第11話 転移者から聞いた事

義足をつけて初めて移動した。魔石がなくても、なんとかゆっくりと歩ける。単純に義足としても使用できるが、魔石の入った袋を下げると、各段に性能が上がり、飛び跳ねたりしても問題ない。後は、外に出て走ったりしてみるだけだ。その様子を見て、アリーサは公彦きみひこに親指を立て、サムズアップする。

幸樹こうきは、公彦きみひこの肩に手を回し、

「よしっ大丈夫そうだな。明日から外に出てみるか。」

早く村の様子を見に行きたい、皆を助けに行きたい、気持ちは逸るが、落ち着く事にする。

「それじゃあ、今後の事も考えて、シュミール人について、俺が分かる事を話そうか。お前も薄々とは気づいているだろ?俺が昔、捕まっていたの。」

「・・・ああ」

わたるの事も話していたし、多分そうだろうと思っていた。

「俺が今の状況になるまでの事、お前の今後の助けになるかも知れないからな。・・・まず、この世界に拉致らちられ、捕まった日、とある奴隷と話す事が出来た。その人は最初の日本人グループから聞いたらしい。1958年7月何日だったっけな、この世界に拉致らちられたそうだ。その時、千人ぐらいの人が一気に転移してきたらしい。」

最初の転移者の話し・・・か。戦後少し後だと思うから、千人ぐらいとなると、かなり大都市からの転移だったのかも知れない。

「その時に来た人々は、前にも話した通り、奴隷にされ、兵士にされた。それからも、数年ごとに転移してきたそうだ。」

アリーサが補足する。

「この魔法陣はね、数年魔力を貯めないといけない様な気がする。それだけ大規模魔法という事ね。」

転移させるんだ、そういうのもあるだろうな。・・・

「ちょっと待て、そんな急に人が居なくなるなんて・・・なんで日本で事件になってないんだ!」

「そうだよなぁ。俺も、聞いた時思ったけど、・・・多分それをクリア出来るんじゃねえかという奴がいるんだ。天才シュヒーなんとかのひ孫で名前は・・・なんだっけ?」

「補足するわね。シュミール人を変えた天才魔導士と言われているのが、シュヒールヒ=ライス、さっき幸樹こうきが言おうとしたひ孫は、シュヒールヒ=ビフォーと言うの。」

「あぁそうだそうだ。それでそのひ孫ビフォーというのが、固有魔法(精神操作)を開発した奴なんだ。」

精神操作?

「多分、そいつが地球人、皆を洗脳したんじゃないかと。だから事件が起きても分からない。多分そうだ!」

いや、そんな大規模な事・・・可能なのか?

「アリーサ、可能?」

アリーサは考える様に

「んー、私も公彦きみひこの疑問が正しいと思う。そんな大規模な事は出来ないんじゃない?まぁ、多分、何か秘密があると思うんだけど、転移魔法自体、シュミール人の重要機密だし、・・・どういう魔法か分かれば・・ね。」

「なんだよ、二人して!アリーサ、なんで公彦きみひこにつく?」

「・・・妬いてんじゃないわよ、馬鹿ね。」アリーサが幸樹こうきの肩に手を乗せ、話しの続きを促す。

「・・・分かった、おいっ、アリーサは俺の妻だぞ。」

幸樹こうきは、公彦きみひこに指を差す。

「分かったから、続きを。」

幸樹こうきの指を払う。

「ああ・・・シュミール人の転移だが、20年ほど前から状況が変わった。奴隷を解放しよう、転移をやめよう、という活動家が現れたんだ。さっき言ったひ孫のビフォーって言ったろ、その息子だ。・・・その辺りから大都市で転移がなくなったり、時より日本からの転移も止まったりしたらしい。」

ビフォーの息子か・・・もしかしたら、そいつも精神操作が使えるのか?

そういえば、

「今は日本人の血が混ざってるだろ。だったら、シュミール人同士で出産できないのか?」

「あー、これから血が薄まっていったら分かんねぇけど、まだ出産率は圧倒的に低いんだとよ。」

ビフォーの息子は、何かシュミール人を減退させたい理由があるのか?こればっかりは第三者が考えても分からん事だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る