父と息子の異世界漂流

第12話 幸樹とアリーサとの出会い

「それで、幸樹（こうき）、お前はどうして脱走する事が出来たんだ？」

「ビフォーの息子の活動家、奴隷解放が・・・ていう話しをしたろ？」

「まさか・・・、奴隷解放が実行されたのか。」

「ああ、その日、俺は訓練と称したリンチにあってな。気絶した状態で牢屋にぶち込まれていたんだわ。俺が寝込んでる内に活動家軍が、他種族連合軍を伴って攻めてきたってわけだ。」

「なんでリンチされたんだ？」

「あーまぁ知らんけど、気晴らしでなんじゃねぇの。」

改めて、奴隷の状況を思い知らされる。渉（わたる）無茶しないでくれよ。

「で、その時、他種族連合軍にアリーサが居て、俺を救ってくれた。」

幸樹（こうき）はアリーサを見つめ、手を握る。

「いやー、目が覚めてアリーサを見たら、一目惚（ひとめぼ）れしたね。こんないい女がほんとに存在しているのかって。」

アリーサは握っている幸樹（こうき）の手を見つめる。

「それ以来、ずっとナンパしてくるし、正直、面倒だったんだけど・・いつの間にか私も好きになっちゃってね。」

「お互い種族も違うから子供は出来ない、アリーサの方がはるかに長く生きるだろうな。でも・・・俺はそういう事を全部飲み込んでも、一緒に居たいと思ったんだ。それに、最高じゃんか！将来、よぼよぼの爺と若いエルフなんて！」

「でも私は・・・幸樹（こうき）が死んじゃったら・・・耐えられないかも。」

幸樹（こうき）はアリーサを抱きしめ、背中をポンポンと叩く。

公彦（きみひこ）は、天井を眺め、亡くなった妻の顔を思い出していた。

アリーサの涙が収まるまで、皆、何も言わなかった。

幸樹（こうき）はアリーサを慰めながら、公彦（きみひこ）に声をかける。

「お前は聞かないんだな。」

「何が？」

「普通、最初に聞くだろ、帰る方法を。」

正直、聞きたかったが、幸樹（こうき）が帰っていない、言わないのはそういう事だろ。それに、聞いて方法がないと言われた時のショックが大きい。

「帰る方法を知ってる奴は？」

「シュミール人の上の方を問い詰めたら、何か分かるかもな。」

まぁ、そうだろう。

「そういえば、幸樹（こうき）、いつこっちに来た？」

「あー確か・・・2002年」

「その時、いくつだった？」

「１９」

・・・

「幸樹（こうき）、４０代仲間入りおめでとう。俺と同じ。」

「・・・そっか。そうだよな。・・・４０代かー。」

アリーサは幸樹（こうき）を慰めようと

「４０なんて、まだ子供じゃない。」

「えーとアリーサは、確か２５４・・・」

アリーサは幸樹（こうき）の頭を叩く。

「私まだ、２３０代！」

うーん、アリーサには悪いけど、２００の単位が凄すぎて、誤差の範囲に感じる。

「公彦（きみひこ）、何考えてんの！叩かれたい？」

公彦（きみひこ）は、アリーサに何も言わず頭を下げる。

・・・

明日に備えて早めに解散する事になった。

ようやく皆を探しに行ける。