第一章13 『二人だけの平日』
騎士団本部前で愛待を待っているリョウタ。 彼は今朝聖堂に立ち寄り、シスターから服を受け取った。
「どうぞ、受け取ってください。長谷川さん」
「ありがとうございます、アンジェリカさん。 今夜すぐにお返しします」
青色のジーンズに白いシャツ。 そして、その上に黒いフードを着たリョウタ。 1分がまるで1時間のようだと感じている。 彼女の性格では遅刻することはないと思ったリョウタ。 だから早く来てほしいと願っていた。 その時だった。
「おはよう、長谷川くん」
リョウタが声を追って振り向くと、愛待がいた。 黒いニットの中に白いシャツを着て、下には黒いスカートとストッキングを履いていた。 少女のようなコーディネートよりは大人っぽい雰囲気が感じられた。 リョウタは彼女の姿を見て一瞬言葉が出なかった。 本部での姿に慣れていたので、彼女のこのような姿は初めてだった。 改めて彼女が美人であることに気づいた。 愛待はその姿を怪しく見た。
「うん?どうしたの?」
「あ、いや。愛待の私服姿は初めて見たから.. 何て言うか、とてもよく似合ってきれいだ」
「なっ···、何を急に言ってるのよ!」
愛待は瞬間的に慌てたが、再び普段通りに戻って話を続けた。
「とにかく今日は長谷川くんの買い物にいくんでしょ? どこか行きたい場所でもある?」
「うん。僕が考えておいた所がある」
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あるデパートに着いた二人。 平日なので人はあまり多くなかった。 リョウタと同じ年頃の生徒たちは、通常学校に行っている日だ。 そのため、彼は今の状況を不思議に思っていた。 ふとアユムが浮かんだリョウタ。
「アユムもまた学校に行ったのかな…」
まさかそんな風に別れるとは思わなかった二人。 最悪の方式で遠ざかったため、お互いの現在が気になるしかない。 3ヵ月という時間は決して少なくない。 過ぎ去った時間が長いだけに心配は積もっていった。 その時、愛待が口を開いた。
「長谷川君、どうしたの?」
「うん?あ、ごめん。 ちょっと考えてた」
リョウタはあたりを見回した。 主に見えたのは年配の人たち、おばさんたちだった。 若い男女がいるには少しぎこちない状況。 リョウタが先に口を開いた。
「...何か不思議だ」
「何が?」
「平日にこうやってデパートに来ること。普段は経験できないから」
「そうね。もう私たちには夏休み、冬休みはないし。 代わりに、こうやって平日に休めるから」
リョウタはふと最後の冬休みを施設で過ごしたことに気づいた。 実は休みと呼ぶのも難しいただの隔離。 人より多くの日を休むことになったが、それは決して良くない、最悪の方法だった。 彼はその事実を思い出し、苦しんだが、忘れようとした。
「騎士団は元々戦闘後は休むの?」
「うん。戦闘によって休憩期間が変わる。 普通は3日。長ければ1週間くらい。 もちろん怪我をしたらもっと長くなるし」
リョウタは意外と確かな騎士団の福祉に驚いた。
「へえ…、僕は毎日訓練と戦闘ばかりしていると思った。 特に最近は事件が多いから」
「そんなハードの勤務は誰も耐えられないよ。 スポーツ選手たちも試合後に休息を何日も取るのよ」
彼女の言葉に専門性を感じたリョウタ。 空手と柔道を学んだ彼女は、運動面では確かにリョウタより経験が多い。
「そうなんだ。愛待は知らないことがないんだなぁ。 漫画では主人公たちが休まずずっと戦ってるから大丈夫だと思った」
「はぁ…、 それはマンガでしょ?長谷川くん。 でも、あなたなら…」
愛待はそこで話をやめた。 何かもっと言いづらく見えた。 リョウタは彼女がなぜそうするのか疑問に思った。
「うん?どうしたんだよ、愛待。話をしている途中でやめて」
「いや、あなたは侵食者だから。 だから体力や身体的な面では他のどの騎士団員よりも圧倒的だと思う。 だから望むならいくらでもそのように活躍できるかも。 まるで漫画の主人公のように」
「ああ…」
単に呪いとされていた侵食。 しかし、それは他の騎士団員が持っていない武器だ。 だから平凡な人である愛待の立場では、それはうらやましいことだ。 リョウタはそのような観点を今までまったく考えていなかった。 望むなら、他の人より何倍も多くの活躍ができる。 まるで漫画の主人公のように。リョウタが物思いにふけっているとき、愛待がリョウタの服をつかんで口を開いた。
「長谷川くん、ちょっとあっちを見に行きましょう」
「うん?どこ?」
愛待が指したところはかわいいキャラクターショップだった。 ポメラニアンがモチーフのキャラクターワタポメがメインだった。 彼女はいつものような表情だったが、なぜか目つきはもっとキラキラしていた。 リョウタは彼女の目つきに拒否することができなかった。
「そうだな、行こう。 時間はあるから」
キャラクターショップを見回る二人。 愛待はいつもと違ってかなりテンションが上がった。 リョウタは彼女のこんな姿が初めてなので不思議に思った。 中学時代の愛待、そして騎士団としての愛待。 どちらも趣味生活もなく忙しく暮らしそうなイメージがあったからだ。 しかも167センチの高い身長と大人っぽい服装にさらにギャップを感じた。 まだ自分と同じ15歳の少女であることに気づくリョウタ。
「長谷川君、これ見て。 可愛くない?」
愛待はワタポメキーリングを指差した。 クマの服を着たワタポメは普段よりもっと可愛い姿を漂わせた。
「そうだなぁ——―、 本当に可愛い。 あ、これも可愛いよ」
彼が指差したところには猫の服を着たワタポメキーリングがあった。 愛待はそれも目を輝かせて見た。
「本当だ。どうしてこんなに可愛いんだろう?」
「だな。何か愛待と似合ってる」
リョウタは普段、彼女が猫のような顔をしていると思っていた。 そのため、猫の服を見て無意識に彼女と似合うと言った。 しかし、リョウタはこれを言ったことを一瞬後悔した。 彼女が何か言いそうだったからだ。
「わ、私?ふむ、そうかな?」
しかし、意外と淡々とやり過ごす彼女だった。 なんとなく少し嬉しそうだった。 リョウタは彼女が本当にワタポメのキャラクターが好きだと感じた。
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ちょっと見て通るキャラクターショップでしたが、なんだかんだで1時間滞在していた2人。 愛待はグッズがいっぱい入ったショッピングバッグを持っていた。 隣のリョウタは少し疲れたように立っていた。 愛待は少し申し訳なさそうな顔をした。
「ご、ごめんね、長谷川くん。なんだかんだで1時間もいてしまった」
「いや、愛待は元々休みじゃないか。 そして君じゃなかったら僕はここにいられなかったし」
「それはそうだけど…」
「ところで愛待はワタポメが本当に大好きなんだなぁ」
彼女は小さなせき払いをした。
「そ、それがなんで?だめなの?」
「いやいや、ダメなんじゃなくて。 何て言うか————、ちょっと意外だと思って。愛待は何か大人っぽくてかわいいことにあまり興味がないと思った」
「失礼だね。私が大人っぽいのとかわいいの好きなのは何の関係もないよ。ただ好きなんだよ」
自分で大人っぽく思っているんだなぁ——、だと考えたリョウタ。
「ごめん、ごめん。悪い意味はなかった。僕も可愛いものが好きだよ。そして、これみて」
彼は服の中に隠されていたネックレスを取り出した。 ワタポメとお守りが一緒にいたので独特な印象を与えた。愛待は目を輝かせながらそれを見た。
「長谷川くん、そういうのがあったのになんで今になって出したの?」
「あ、特に意図はなかったよ。ただ忘れてた。 前にネックレスを見せてほしいと言ったよなぁ? これだよ」
「少し触ってみてもいい?」
「うん、いいよ」
彼女は目を輝かせながらそれに触れた。
「このお守りは何? お正月限定のネックレスなの?」
「いやいや、そうじゃなくて、ただ二つ合わせたんだよ」
「へえ…、こうやって一緒にいるとよく似合ってるね」
「ありがとう、大切な物だよ」
彼女はこのネックレスに込められた話が気になった。 しかし、今は聞かないようにした。 もしかしたら悲しい事情があるだろうと思った。
「じゃあ、それならば、これからあなたの服を買いに行こう」
二人はさまざまな服屋を見回した。 リョウタは下着以外には何も持っていなかったので、いろいろ購入した。 愛待も彼のための服を選んでいた。 彼女があるシャツをリョウタに見せた。
「これ見て、長谷川君。 これ、あなたによく似合うよ」
「何?」
彼女が見せてくれた服はシンプルな黒いTシャツだった。 裏面には中世の
「シンプルでいいね。 僕も普段こういう単純な服をよく着るよ」
「もう一つある」
それもやはり同じ黒いTシャツだった。 しかし、裏面に描かれた絵が違っていた。 体に矢が5発も刺さっている
「どう?いいんじゃない?」
「うっ、うん。いいと思うよ」
彼女は意外とこんな好みかと思ったリョウタ。 確かに同年代の女の子たちとは違うという感じを受けた。 リョウタはシンプルなTシャツや服が好きだが、実はイラストは自分好みではなかった。 彼はもっときれいな感じが好きだが、愛待が頑張ってに選んでくれたので拒否するのが難しかった。 仕方なく両方とも購入した。
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そのように2時間ほど経って、ある程度服を購入した二人。 リョウタの両手に買い物袋がいっぱいだった。 いつのまにか昼休みなのでお腹が空いてきた二人。
「長谷川君、そろそろお昼を食べようと思うんだけど食べたいものある?」
「僕は何でも大丈夫」
「あなた、外食は3ヶ月以上してないんじゃないの? 私も何でもいいから早く選んで」
「考えてみたらそうだったなぁ…」
彼は施設が提供する食事だけで3ヶ月以上耐えた。 食事は客観的に見て平凡だった。 ただ、量が少なかった。最小限の生存だけを維持するための食事だった。 侵食者であるため当然の仕打ちだった。 しかし、リョウタは普通の侵食者とは違うので、かなり悔しい日々だった。
「じゃあ…、あれ食べたい」
2人が訪れたのは平凡な定食屋だった。 特に特別なものはなく、よく見られた場所だった。 愛待はそばを注文し、リョウタは生姜焼き、鮭焼き、唐揚げ、ハンバーグなど様々なメニューを注文した。 ご飯は特大だった。
「あなた、全部食べられるの?」
「問題ない」
リョウタは食べ物を見たらすごい勢いで食べ始めた。 平凡だったのでむしろ懐かしかった味。 彼は当然と思った事がどれほど大切かを悟った。 愛待は彼の姿を見て少し戸惑った。
「ゆ、ゆっくり食べたら?」
しかし、リョウタの食べる速度は止まらなかった。 もともとよく食べる彼だったが、侵食者になってから食事の量が少し増えた気がした。
「長谷川君。頬にソースが付いてる」
「うん?ここ?」
「いや、反対側。 いや、そこじゃなくて、ここ」
彼はソースがどこに付いているのか正確に見ることができなかった。 その時、愛待がナプキンで彼のソースを拭いてくれた。 リョウタはありがたさを感じたが、少し恥ずかしかった。
‛これ…普通恋人同士でやるんじゃないのか? 僕があまりにも考えすぎたかな..'
彼女は平気そうだったが、実は彼女も心の中で恥ずかしがっていた。
‛はぁ…私、何をしたんだろ。 いや、これは長谷川君がソースが付いたせいだから’
「まったく。長谷川君、意外と手がかりタイプなんだね」
「うん。そういう話、結構聞いたよ」
「私はあなたがボランティア活動をよく行ったと言うから、 こういう部分では細かく気にすると思った」
「あはは、他の人にはそう行動する方だけど、自分では何故か難しいなぁ」
「ふむ、そうなんだね」
軽く言った言葉だったが、彼の言葉からリョウタの行動原理が感じられた。
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