」
痩せた男が楽しそうに長身の男と会話していた。 その時、体格の良い男が口を開いた。
「もういい。そろそろ帰るぞ。とても長くここにいた」
「いや、あの女でも仕上げて行こうぜ。 それとも連れて行くか。 騎士団じゃないか? 人質として使うのに良さそうだけど」
「おい、俺の命令に従わないのか?」
「そうじゃなくて・・・、分かった、帰ろう、帰ろう」
しかし、長身の男は依然として彼女を見ていた。 そしてゆっくり近づいていった。
「おい!もう帰らないといけないって言うじゃん!」
「・・・確実にやらないと」
彼女はなんとか立ち上がろうとしたが、体に力が入らなかった。
「長谷川くん・・・」
その時だった。 リョウタが4階の高さからクローゼットと一緒に飛んできた。 彼はクローゼットを抱きしめながら離れないようにした。
「うわあああ————―!!」
愛待と侵食者3人とも彼の声に上を見た。 クローゼットを抱いた男が上から飛んできているので、一体どんな状況なのか理解できなかった。
「あ、あれは一体何だ?」
「・・・?!」
「・・・長谷川くん?」
やがてクローゼットとリョウタは長身の男に的中した。
「クアアアッ——————!!」
長身の男はショックで一瞬で気絶してしまった。 リョウタはかろうじて立ち上がった。 彼は犬の仮面をかぶっていた。 そして愛待を振り返りながら口を開いた。
「・・・遅くなってごめん。これからは僕に任せて」
「・・・うん。任せるね」
体格のいい男はその状況をじっと見ていた。 痩せた男が彼を見て口を開いた。
「おい、お前正気なのか・・・? 一体どんな奴がクローゼットと一緒にあの高さから飛んでくるんだよ!」
「あなたたちとは正気で戦えないからです」
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