第一章8 『諦めない理由』
侵食者たちは3人に攻撃を開始した。 単なる娯楽のための戦いではない。 子供たちがやっていたケンカではない。 殺すか、殺されるかの命がかかった戦い。そのため侵食者たちの攻撃では殺気が感じられた。
「おい、そんな小さな武器で俺らを相手にしようとしているのか?」
体格の良い侵食者が宮脇に向かって恐ろしいスピードで拳を飛ばす。 宮脇は攻撃を避けながら、小さな隙間があるたびにナイフで侵食者を攻撃した。 普通の人より瞬間的な動きが速い宮脇。 鍛えられた身体と一種の能力によるものと思われた。
「がっかりしたか? でも俺にはこれほどのものがないんだ」
宮脇は侵食者の後ろに込んで背中に向かって何度も刺した。 侵食者である彼にとって致命傷とまではいかないが、次第にダメージがたまっていくのを感じる。 髪を赤に染めた侵食者が宮脇に向かって攻撃した。 壁際に押し出される宮脇。 瞬間的に防御をしたため、ダメージはそれほど大きくなかった。
「隊長、大丈夫か? 俺が手伝ってあげようか」
「ああ、あいつが3人の中で中心に見える。 プライドを維持する場合じゃないな、効率的に行くぜ。太田」
太田という男は隊長よりも速いスピードで攻撃をする。 宮脇もスピードには自信があるので、それほど遅れをとらなかった。 しかし、攻撃を避けた隙に隊長の攻撃が相次いで入ってくる。 避けるのが本当に難しかったが、攻撃が届く前に宮脇はもっと速く加速した。
「疾風」
宮脇の体は瞬間的に風に包まれ、今までで最も速いスピードで移動した。 そして隊長と太田の隙を素早く食い込んでナイフで何度も刺した。
「っ…!」
「この野郎…!」
一方、愛待は空手と柔道をベースにバランスの取れた戦いを駆使する。攻撃のためには空手を、防御のためには柔道を使って身体が人間より強い侵食者たちと対等な戦いをしていた。
「格闘技をかなり習ったみたいだな? 熟練度が感じられるけど、どれくらい練習したのか?」
髪を短く切った侵食者が愛待に話しかける。 純粋な好奇心が感じられる言葉だったが、愛待は真剣に答えるつもりは全くなかった。 むしろ嫌悪感を感じていた。
「あなたに答える理由ある?」
愛待の話を聞いてにやりと笑う侵食者。 なんとなく闘争心が沸き起こった。 今、目の前にいる騎士団を攻略したいという征服欲が生まれた。
「じゃあ、強制的にでも聞かないといけないな」
侵食者の爪がさらに鋭くなった。 そして愛待に向かって恐ろしいスピードで振り始めた。 愛待はすき間を見て侵食者を背負い投げで倒した。 そして顔に向かって炎の正拳を飛ばした。 侵食者は愛待に手を振り回し、再び立ち上がった。
「面白い。火を使えるのか? ならば本格的に遊んでみようぜ」
一方、リョウタはイヤリングをした侵食者を相手にしている。 しかし、それは戦いではなく、一方的な暴力に過ぎなかった。 リョウタはなぜか侵食化ができなかった。 それで現在は平凡な人間の身体能力を持っている。 さらに、宮脇や愛待のように戦いを学んだわけでもない。 そのため辛うじて攻撃をかわしているが、徐々に当たる量が増えてきた。
「おい、お前騎士団じゃないのか? これはがっかりだぜ。 全然戦いにならないじゃん! これじゃ面白くないんだよ」
侵食者はリョウタの顔に拳を当てて腹を蹴った。 壁際に押し出されるリョウタ。 侵食者は速いスピードで近づき、リョウタに無差別に攻撃を続けた。 抵抗しようとするリョウタだったが、侵食者は彼の左腕を折ってしまった。
「ああああ——————!!!」
腕を握って苦痛に苦しむリョウタ。 全身に打撲傷がいっぱいだ。 特に上半身は感覚がないと感じるほどだった。 侵食者はリョウタの姿を見て楽しそうにニヤニヤしていた。 そしてリョウタの頭をつかんで顔を近づけた。
「お前、本当に騎士団なのか? お前みたいに弱い騎士団は初めて見たが··· もしかして新人なのか? もしそうだったら本当に残念だな。 よりによってこんな所に来るとは」
リョウタの仮面はすでに壊れていた。 それで顔をそのまま露出しているリョウタ。 顔には血が流れていた。
「アイユーブ!」
その瞬間、宮脇がイヤリングをした侵食者に向かって蹴りを放った。 侵食者は壁の方へ飛んだ。 宮脇も小さな傷が見えた。 一人で2人を相手にするのは簡単なことではなさそうだ。 息を切らしてリョウタに向かって口を開いた。
「お前、何してるんだ! これは遊びじゃない。 命がけの戦いだ。 まともにしなければ死ぬんだぞ! それとも同じ侵食者だから戦えないのか?」
「す、すみません。 でも、なんだか侵食化にならなくて···」
「クソ…」
宮脇はしばらく考えてから、再び口を開いた。
「動くことはできるか? ここは俺とルナに任せて。 お前は上の階に上がって生存者たちを探せ。 とにかく一番重要な目標は生存者だ。分かったか?」
「で、でも4:2で」
「冷静に言って、今のお前は戦闘に役立たない。 足を引っ張られたくないって言ったよなあ? それでは早く上の階に上がって生存者たちを探せ。 それが今お前にできる最善だ」
「わ、分かりました。 それでは僕が必ず助けます」
リョウタは急いで非常階段に向かった。 イヤリングをした侵食者がリョウタを邪魔しようとした。 その瞬間、愛待が侵食者に向かって攻撃をした。 壁の方へまた飛んでいく侵食者。しかし、その隙を狙って髪を短く切った侵食者が愛待に向かって攻撃を放った。
「おい、僕のこと忘れたんじゃないよね? これは寂しいな」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
非常階段を上るリョウタ。 全身から痛みが感じられて動きにくかった。 特に骨折のある左腕の痛みは何よりも大きかった。 リョウタは自分の無力さが二人を邪魔していることが大嫌いだった。 足を引っ張らないと言ったが、最初の任務から約束を守れなかった事実があまりにも悔しかった。
「クソ、クッソ…!! 僕はどうしてこんなに弱いんだ.. どうしていつも重要な瞬間に何もできないんだ···」
リョウタは過去から戦いを嫌っていた。 単なる戦いを超えて、他人との競争そのものがあまり好きではなかった。 常に譲歩し、他人を優先した。 自分は優しいので譲ると思ったが、実はそのような競争から避けたい心理が強かった。 自らもそれをよく知っている。弱い姿を隠すために被っている仮面だと思った。 それで決定力と推進力が他の人より弱いと思っていた。
「覚悟したのに···、 約束したのに..! 僕は結局何も変わってない.. あんなことを経験したのに、僕は全く変わっていない!」
クリスマスの夜が浮かんだリョウタ。 崩れた孤児院。 燃えている都市。 サトウの笑顔。 アユムの涙を流してる顔などが思い浮かぶ。 悔しくて口を強く噛むリョウタ。 その瞬間、ミウの顔と言葉が浮かんだ。
「リョウくん、諦めないで」
ミウの言葉に大きく気付いたらしく、再び覚悟を固めたリョウタ。 自分をいつも信じて応援してくれる人がいる。 その事実だけでもう一度元気が出るリョウタ。 そのように上に上がっていくと、いつの間にか4階のドアの前に到着した。 しかし、ドアは開かなかった。
「ロックされてるのか…」
リョウタは4階を無視して5階に上がった。 5階は4階と違ってドアが開いていた。 5階は3階のように品物が置かれていなかった。 代わりに小さな部屋がいくつかあった。 明かりが消えていたのでかなり暗かった。 代わりに隅に生存者と見られる男の子と女の子がいた。 年齢的には小学2、4年生程度にしか見えなかった。 そして子供たちがいるところにだけ明かりがついていた。 何かの意図が感じられたが、リョウタはそれでも近づいた。
「君たち、大丈夫? けがはない? 今、助けてあげるよ」
子供たちは何の返事もしていなかった。 何だかわからないけど恐怖を感じている様子。 リョウタは何かをを感じたが、それでも迷わなかった。 そのように子供たちに近づく頃、突然誰かがリョウタに向かって攻撃をした。
「ぐっ!」
壁際に強く飛ぶリョウタ。 どういう状況なのか把握できなかった。 部屋の明かりがだんだん明るくなった。 そしてそこにはパイロットジャンパーを着た侵食者が一人立っていた。 今の状況が面白そうに微笑んでいた。
「こんなありきたりな罠にかかるなんて。 考えが足りないのか? 騎士団も思ったより大したことないのか」
リョウタはやっと体を起こした。 今の攻撃はさらに大きな痛みを感じた。 精神的に限界で、視界はぼやけていた。 左目は血のせいで見えなかった。 それでも侵食者に向かって口を開いた。
「知っていながら行かないといけない時があります。 僕はそのために騎士団員になったんです」
「ハハハ、話は上手だな。 騎士団はみんなそんな精神で戦っているのか? でも、それ知ってるか?」
侵食者が恐ろしい速さでリョウタに近づいた。 そしてリョウタの顔を攻撃し、ローキックで足を攻撃した。 ダメージで体勢が崩れるリョウタ。 しかし、侵食者は気にせず、リョウタの腹をニーキックで攻撃した。
「かはっ…!」
血を吐くリョウタ。そして彼の頭をつかんで頬を殴り始めた。 殴られるたびに周りに血が散った。 侵食者はかなり楽しそうな表情で攻撃した。 人を殴るのに全く罪悪感を持たない様子。 よく言われる怪物そのものだった。
「意志だけでは何もできない。 それに伴う行動があってこそ、結果がでるんだ。 お前のように言葉だけで終わる奴らを数えきれないほど見てきた」
リョウタは抵抗できず殴られたばかりだった。 一発ずつ殴られるたびに気が狂いそうだった。 すでに肉体的に限界を感じたが、精神力でかろうじて耐えている。 侵食者はどの程度攻撃して満足したのか、リョウタを壁の方に投げてしまった。 まるでゴミを投げるように。
「これは放っておいても勝手に死にそうだ。 下で喧嘩する音を聞くと同僚たちと一緒に来たのか? さっきから音があったと思うけど、お前の仲間たちはかなりよく耐えているな。俺が加勢しに行ってみようか」
侵食者がリョウタに全く関心を持たずに去ろうとする。 リョウタは侵食者に向かってやっと口を開いた。
「どこへ行きますか…、 まだ僕との戦いは終わっていません…」
リョウタの言葉に振り向く侵食者。 リョウタは誰が見てもいつ死んでもおかしくない状態だった。 しかし、目だけは固い意志を見せながら侵食者をにらんでいた。
「は? まだそんなことを言う力が残っていたのか? よし、じゃあ俺もそれに合わせて相手してあげる」
侵食者がリョウタの腹に蹴りを放った。 壁にぶつかるリョウタ。 侵食者はリョウタの上半身と顔を連続的に攻撃した。 骨折した左腕は攻撃を受けるたびにひどく苦しんだ。 結局、耐えられず倒れてしまうリョウタ。 侵食者は満足そうにリョウタと離れようとしたとき、リョウタが再び口を開いた。
「まだ…、 まだです…」
侵食者はリョウタの言葉に驚く。 そしてリョウタを振り返った。 リョウタは倒れていたが、目だけは侵食者をにらんでいた。 彼の姿に驚きと戸惑いを同時に感じる侵食者。 侵食者はリョウタの頭をつかんで聞いた。
「お前…、一体その目は何だ? どうしてその目は死なないのか?」
リョウタの頬を何度も殴る侵食者。 それにもかかわらず、リョウタは侵食者をにらみ続けていた。 侵食者はその姿にうんざりした。
「クソ…、一体何がお前をあきらめさせないんだ?」
「…約束したんですよ。 人々が笑いながら過ごせる世の中を作りたいと。 あなたのような人は理解できないでしょう」
リョウタの言葉に動揺した侵食者。 しかし、再び笑い、リョウタに向かって口を開いた。
「それはすごい。 お前を認めるぞ、騎士団員。 お前は決して言葉だけで終わらなかった。 行動でそれを証明した。 しかし」
侵食者はリョウタの腹を手で貫通した。 その行動に少しも迷いがなかった。 血を吐くリョウタ。 彼の目もどんどん暗くなっていく。
「言葉を付け加えよう。 意志と行動、そしてそれを成し遂げる力も必要なんだ。 お前の目標はあの人質たちか? そしたら死ぬ前によく見ていろよ。 力が足りなければ何も成し遂げられないという事実を」
侵食者は子供たちに向かってゆっくりと歩き始めた。 子供たちは恐怖に震えていた。
「お姉ちゃん…怖いよ」
「大丈夫、大丈夫だよ…たっちゃん」
侵食者は微笑んで子供に近づいた。 子供を殺すことに何の気兼ねもなさそうだった。 人間を超えた怪物。 彼を修飾するための言葉は怪物以外には足りなかった。 そして子供の前に到着した侵食者。 子供に向かって攻撃をしようとした。 その瞬間、侵食者の手首をつかんだリョウタ。 彼の腕は黒い動物の手のように変形していた。 目も黒い瞳孔に赤い虹彩を浮かべていた。 血は相変わらずついていた。
「…一つだけ聞きたいです。 人を苦しめるのは楽しいですか?」
「こいつ、まだ立てるのか! ところで何という力だ…?!」
「…もう一度聞きます。 人を苦しめるのは楽しいですか?」
「楽しいのは当然だぞ。他人との優劣を見分けるのに一番簡単な方法だからさ」
気の抜けた考えを堂々と語る侵食者。リョウタは彼を少しも期待していなかったので、驚きもしなかった。 そして口を開くリョウタ。
「そうなんですか..、 それでは僕も一度試してみます」
リョウタは侵食者の腕を木の枝のように折った。
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