第一章7 『僕が必ず助けます』
補給室にいるリョウタとアイマチ。そこには服以外にも武器や装備、道具、非常食が用意されている。 生まれて初めて見る物が不思議なリョウタ。 特に映画の中でしか見られなかった武器を直接見ることができて少し興奮した。 アイマチが補給室を見回すと、服が置かれているところに行く。
「長谷川くん、服を着る時普通どのサイズを着る?」
「普通はXLを着ているよ」
サイズに合わせて服を探してくれるアイマチ。 制服は夏用と冬用に普通分かれている。 さらに手袋と帽子もあるが、着るのは隊員の自由に任せている。 ちっとのの飾り付けも許していた。
「さぁ、これ、あなたの制服だよ」
「ありがとう、アイマチ」
「ついにあなたの患者服の姿を見るのは終わりだね」
「そうだな…、本当に長く着ていた。 まさかクリスマス以降、ずっと着るとは思わなかったぜ」
3ヶ月以上の間、患者服だけを着たリョウタ。 もともと着ていた私服は施設が預かっているという。 しかし、サトウとの戦闘によって毀損が激しいため、再び着ることは無理と思った。
「制服はいくらでもあるよ。 戦闘によって毀損されやすいからね。 ところで長谷川くん、私服はあるの?」
「それが…孤児院にあったんだけど、孤児院が崩壊したせいで、事実上僕の物はもうなにもない」
「あ…そうだね。ごめん、少し考えが足りなかった」
自分の言葉に罪悪感を少し感じるアイマチ。
「大丈夫、大丈夫。 それでもネックレスは残っているはずだから」
「ネックレス?」
「うん。孤児院の皆が準備してくれたネックレスと知り合いだったおじいさんからもらったお守りがあるんだ。 その二つを合わせておいた」
何も残っていないリョウタにとって唯一の思い出になってくれるネックレス。 小さいけれど、何よりも大切な宝物。 アイマチはネックレスがどんな形なのか好奇心ができた。
「ネックレスは今持ってる?」
「残念ながら、今はない。 それも施設が担当していると聞いた。 隊員になったから、また返してくれないかな?」
リョウタの言葉を聞いてため息をつくアイマチ。 表情から少し不満が感じられた。
「はぁ、ネックレスくらいならあげればいいのに。 ここは本当に融通が利かない。少しは変化する必要がある」
アイマチの言葉を聞いて笑うリョウタ。 アイマチはリョウタの笑いに戸惑う。
「な、なんで笑うの?」
「アイマチが言った言葉、 ミウねえも言ったから」
「エタナさんが?本当?」
「うん。だからといって、変化は言わなくて、少しの不満?」
リョウタの言葉にややほほえみを感じるアイマチ。 どうやら、ミウを尊敬しているためと見られた。 アイマチも高校生の年で入ってきた優秀な人材。 それでもミウはそれを跳び越える格が違う実力をもっている。 何が彼女を強くしたのかいまだに疑問だ。
「エタナさんと同じことを言うようになったのは光栄だね。 私もまだここに入ったばかりなので未だに習っている。 それで、エタナさんをロールモデルとして活動しているよ。 いつかあの人みたいになりたいからね」
「ミウねえを?」
リョウタの記憶の中のミウはいつも親切で愉快で他人の面倒を見るのが好きな人だ。 そのような穏やかな人が今は戦場に行って数多くの侵食者をやっつけながら有名になっている。 血は繋がってないが、家族と見られる人がいつのまにか大物になった。 リョウタはそんなことをまだ実感出来なかった。
「ん。前にも言ったはずよ? あと、私以外にも尊敬する人は多い」
「ミウねえ… すごいなあ。元々は孤児院の先生になりたかったって言ってた。 しかし、いつのまにか騎士団に入りたいと言ってさあ。 どうしてそんな危険な道を選んだのか聞いたけど、ただ人を守りたいと言っていたんだあ」
「そうだったんだ。興味深い話ね。 多分こんな話を知っているのはあなただけだと思う。 エタナさんは自分の話をあまりしないからね。 だから実力以外はあまり知られていない」
孤児院の時を思い出すリョウタ。 ミウはいつも大人っぽくて格別だった。 たまには一人で何を考えているのか疑問に思う時があった。 普通の子供たちは原始的な欲求を追うのに忙しい。 しかし、ミウはそんなことにはあまり関心がなさそうだった。 そのため、その年のようには見えなかった。
「ミウねえは···.. 前からそうだった。 僕は幼い頃、性格が本当に暗かった。 両親を失った衝撃から抜け出せなかったんだ。 その度にミウねえは僕を支えてくれた。 僕より年の差も多くないのに、いつも大人っぽかった。 僕はどうやってそんなことができるのかいつも気になっていたが、未だに疑問だ。 だから僕は元々そういう人だと思ってる」
その時、二人の会話を終わらすように補給室にミヤワキが来た。 ミヤワキはなんとなく焦っているように見えた。
「アイマチ、長谷川。 出動命令だ。 話は後でする、今は早く行かないといけない」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ある建物の前に到着した3人。 建物の前には警察が待機していた。 警察は随時に無線で連絡を取り、緊迫した様子を見せる。 救急車も現場にあり、負傷者を乗せている車両と追加患者のために待機している車両があった。 その他には市民が現場を見守っている。 ミヤワキが警察官に話しかける。
「お疲れ様です、警察官さん。 今の状況はどうなっていますか?」
「今の状況はそんなに良いとは言えません。 突然、多数の侵食者が攻撃してきたと生存者は言いました。 避難者も多いですが、死者もいるそうです。 その他にも生存者が追加で閉じ込められた可能性があります」
警察官の言葉に憤りを感じるリョウタ。 クリスマス以来、侵食者は相変わらず行動している。 今も昔も相変わらず人々の日常が破壊されている。 リョウタはそのような事実が大嫌いだった。
「ブリーフィングありがとうございます。 これから俺たちが建物に突入します」
「命運を祈っています。 サポートが必要でしたら、いつでも連絡ください」
その時、オフィス服を着たある女性がリョウタを捕まえた。 とても悲しそうな表情をしていた。
「お願いします、騎士団さん。 私の子供たちがあそこの建物にいます。 よりによって見学させてあげようとした日にこんなことが起きるなんて.. 全部私のせいです。 恥知らずですが、お願いします」
リョウタの胸の中で何かが沸き立つ気がした。 それは怒りと勇気、そしてそれを超える使命感だった。
「心配しないでください。 僕が必ず助けます。 少々お待ちください」
「ありがとうございます。 本当にありがとうございます。 どうかお願いします」
建物の前に歩いていく3人。 間もなく命がけの戦いが始まるので、みんな緊張している。 ミヤワキが先に口を開いた。
「長谷川。どういうわけか最初の任務からかなり危険な仕事を任されたが、それでも仕方がない。 相手は絶対にお前を大目に見てくれない。 これはゲームじゃない。 だから確実に覚悟しろよ」
「分かりました。 僕ができる限り最善を尽くします」
「そして作戦中にはコードネームで呼ぶのが原則だ。 急いで出てきたので決められなかったけど、呼ばれたい名前でもあるか?」
リョウタは考えておいたことがないので悩んだ。 コードネームは一生考えもしなかった。 そうするうちにふと読んだ本で見た名前一つが思い出した。
「アイユーブ…、アイユーブでお願いします」
「分かった。これから作戦中はアイユーブだ。 ちなみに俺は「ナイフ」、アイマチは「ルナ」だ
「ナイフ…、ルナ..。 確かに覚えました」
漫画や映画の中でしか聞いたことのないコードネーム。 リョウタは自分で使うようになったのがとても不思議だった。 そして同時に隊員になったという事実が実感された。 コードネームアイユーブ。 それが最初の侵食者騎士団員リョウタのコードネームである。
「じゃあ、入るぞ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
建物の中はかなり暗かった。 至る所が破壊された形跡があった。 1階はどうも案内デスクに見えた。 そのため、多くの物は置かれていなかった。
「静かだなあ。どうしても待ち伏せの可能性がある。 みんな周りをよく見て回っていろ。生存者がいるかもしれないから」
非常階段を通って2階に上がる3人。 非常階段には血がついていた。 ここで何が起こったのか正確には分からない。 でも大体推測は行くのにリョウタはもどかしさを感じている。 そして2階に入る3人。
「事務室か…」
オフィスに見える2階はかなり散らかっていた。 コンピューターと書類はかなり破損しており、どれほど大きな騒ぎがあったかを予想できた。 そして床には人々の死体が3体置かれていた。
「っ…!」
クリスマス以来、死体を初めて見たリョウタ。 押し寄せる吐き気に耐えられなかった。 そのため、仮面をしばらく脱いで吐瀉物を吐き出した。 ミヤワキとアイマチは落ち着いていたが、深い憤りを感じた。
「アイユーブ、大丈夫?」
「うん…大丈夫。ありがとう、ルナ」
そしてオフィスを細かく見て回る3人。 侵食者はいないように見えた。 リョウタは人々の勤務先を見ながら写真がかかっているのを見た。 おそらく被害者たちの家族写真のようだった。 写真の中の人々は明るく笑っていた。 そのため、現実と対比されてさらに悲劇的に感じられた。
「みんな待っている大切な家族がいるのに.. 絶対に許せない」
3階に上がる3人。 非常階段はやはり血がついていた。 3階に入ると品物はあまりなかった。 空間が単純で大体広かった。 その代わり、あちこちに会議室と見える部屋があった。 なんとなく不吉な予感を感じる三人。
「何か嫌な感じがする。みんな覚悟しろよ」
「はい!」
その時だった。部屋のドアを開けて侵食者が4人も現れた。 皆が身体変形しており、黒い目に赤い虹彩は恐怖な雰囲気を漂わせた。 その中で最も丈夫な体格の侵食者が口を開いた。
「こんなありきたりな場所に来るなんて。 死にに来たのか? 最初から死を覚悟してきたのか? 何であれ白光騎士団はすごいな」
ミヤワキが彼に答えた。
「騎士団に入った瞬間から死を覚悟した。 そもそもそうしないとこの仕事はできないからなあ」
「まあ、そうだろうなあ。 それだけペイも多いだろうし。 結局、命を取引に得た金。 俺はそれが本当に残念だ。 一度だけの人生をもう少し自由に過ごすのはどうだ?」
「俺は自分の自由を最もよく使っている。金だと?たったそんな理由で戦ってると思うな。これは責任と使命だ。 お前みたいな怪物が勝手に判断するな」
「ははは。一理ある言葉だ。そんな信念がある奴ならば殺す価値がある。 それではお前たちの自由は今日で終わりだ。 今まで長い道のり、お疲れ様」
4人の浸食者が同時に駆けつけた。
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